カスタムIEMメーカーとして活躍する中国の「Tipsy」初の完全ワイヤレスモデル「TM1」。その音の実力をじっくりとチェック。さらに、原点とも言えるユニバーサルIEMモデルとの比較試聴も行ない、その魅力に迫ってみた。
前編はコチラ
https://online.stereosound.co.jp/_ct/17411782
Tipsy「TM1」は、カスタムIEMのようなデザインで、タッチ操作や防滴設計(IP45相当)などの機能を備えた完全ワイヤレスイヤホン。その音はステージモニターとして使われるカスタムIEMを思わせるパワフルで生き生きとした音に仕上がっており、なかなか他にはない独特な魅力を持ったモデルだ。
完全ワイヤレスイヤホン
Tipsy TM1 希望小売価格¥15,390(税込)
クラシックやポップス、映画などいろいろな音を聴いてその魅力を紹介
今回はいろいろな楽曲を聴いて、よりじっくりとレビューしていきたいと思う。再生には、筆者所有のアステル&ケルンのハイレゾプレーヤー「SP1000」を使用している。まずはクラシックで、ネルソンス/ウィーン・フィルによる『ベートーベン/交響曲全集』から「交響曲第5番」を聴いてみた。
第1楽章の象徴的な主題が勢いよく鳴る。弦楽器の厚みのある重奏や打楽器の力強い打音が小粒にならず、なかなか雄大に鳴る。低音は厚みがあってしかもアタックの反応も良い。曲の緩急をしっかりと描き分けるので、ぐっと溜めた感じの後のトゥッティが実に爽快だ。メリハリの聴いた音調ではあるが、弦楽器や管楽器の音色も自然に再現し、アコースティック主体の演奏も満足度は高い。このあたりはモニターとしての実力の高さがよく出ていると思う。
今大人気のアニメ『鬼滅の刃』のオープニング曲「紅蓮華」を聴くと、ギターのハードな演奏もパワフルだし、ドラムスが重量感たっぷりに鳴る。低音の量感はやや多めにも感じるが、反応がよくもたつくことがないので、不満はない。声は中高域の鮮明さもあり、実にくっきりと再現。声の張りやシャウトのエネルギー感もしっかりと描くきめ細やかさがあるので、情感もよく出る。
有線タイプの「Blue Aurora」と比べると、Tipsyの音の魅力がよくわかる
有線タイプのTipsy「Blue Aurora」に切り替えてみた。こちらはカスタム製のBAドライバーを採用したシングルBAのユニバーサルIEMモデル。中高域の解像度の高さはさすがBA型モデルと言えるし、情報量も豊か。そして低音もなかなかしっかりと出る。出音の勢いの良さや音楽の変化に対する反応の良さなどは、まさにライブモニターという感じだ。
ドライバーの違いなどもあり、それぞれに違いはあるが、ライブ感のある生き生きとした音は両者に共通したものがあり、これがTipsyの音の特徴だと感じた。Bluetoothのワイヤレス伝送でこうしたパワフルさと生き生きとした音に仕上げた「TM1」の良さが、改めてよくわかる。
アクション映画も迫力たっぷりの音で楽しめる。ゲームで使うのも面白そう
最後は「TM1」に戻して、筆者使用のiMacでNetflixの映画を見てみた。パワフルな音は映画にもぴったりで、アクション映画を見ても迫力不足にならないし、セリフが鮮明でしかも力強いので声に込めた情感もよく出る。音のスケールが大きいので、スマホなどでは映像の迫力が不足する。20~30インチくらいのパソコンの画面だとちょうどいいバランスだ。ライブ感のある音は音楽モノにぴったりだが、映画やゲーム用として使っても満足度は高いはず。手頃な価格と合わせて、幅広く活用できるモデルと言える。
ヘッドホン女子 くわわさんツイッター https://twitter.com/kuwawa_akichan