ここのところ配信で映画を観る機会が多くなった。もっぱらiTunes Storeで購入したタイトルがメインになっている。パッケージはHDマスター、しかし配信では4Kマスターが使われていることも少なくない。特に最近はドルビービジョン&ドルビーアトモスが採用されているケースが目立つ。
ウチで使っているのはApple TV 4K。HDMI端子から出力、コンバーターで映像と音声を分離し、サラウンド音声はリニアPCM 2chに変換している。UHDブルーレイや配信、4Kチューナーなどから映像と音声、それぞれにセレクターを経由させている状態だ。
●AVセンター ヤマハRX-V6A ¥65,000(税別)
●定格出力(20Hz-20kHz、2ch駆動):100W/ch(8Ω、0.06%THD)
●内蔵パワーアンプ数:7ch
●接続端子:HDMI入力7系統(8K対応はHDMI1〜3)、HDMI出力1系統(8K対応)、デジタル音声入力2系統(同軸、光)、アナログ音声入力4系統(PHONO含む)、USB端子1系統、LAN端子1系統、フロントプリアウト、サブウーファープリアウト2系統、他
●オブジェクトオーディオ対応:ドルビーアトモス、DTS:X
●対応音声フォーマット(USB、サーバー):DSD 11.2MHz、Apple Lossless 96kHz/24ビット、WAV/AIFF 384kHz/32ビット(32bit-floatファイルは非対応)、FLAC 384kHz/24ビット、MP3/WMA/MPEG4-AAC 48kHz/24ビット
●ストリーミングサービス:インターネットラジオ、Spotify Connect、Amazon Music、Deezer HiFi対応
●消費電力:360W(待機時0.1W、HDMIコントロール/スタンバイスルー/ネットワークスタンバイOFF時)
●寸法/質量:W435×H171×D377 mm(アンテナ収納時)/9.8kg
UHDブルーレイはプレーヤーが5.1chアナログ出力を備えているので必要に応じてサラウンド再生も可能だが、HDMI出力のみのApple TV 4Kはそうはいかない。2chのステレオ再生がメインとは言え、サラウンドで“聴かない”のと“聴けない”のでは精神衛生上はかなり違いがある。iTunes Storeの映画再生にはやはりAVセンターが必要不可欠なのだろう。
そんなことを漠然と考えていたところにピンときたのが、ヤマハの新AVセンター「RX-V6A」だ。これならアリ! だと思えたのがこの価格帯ながらフロント2chプリアウトを備えていたところ。年代物のアルテックをメインスピーカーとして使っているウチとしてはこれはマスト。ドルビーアトモスやDTS:Xにも対応しているし、やや煩雑になっているHDMI経由の映像と音声をスマートにコントロール出来るようになる。手っ取り早く導入を考えるならばもってこいなのだ。
最初にぶっちゃけてしまおう。もう既に「これ買っちゃってもいいかな」に気持ちは傾いている。①iTunes Storeのドルビーアトモス作品のサラウンド再生、②HMDI系出力ソースの整理。ウチでいま求めているふたつのポイントを過不足なく(しかもそこそこリーズナブルに)満たしてくれることがわかったからだ。
まずは視聴用に拝借したRX-V6Aを設置。続いてサラウンドスピーカー4本をセットする。今回はヤマハのプロユースモデル「VXS5」をリアスピーカーに、トップスピーカーには「VXS3F」を組み合わせてみた。リアは現在も使っているスタンドを流用、トップスピーカーの設置については月刊「HiVi」2016年4月号での視聴時の方法を流用し、ピクチャーレールに吊り下げている(写真参照)。手持ちのサブウーファー、ヤマハ「YST-SW1000」はメインスピーカーの低域用としているのでオブジェクトオーディオへの対応は“4.0.2”のスタイルになる。
メインスピーカーは、RX-V6Aのプリアウト端子経由で従来通りALTECの真空管式モノーラルプリメインアンプ「344A」を2台使って駆動。サラウンドスピーカーはRX-V6Aの内蔵アンプでOK。同社製AVセンターでお馴染みの自動音場補正機能「YPAO」で各チャンネルのバランスを整えればおおまかなセッティングは完了だ。
時代もキャラクターも違うメインスピーカーとサラウンドスピーカーの組み合わせにも関わらず、音場の広がりと一体感にまずは素直に驚かされた。とりわけサブウーファーから再生される低音の質と量がこれまでよりもよくなったのはYPAOによる補正の賜物だろう。年代物の外部アンプで鳴らしているALTECのキャラクターにRX-V6A側でなにか色付けがされている印象もなく、拍子抜けするくらい素直なサラウンド音場が実現されている。
ヤマハ「VXS5」「VSX3F」を活用して4.0.2のアトモスに挑戦。
広い指向性が心地いいサラウンド空間を創出した
今回の取材でサラウンドとトップスピーカーに使用したヤマハ「VXS5」「VXS3F」は、ヤマハのプロユースモデルで、広い指向性と設置の自由度の高さがポイントだ。さらにVXS5はIP35の防水性能を備えており、屋外での使用も可能となっている。
今回はピクチャーレールを使ってトップスピーカーを設置したいという酒井さんの希望もあり、これらの製品をチョイスしている。楽器専門店や一部のネット通販などで購入可能なので、気になる方はチェックしていただきたい。
VXS5 ¥38,000(ペア、税別)
●形式:2ウェイ2スピーカー、バスレフ型 ●使用ユニット:2cmドーム型トゥイーター、13cmコーン型ウーファー ●インピーダンス:8Ω ●再生周波数帯域(-10dB):62Hz〜20kHz ●公称指向角度:120度×120度 ●出力音圧レベル:89dB SPL/Wm ●寸法/質量:W176×H280×D163mm/3.6kg ●防水性能:IP35
VXS3F ¥28,000(ペア、税別)
●形式:フルレンジ、密閉型 ●使用ユニット:9cmコーン型フルレンジ ●再生周波数帯域(-10dB):130Hz〜20kHz ●公称指向角度:150度×160度 ●インピーダンス:8Ω ●出力音圧レベル:86dB SPL/Wm ●寸法/質量:W184×H130×D94mm/1.0kg
US iTunes Storeの『GHOST IN THE SHELL 25th Anniversary Edition』や国内のiTunes Storeで購入した『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』もすこぶる印象がいい。フロントから“面”で押してくるALTECサウンドのトーンはそのままに、サラウンド音場が部屋全体を満たしている。スピーカーのキャラクターの違いや設置位置が露呈しやすいフロント〜リアの移動感に違和感がないことにもあらためて感心させられた。
トップスピーカーの効果は予想以上。小型フルレンジスピーカーであっても音場の高さをぐんと引き上げてくれる。設置に苦心する価値はあるのだ。ヤマハならではのシネマDSPもいくつか試してみたが、やはりメインチャンネルの音色を損なうことはない。充分に実用的だ。試しにフロントのALTECをRX-V6Aの内蔵アンプで鳴らしてみたがこれは期待通りとはならなかった。ウチの場合はプリアウト端子を使って外部アンプで駆動はデフォルト、と考えたい。
言うまでもないが各ソースの切り替えは現状のシステムよりもいたってスムーズ。Apple TV4Kの他にも4KチューナーもHDMI出力しか搭載していないので、これなら4K番組のサラウンド再生も可能になる。もちろんUHDブルーレイの再生もOKだ。
さまざまなソースを使って取材を続けたが、これといって導入を躊躇する理由が見つからなかった。ただし高中級機ではないので多くを望んではいけない。とはいえ “オブジェクトオーディオの再生も出来るリーズナブルなAVプリ&セレクター” としては充分過ぎるほどの機能を備えている。普段使いは2ch再生が基本。しかし主流になりつつあるHDMI出力機への対応に苦慮されている方も少なくないだろう。そんな方にとって、RX-V6Aは “身近な救世主” になると思う。