Qアコースティクスは2006年に創立された英国の新進スピーカーメーカー。傘下にゴールドリングやQED、グラド等、ディープなオーディオブランドが名を連ねるアーマー・ホームエレクトロニクス・グループの一員だ。日本には今から数年前に紹介された。
3030iはQアコースティクス製品の中核を担う3000iシリーズの最近作。先行発売されている3050i/3020i/3010iの3モデルに追加するかたちで、今春登場したコンパクトシステムである。合計4モデルのうち、トップエンドの3050iだけフロアスタンディング型なので、価格がそれに次ぐ当機はブックシェルフ型の新たな代表選手という位置づけになる。
コンパクトシステムと記したが、3030iはたぶん写真の印象よりもかなり大柄なスピーカーである。奥行が約22㎝もあって横幅はちょうど20㎝。コーナーを優美な曲線で処理したリアバスレフ型のエンクロージャーに、16.5㎝径ウーファーと22㎜径のソフトドームトゥイーターをバランスよく近接配置している。要は安手な感じがしない、1台2万円を割るロープライスなスピーカーにはとても見えないゆとりをもって、綺麗につくられているということだ。
あるいはウーファーのボイスコイルに銅被覆アルミ線(CCAW)をつかったこともめずらしい特徴だ。アルミの軽さと銅の高導電率を相乗させることで、ウーファー帯域の応答性を改善。いわゆるコストパフォーマンスの高さが決め手といえる3000iシリーズのなかでも、ダメ押しの満塁打を狙っているようだ。
3030iの音づくりは、そうした特徴を活かしながら背伸びをせずにゆったり心地よく聴かせる方向だ。ワイドレンジではないが、豊かな低音にサポートされた中域の厚みと切れ込みが面目躍如の持ち味になっている。たとえば「トニー・ベネット&ダイアナ・クラール」のデュオだ。ほどよく枯れたベネットの声と、微妙にハスキーなクラールのそれは質も音域もよく似たところがあり、おダンゴになりやすいのだが、難なく解きほぐして各々艶っぽく、ハモりが美しい。そこは映画のセリフにも効く勘どころ。