【HiVi夏のベストバイ2020 特設サイト】スピーカー部門（2）＜ペア10万円以上20万円未満＞第1位 ソナス・ファベール Sonetto Ⅰ

このクラスでは抜群に音楽性に優れたスピーカーだ。中国生産のVenereシリーズを生産終了させ、本国イタリア生産に切り替えた製品。ユニット素材はウーファー、ミッドレンジが繊維系で、トゥイーターがシルクドーム。すべて同ブランドで馴染みのデンマーク製だ。音は「情報量」と「情緒量」を同時に備え、濃厚な表現力が特色。UAレコードの『エトレーヌ／情家みえ』を鳴らすと、ヴォーカルの立体感や質感が素敵で、空間感が豊かだ。デザインと共に音を磨くイタリアの職人芸が見事。

今やイタリアを代表するスピーカー・メーカーとなったソナス・ファベールが、エントリークラスのユーザーのために作り上げたスピーカーである。元々2ウェイの製品を得意とするメーカーだけに、このモデルもコンパクトながらヴォーカルの再現力に優れた鳴りっぷりのよいサウンドを聴かせてくれる。センタースピーカーも用意されているので、オーディオ再生だけでなくホームシアターを目指す人にも好適な製品だ。

エンクロージャー底面にバスレフポートを備えた2ウェイ・ブックシェルフ型の同社エントリー機。リュート型のフォルムは22mm厚の高密度ファイバーボードによる造形と外装フィニッシュは、レザー仕上げのトッププレートとも相まってたいそう美しい。トゥイーターとウーファーのつながりがよく、良質なフルレンジが鳴っているかのよう。特に高粘度の特殊素材によってバッフルとのデカップリングが実践されているトゥイーターが肝といえる。

イタリアンテイストのスピーカーで、大仰に過ぎないサラウンドシステムが組めたら、とは趣味のよいホームシアターを願う映画ファンのちょっとした夢になり得るだろう。ソネットシリーズはそうしたソナス・ファベールの入門機。中でもいちばんコンパクトなブックシェルフ型が当機ソネットⅠである。人の声や弦楽器の温かく誠実なサウンドは名門製品ならではの魅力といえて、ひと味ふた味ちがうムーピートーンを醸し出す。

ソナス・ファベールの評価はここ数年で従来以上に向上しており、実売も好調だと聞く。特に近年このクラスのスピーカーは激戦区で、大手量販店から専門ショップまで取り扱い店舗も多く、音楽性、オーディオ的な再生能力など全方位的な完成度が要求されるが、本機は2チャンネルに使えば音楽性に優れ、サラウンドで使用した場合も音像定位のよさからセッティングに機敏に反応してくれる。胸を張ってベストバイな1台と言える。

なめらかで艶やか、そしてウォームな音質と評されることの多かったソナス・ファーベルのスピーカーシステム。しかしパオロ・テッツォンがチーフサウンドデザイナーに就任して以降、特にここ5〜6年は従来の美点に加えて、いっそうのフレッシュさや反応のよさ、躍動感が感じられるようになった。本機は音楽鑑賞用としてはもちろん、フラットディスプレイと組み合わせたAV用途でもきわめて満足度が高い。加えて仕上げの美しさも◎