トライオードのTRV-CD6SEは、型番からもうかがえるようにCDとCD-Rのためのプレーヤーだ。しかしありふれた外観の内部には信号処理に最新のハイレゾオーディオ系の技術が満載されている。MQA-CDは最大352.8k㎐/24 bitに対応。またBNC端子によるワードクロックと10M㎐基準信号の2系統の外部クロック入力を受信可能だ。デジタル出力も光とRCA同軸に加えてHDMI端子による I²S(IC間伝送)端子を装備。通常のCDは信号処理にて352.8k㎐/32 bit、あるいはDSD5.6M㎐に上位変換してからD/A変換する再生モードを用意。DACはESSのES9038Q2Mを使用。さらにユニークなのはアナログ音声出力端子が「半導体」と「真空管」の2系統備わっていることだ。後者は6922EH(6DJ8)真空管によるバッファーアンプ経由になる。
試聴はもっぱら上位変換オフの状態で行なった。帯域を目一杯使った最新録音ならば音場の見通しや柔軟な質感などで上位変換処理の意義は感じられるが、手持ちのCD盤では非処理で十全な高音質が味わえたのだ。
明るい音調であり解像感が高水準。音場は3次元的に展望され弦も管も打楽器もよく描写する。声の実体的で精密な描写、明快な発語も見事。以上は「半導体」出力端子での評価。「真空管」出力では、なめらかさ、艶っぽさ、しなやかさが魅力となる。これは伝統と革新を両立させた成功例として特筆できる。
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