ソニーから、ニアフィールドパワードスピーカー「SA-Z1」が発表された。6月20日(土)発売で、定価は¥780,000(税別)となる。

 高級ヘッドホンや単体のDAP(デジタルオーディオプレーヤー)を使ってパーソナルな音楽試聴を楽しんでいるオーディオファンは相変わらず多いという。しかしそれらの製品では音の解像感再現は優れているが、空間表現、ステージ感の再現が物足りないと感じている層も出てきている。

 SA-Z1は、そんなユーザーに向けて企画された製品で、デスクトップなどの近接試聴でいい音を楽しむためのアクティブスピーカーだ。しかも “室内のパーソナル空間で究極の解像度とステージ感を実現する” アイテムとして、Signatureシリーズに位置づけられている。

画像: 「SA-Z1」。ウーファーの前面にI-ARRAYによるトゥイーターを配置

「SA-Z1」。ウーファーの前面にI-ARRAYによるトゥイーターを配置

 そしてSA-Z1ではその実現のために、3つの大きなフィーチャーを備えている。

 第一がハイレゾへ音源への対応で、最大でDSD22.4MHz、リニアPCMで768kHz/32ビットの音源が再生可能だ。同時にハイレゾ音源のメリットを最大限活かすために100kHzまでの高域再生を実現している。そのために、アンプ部には「D.A.(デジタル・アナログ)ハイブリッドアンプwith GaN」を新搭載した。

 D.A.ハイブリッドアンプは、スピーカー用の大出力増幅でもデータロスやノイズ・歪みを生まないソニーの特許技術で、Signatureシリーズのヘッドホンアンプ「TA-ZH1ES」にも採用されている。今回はより負荷の大きなスピーカーユニットを駆動するために、MOS-FETの代わりに次世代パワー半導体の新素材であるGaN-FETを使うことで理想的な波形の再現を可能にしたという。

 また100kHzを再生するためには、アンプだけでなくユニット側の対応も求められる。そのためにソニー初となる、可聴帯域で100kHzまでの再生が可能なトゥイーターユニットを開発・搭載している。

 振動板には、ソフトドーム型の表面にチタンをスパッタリングコート(イオン工学を応用した表面処理技術)することで、音の滑らかさと高域特性を両立した。さらに振動板の重心(重量と空気負荷が均一になる点)を駆動することで、ボイスコイルの動きをすべて振動板に伝えているという。同時に高剛性、高音速の接着剤を少量使って振動板とボビンを固定することにより、振動部の高速化も実現できている。

画像: 入力端子は右スピーカーに搭載される。左右のスピーカーは付属のデジタル同期ケーブルでつなぐ仕組みで、電源はそれぞれに必要だ

入力端子は右スピーカーに搭載される。左右のスピーカーは付属のデジタル同期ケーブルでつなぐ仕組みで、電源はそれぞれに必要だ

 次にSA-Z1のもうひとつのテーマでもある、広大で緻密な空間再現を実現する手段として「I-Array×Tsuzumi」というふたつの方式を採用した。

 I-ARRAYはメイントゥイーターの上下にアシストトゥイーターを仮想同軸状に配置し、ひとつの音源として機能させるソニーの特許技術で、同社ハイファイスピーカーの「SS-NA2ES」にも採用されている。

 この方式では、高域でも広い指向特性と充分な音圧を確保でき、同時にそれぞれのユニットの入力レベルを下げられるため、高域の解像度を高め、かつ余裕を持った駆動が可能になるのが特長だ。高域で広い指向特性を得られるということは、デスクトップ再生時にも広い試聴範囲が確保できるわけで、ユーザーのメリットも大きいだろう。

 もうひとつのTsuzumiは、小型ユニットで豊かな低域を再現する手法だ。100mmのウーファーユニット2基を、エンクロージャーの正面(メイン)と背面(アシスト)に背中合わせに配置したもので、アシストウーファーからは低域のみを音道から放出することで、解像度は高いが音圧の低い密閉型でも、広い指向特性と充分な音圧を確保できるとしている。

 なおウーファーを背中合わせに配置することでお互いのユニットの振動をキャンセルでき、結果としてエンクロージャーの箱鳴りも抑えられたという。ちなみにこのウーファー配置を横からみた形が楽器の “鼓” に似ていることから、本方式をTsuzumiと命名している。

 SA-Z1ではこれらの複数のユニットを同軸配置しているが、その時間軸管理も重要となる。まず各ユニットを別々に駆動するマルチアンプを採用してアンプからの逆起電流の影響を排除、さらにFPGA(書き込み可能なゲートアレイ)を使って補正することで時間軸管理を徹底した。

画像: 左スピーカーの操作部。「D.A.ASSIST」「A.WF MOTION」「A,WF FREQ RANGE」「A.TW TIME ALI」の4項目を切り替え可能

左スピーカーの操作部。「D.A.ASSIST」「A.WF MOTION」「A,WF FREQ RANGE」「A.TW TIME ALI」の4項目を切り替え可能

 SA-Z1は手の届く範囲に置いて使うシステムということもあり、ユーザビリティにも配慮されている。

 まず右チャンネルスピーカーの上部には電源、入力切り替え、ボリュウムスイッチや表示部が並び、DSEEHXやDSDリマスタリングの切り替えもここで可能。さらに左チャンネルにはユーザーが好みのサウンドに追い込むための各種スイッチが並んでいる。

 具体的には「D.A.ASSIST」(D.A.ハイブリッドアンプでのアナログ信号の使い方を切り替える)、「A.WF MOTION」(アシストウーファーの動きを切り替える)、「A,WF FREQ RANGE」(アシストウーファーの周波数範囲を切り替える)、「A.TW TIME ALI」(アシストトゥイーターの時間軸を調整)の4つだが、いずれもメイントゥイーターやメインウーファーの音はそのままで、微妙なニュアンスの変更を楽しめるのが特長だ。

 ある意味マニアックな機能だが、ソニーとしてはSA-Z1のユーザーに “使いこなす楽しみ” を感じてもらいたいと考えているのだろう。また愛聴曲に最適だと思う調整値をSNSなどで公開してもらうことで、ユーザー同士のつながりが生まれる可能性もある。

 デスクトップでハイエンドオーディオに通じる情報量、空間再現を目指したSA-Z1は、使いこなし甲斐のあるアイテムになるだろう。

「SA-Z1」の主なスペック

●仕様:2ウェイ5スピーカー、密閉・アクティブ型
●使用ユニット:19mmソフトドーム型トゥイーター、14mmソフトドーム型アシストトゥイーター×2、100mmコーン型ウーファー、100mmコーン型アシストウーファー
●キャビネット素材:アルミニウム
●周波数特性:10Hz〜100kHz(-10dB)
●内蔵アンプ出力:106W×2
●アンプ全高調波歪率:0.03%(1kHz、10W)
●対応フォーマット 最大DSD 22.4 MHz(DoP 最大11.2 MHz)、PCM 768 kHz/32ビット(入力端子によって異なる)
●オーディオ設定:DSDリマスタリングエンジン(DSD11.2MHzに変換)、DSEE HX(PCM 384kHz/32ビットへアップスケール)、8倍オーバーサンプリング、他
●対応音楽再生ソフト:Hi-Res Audio Player/Music Center for PC
●消費電力:右スピーカー60W、左スピーカー50W(待機時はどちらも0.5W)
●寸法/質量:右スピーカーW199×H207×D326mm/10.5kg、左スピーカーW199×H205×D326mm/10.5kg

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