オーディオやオーディオビジュアルの世界は日進月歩。次々に新しい技術やそれを搭載した新製品が登場し、入れ替わりも早い。だが同時にそれらは、常に時代の最先端を走っているモデル達でもあり、思い出に残る製品ともいえる。このシリーズでは、弊社出版物で紹介してきた名機や名作ソフトに関連した記事を振り返ってみたい。
久々の3000番台は設計を一新。段違いの再生能力を身につけた
「TA-DA3400ES」の後継機だが外見はほぼ同等。ただし型番が一挙に200番増えただけあって特徴的な変化がある。4
ポートのLAN端子を装備したスイッチングハブ機能を搭載しているのだ。これでネットワークオーディオ機器を直接接続できるし、ゲーム機やテレビをこれ経由でインターネット接続することも可能になった。あるいはインターネットラジオも聴くことができるなど、ネット系の拡張性を活かした設計だ。ちなみに映像系端子のS端子が省かれている。それとアンプについても大きく変っているので、確認していきたい。
内部の重要な変更点は、7チャンネル のパワーアンプ部に新開発の「ワイドバンド・メタルコアモジュール」を搭載したこと。これは上位機「TA-DA5600ES」と同等の広帯域電圧増幅部を、ディスクリート(個別部品)構成でメタルコア基板に組み込んだものだ。従来はICを使っていたのだが、これで上位機と同様、このシリーズ「第三世代」アンプになったという位置付けだ。ちなみにこのモジュールアンプは同社のエントリーモデル「STR-DH710」にも使われているが、本機の方が広帯域設計だという。
また基板を固定する補助金具や、絞りを深くしつらえて筐体の強度を増した「F Bエンボスシャーシ」など、上位機と同時に開発しているので、相互のノウハウを共有していることがうかがえる。それと独自の音場補整技術であるHD-D.C.S.(HDデジタル・シネマ・サウンド)はフロントハイチャンネルを仮想的に作り出せるようになった。
その再生音は従来と段違いの描写性能を得ている。骨太の構成力を土台として、 しかも瞬発力が向上していて筋力を実感させる。さらには繊細情報が伴なって表 現の幅が本格的に拡大しているのだ。
CDではラテンバンドの歯切れよさ、アフタービートによる軽妙な躍動感が印象 深い。このようにスピーカーの外部に軽快に飛び出す実体的な音を構築する力は高級オーディオの要件なのである。
BDソフトのオーケストラ曲も上位機ほどではないが充分な解像感とスケール 感を示す。あるいはホールトーンの三次元的に精妙な濃淡模様にしても、透明感と密度感をしっかり伝える。そして『アバター』『硫黄島からの手紙』など、強力な映画サウンドの大音量再生は腰高にならず力強く、十全なマルチチャンネル音場を展開する。体躯の響きを伴なった声のすわり、押し出しも良好。従来の限界を突破した、入魂の高性能機を歓迎する。
AV CENTER SONY TA-DA3600ES ¥136,500 ※価格は発売時のもの
●定格出力100W×7
●接続端子:HDMI入力4系統、HDMI出力1系統、色差コンポーネント入力3系統(3RCA)、色差コンポーネント出力1系統(3RCA)、AV入力5系統、AV出力1系統、デジタル音声入力7系統(同軸×3、光×4)、7.1chアナログ音声入力1系統、7.1chプリアウト1系統、LAN4系統(スイッチングハブ)、他
●消費電力:約250W(待機時約0.5W)
●寸法/質量:W430×H157.5×D388mm/約13.7kg