4Kの精細感とHDRの高輝度をしっかり再現
画素ずらし技術を用いた4K解像度表示を行なう0.47型DMDチップセットを採用した4K DLPプロジェクターは、比較的安価で製品化できることもあり、各社から登場している。しかし、優れた4K&HDR映像を実現するには、レンズの設計や画質エンジンなどのトータルの実力も問われるので、同じDMDチップセットならば同じような性能になるというわけではない。
オプトマの新モデルであるUHD50は、アメリカのCTA(コンシューマーテクノロジー協会)が定義する4KウルトラHDの基準を満たしたモデルだ。0.47型DMDチップセットに合わせて開発された2群10枚のEDガラスレンズによる光学系を採用。6セグメントのカラーホイールにより、BT.709カバー率100%、DCI-P3は80%、BT.2020は57.2%の広色域を実現するなど、高画質のための実力を高めている。
HDMI入力は2系統あり、4K&HDR、HDCP2.2に対応するのは1系統のみ。このほか、USB端子も備えるので、ドングルタイプの動画メディア用端末の給電にも使用可能だ。
投写距離は100インチで最短で2.68mとなり、一般的なリビングでは視聴位置付近に置くイメージとなる。騒音レベルはエコモードで25dBと比較的低騒音だが、本体を視聴位置に置く場合、近いのでファンノイズは少し耳に付く。ズームは1.3倍で最長で3.52mまで投写距離を調整できるが、調整範囲がやや狭い。設置位置の自由度はあまり高くないので、可能ならば天井吊りなどを検討したい。
豊かな階調、引き締まった色
暗部もスムーズに描く
UHDブルーレイ『シャイニング』を観たが、やや解像感はソフトな感触になるものの、発色はよく、肌の色の再現もスムーズだ。0.47型DMDチップセットを採用したプロジェクターでは、発色に優れていても中間色の描写や階調性にやや難のあるモデルもある。その点で、色数も豊富で階調性もなめらかなことは大きな美点だ。レンズも周辺のフォーカスの甘さや色収差などが目立たず、精度の高い作りになっていることがわかる。DLP方式特有のカラーブレイキングノイズは多少目に付くが、思ったよりも少なめだと感じた。
幾何学的模様の絨毯が敷かれたホテルのロビーを、三輪車で走り回るのをステディカムで追った有名なカットも、室内の様子を実に鮮明で公開時以上とも思える豊かな色で描いている。ここでは、精細感をもう少し高めるため、映像設定の「ウルトラディテイル」を初期値の『オフ』から『1』とした。最大値の『2』では少々フィルムグレインのチラツキが目立ってしまうが、『2』ならば質感が増し、4Kらしい解像感になった。このほか、「色温度」がやや高めに感じたので『D65』から『D55』に変更。「ダイナミックブラック」を『オン』にして暗部を引き締めるといった調整をしている。
雪の降る屋外の迷路のシーンでは、暗部がやや沈み気味になるが暗部の階調自体は良好。迷路を照らすライトの光や細かな雪の白さなど、明部の階調性もスムーズだ。薄型テレビと比べると、やや黒浮きは気になるが、コントラストや階調性はなかなかの出来だ。
さらに、最新作のUHDブルーレイ『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』を観た。デジタル制作のくっきりとした映像とは相性がよく、車やバイクのディテイルの再現も精密。登場人物の肌の質感もなめらかだし、革のジャケットなど衣装の質感も豊かだ。
サモア島での夜明け前の対決では、暗部がやや暗くなりすぎと感じたので、映像調整で「輝度」を初期値の『-1』から『0』に変更した。これで場面の見通しがよくなり、夜明け前から夜明けにかけての周囲の明るさの変化もより明瞭に描き分けられるようになった。輝度やコントラストの調整で対応可能ではあるが、HDRのダイナミックレンジが調整できるとさらにいいだろう。BDプレーヤー側に同様の機能があれば、それを併用するのも手だ。
光出力は2160ルーメンと標準的だが、明部の階調感や輝度のピーク感の表示はなかなかよく出来ていて、スポーツカーの豊かな色や艶、朝日や焚き火の眩しい光の再現にはなかなか見応えがある。
UHD50は4K&HDR対応モデルとしては手頃と言える価格で、しかも4Kらしい精細感と豊かな色、HDRの高輝度再現まできちんと描くことができる実力がある。プロジェクターの入門機として、おすすめのモデルだ。