アナログプレーヤーで有名な英国ロクサン(1985年創業)は、3年前の2016年に英国モニターオーディオの傘下となった。1996年にはミッションやワーフェデール、QUADを擁したヴェラティ・グループに買収されたことがあるけれども、その2年後には買い戻して再び独立を果たしていた。
紹介するのはロクサンの代名詞といえる高級アナログプレーヤーシステム。ターンテーブルは2005年の登場からロングセラーを誇るザクシーズ20プラスだ。その名前(XERXES)は古代ペルシア王に由来し、歴史書ではクセルクセスと表記されることがある。再生時にはスピンドルキャップを外してディスクを自由な状態にするのは同社ならではのアイディア。スタビライザーの併用は厳禁である。サスペンション機構に頼らないアイソレーション構造は刮目に値する。細身の鋼鉄製シャフトをタングステン製ボールで受け、そのハウジングは真鍮製。小型ACモーターによるベルト駆動は同社の伝統であり、アルミニウム製のインナープラッターとアウタープラッターは、それぞれ2重構造である。
トーンアームはワンポイント支持のSARA。アームから下側を向いたタングステンの突起を宝石で受けるオイルレス構造だ。吊り下げ型のインサイドフォースキャンセラーがアームのふらつきを効果的に抑えている。
電源部を内蔵していないため、ターンテーブルは専用の外部電源が必要。ここでは高級仕様のRPMが用意された。RPMでは交流100Vをいったん直流に戻してからモーター用の16V交流電源を生成している。33.1/3回転、45回転ともに6.25%までの回転微調整が可能。
フォノカートリッジにフェーズメーションPP2000を装着した音は、静寂感を際立たせた深遠さを意識させる。アンセルメ指揮「三角帽子」を聴いて感じたのは、重厚長大なプレーヤーに匹敵する安定感が音に漂っていること。インナープラッターを回すことで過不足ない慣性質量が確保されているのだろう。克明に描かれる音情報は簡潔なワンポイント支持を裏打ちするところで、窮屈さを感じさせないオープンな音場空間の提示も得意としている。
デイヴ・グルーシンのダイレクトディスクは、緊張感を帯びた楽曲の展開が印象的だった。井筒香奈江の45回転盤はリズムが心地よく、ストレートで生々しい音。本格的な音を聴かせてくれる組合せだ。
輸入元が用意したフォノカートリッジのSHIRAZに換装して聴いた音も満足度が高かった。EMT製をベースにしたもので、井筒香奈江は艶があって落ち着いた声質になり、三角帽子は一音一音の解像感をもう一歩高めた緻密さが得られた。特殊な針先形状のGYGERⅡがもたらす恩恵なのかもしれない。
英国ロクサンのアナログ製品は、暫く輸入されていなかった。こうして改めて聴くことで、私は完成度の高さを実感した次第。