オーディオテクニカのOC9は、オリジナルが1987年に登場している。このたび同社は、新しいOC9Xシリーズを５機種リリース。共通するのはPCOCC銅線の発電コイル＋鉄芯巻枠と、強磁力ネオジム磁石の採用。色違いだがアノダイズ仕上げのアルミニウム製ボディも同じである。針は各モデルで異なり、カンチレバー材質はアルミニウムとボロンの２種類。磁気回路のヨークも純鉄とパーメンジュールの２種類である。適正針圧は全機種とも2g。価格レンジは２万９千円～９万８千円と広い。
さっそく比べて音質傾向を探っていこう。プレーヤーはテクニクスSL1000Rでマイソニックのヘッドシェルに装着。フェーズメーション製T500昇圧トランスフォーマーを経由してエアータイトのATC5プリアンプのフォノ入力に接続。パワーアンプも同社ATM3（モノブロック）でスピーカーシステムにはB&Ｗ800D3
を使っている。
試聴に使用したプレーヤー
●トーンアーム：スタティックバランス型
●適合カートリッジ重量：15.9~31g
●駆動方式：ダイレクトドライブ
●回転数：33・1/3、45、78rpm
●寸法／重量：W531×H188×D399mm／約40.2kg（ダストカバー含む本体部）、W110×H84×D350mm／約2.1kg（コントロール部）
●問合せ先：パナソニックお客様ご相談センター 0120-878-982
試聴に使用したヘッドシェル
マイソニック SH-1Rh ¥15,000(税別)
●問合せ先：マイソニックラボ 03（3579）0726
カンチレバー、針先、磁気回路の組合せが異なり
最上位OC9XSLは格調あり情報量も抜群
まずは２万９千円のOC9XEB（青色）から。アルミニウム製カンチレバーに接合楕円ダイア針が組み合わされ、ヨークは純鉄製だ。「井筒香奈江」の歌声やピアノの打鍵に物腰の柔らかさが感じられる、聴き疲れしない音。「三角帽子」での輝かしい金管の響きや打楽器の音色も同様だ。「ソニー・ロリンズ」のサキソフォンは太く輪郭の甘さがあるものの、コストパフォーマンスは抜群といえよう。
AT-OC9XEB ¥29,000(税別)
●出力電圧：0.32mV（1kHz、5cm/sec）
●コイルインピーダンス：12Ω（1kHz）
●適正針圧：1.8～2.2 g（2.0g標準）
●カンチレバー：アルミニウムパイプ
●スタイラス：接合楕円針
●自重：7.6g
●針交換価格：￥20,300(税別)
続いて聴いた４万５千円のOC9XEN（銀色）は、針先が楕円形状の無垢ダイア針になった以外はOC9XEBと同等。やはり音の素性に共通項が感じられるものの、こちらは帯域が広がって音像描写も明確になる。弾性のあるアルミニウム製カンチレバーらしい、素材のしなやかさが活きている美音だ。
AT-OC9XEN ¥45,000(税別)
●出力電圧：0.35mV（1kHz、5cm/sec）
●コイルインピーダンス：12Ω（1kHz）
●適正針圧：1.8～2.2 g（2.0g標準）
●カンチレバー：アルミニウムパイプ
●スタイラス：無垢楕円針
●自重：7.6g
●針交換価格：￥31,500(税別)
これからは、パーメンジュールのヨークとボロン製カンチレバーを採用する高級仕様。７万円のOC9XML（赤色）はマイクロリニア形状（マイクロリッジ）の無垢ダイア針を搭載。音質の飛躍が著しく、豊富な情報量で「ソニー・ロリンズ」で聴くピアノの和音も複雑に音が絡みあう。曖昧さのないクッキリ系の音で、全体的にスリムな音調バランスだ。
AT-OC9XML ¥70,000(税別)
●発電方式：MC型
●出力電圧：0.4mV（1kHz、5cm/sec）
●コイルインピーダンス：12Ω（1kHz）
●適正針圧：1.8～2.2 g（2.0g標準）
●カンチレバー：φ0.28mmソリッドボロン
●スタイラス：無垢マイクロリニア針
●自重：7.6g
●針交換価格：￥49,000(税別)
シバタ針を搭載するOC9XSH（茶色）は８万５千円。同様にソリッドで鮮明な音の語り口で、こちらは高音域の情報量が増加した鮮烈さが印象的。音の立ち上がりも鋭く、個性派といいたくなる尖った音質傾向だ。
AT-OC9XSH ¥85,000(税別)
●出力電圧：0.4mV（1kHz、5cm/sec）
●コイルインピーダンス：12Ω（1kHz）
●適正針圧：1.8～2.2 g（2.0g標準）
●カンチレバー：φ0.28mmソリッドボロン
●スタイラス：無垢シバタ針
●自重：7.6g
●針交換価格：￥59,500(税別)
最後は特殊ラインコンタクト針を搭載する９万８千円のOC9XSL（黒色）。情報量も抜群で、全域で余裕のある力感が漂っている。最高級機らしい格調ある音で「ソニー・ロリンズ」は、吹けあがりの心地よい迫力とウッドベースの押しと明瞭さが両立している。
AT-OC9XSL ¥98,000(税別)
●出力電圧：0.4mV（1kHz、5cm/sec）
●コイルインピーダンス：12Ω（1kHz）
●適正針圧：1.8～2.2g（2.0g標準）
●カンチレバー：φ0.28mmソリッドボロン
●スタイラス：無垢特殊ラインコンタクト針
●自重：7.6g
●針交換価格：￥68,600(税別)
ベストセラーのヘッドシェル３種類も刷新された。丸穴が開き使いやすくなり、初めてボディにネジ切りしたOC9Xシリーズにも好適。音調バランスが整っているのはAT‐LT15H。重量のあるAT‐LH18Hは最も逞しい音をもっている。
（上）AT-LH18H ¥12,000(税別)
●材質：アルミニウム（ヘッドシェル本体）、ステンレス（コネクター部）
●寸法／自重：W17×H18.5×D45.2mm／約18.5g（リード線、取り付けビス除く、以下同）
（中）AT-LH15H 11,500(税別)
●材質：アルミニウム（ヘッドシェル本体、コネクター部）
●寸法／自重：W17×H18.5×D45.2mm／約14.8g
（下）AT-LH13H ¥11,000(税別)
●材質：アルミニウム（ヘッドシェル本体、コネクター部）
●寸法／自重：W17×H18.5×D41.7mm／約13.4g
AT-OC9XSLを装着して盤面に針を下ろす三浦氏。
