「真摯にレコードを演奏する人にとってのプログラムソース(アナログディスクやCDなど)は、クラシック音楽演奏家にとっての楽譜に限りなく近い存在である。楽譜もレコードも記号や信号の記録物で、それ自体は音楽ではない。音楽の生命を蘇生させるのは、これを音に変える演奏家によって可能になる。
演奏家が楽譜を忠実に音に変えるべく、技術の錬磨に努力することはもちろんだが、正確な演奏であるだけでは人を感動させることはできないものだ。
私が今までに逢った名演奏家と呼ばれるほどの人たちは、皆、楽譜を通して作曲家の精神までを洞察し表現することに努力するべきだと語った。
そして、真摯な『レコード制作家』は、最高の演奏が生まれ得る環境と物理的な条件を整え、その演奏家の音色や音の造形はもちろんのことであるが、その心までをも伝えようと努力するものだ。
そしてまた、真摯な『レコード演奏家』も、最高のレコード演奏が生まれ得る環境創りに努力することが生き甲斐の趣味人であるし、そこに留まらず、作品の魂に触れて感動することを求めてレコードを演奏する」(菅野沖彦)
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つまり、「レコード演奏家」とは、このような“真摯にレコードを演奏する人”であり、“そのレコードをどう再生するか”を常に考え、“最高のレコード演奏=感動”を求めて主体的かつ能動的に取り組んでいるレコード愛好家を、とくに「レコード演奏家」と呼ぶ。
本別冊では、菅野沖彦氏が訪問した、そうした真の「レコード演奏家」、とりわけオーディオ/音楽評論家や録音制作家など音のプロフェッショナル21氏のレコード演奏法を、美しいカラー写真とともに紹介する。
菅野沖彦のレコード演奏家訪問<選集>
価格:3,080円(税込)
●好評発売中!
■雑誌コード:67969-89
■ISBN:9784880734378
《主な記事内容》 ※(初出誌)
●[巻頭言]レコード演奏家論 菅野沖彦
(季刊『ステレオサウンド』誌No.119 1996 Summer)
●レコード演奏家訪問
[訪問者]
菅野沖彦
[レコード演奏家]
・安齋吉三郎氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.122 1997 Spring)
・菅原正二氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.122 1997 Spring)
・小林慎一郎氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.123 1997 Summer)
・東条碩夫氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.123 1997 Summer)
・原本薫子氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.124 1997 Autumn)
・柳沢功力氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.125 1998 Winter)
・小林悟朗氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.126 1998 Spring)
・和田博巳氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.126 1998 Spring)
・長島達夫氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.127 1998 Summer)
・朝沼予史宏氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.129 1999 Winter)
・山口 孝氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.129 1999 Winter)
・上杉佳郎氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.130 1999 Spring)
・櫻井 卓氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.131 1999 Summer)
・江崎友淑氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.132 1999 Autumn)
・傅 信幸氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.134 2000 Spring)
・三浦孝仁氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.137 2001 Winter)
・春日二郎氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.140 2001 Autumn)
・松下秀雄氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.142 2002 Spring)
・岩田由記夫氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.143 2002 Summer)
・宮下 博氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.146 2003 Spring)
・黒田恭一氏
(季刊『ステレオサウンド』誌No.150 2004 Spring)
・黒田恭一氏<続編>
(季刊『ステレオサウンド』誌No.151 2004 Summer)
・特別編=菅野沖彦氏(訪問=編集部)
(季刊『ステレオサウンド』誌No.151 2004 Summer)
菅野沖彦氏のプロフィール
1932年9月27日東京生まれ。幼い頃から音楽が大好きで、卓上型の蓄音器でSPレコードによる音楽を聴くのが、この上ない楽しみだったという。長じて、録音制作の仕事に就きたいとの希望から『朝日ソノラマ』を出版する朝日ソノプレス社に入社し、録音、編集、マスタリングなどの仕事に長年従事する。その後、フリーの録音制作家を経て、オーディオ・ラボを設立。1971年から「オーディオ・ラボ」レーベルにて、今なお名演奏・名録音として名高い数多くのジャズレコードなどを制作・発売された。一方、オーディオ評論家として『電波とオーディオ』誌を皮切りに、多くのオーディオ専門誌に執筆。なかでも『ステレオサウンド』誌には創刊2号(1967年)から登場。以来、四十数年にわたりオーディオ評論の第一人者として活躍されてきたが、2018年10月13日に惜しまれつつ、逝去された(享年86歳)。主な著書は『オーディオ羅針盤』『音の素描』(音楽之友社)、『新レコード演奏家論』(ステレオサウンド)など。