アキュフェーズのA級ステレオパワーアンプが一新
上級機の技術を元に魅力溢れる音質を追求した
左右にがっしりと構える放熱機構がいかにもAクラス動作を象徴している。約4年の時を経てモデルチェンジを果たした、定格出力45Wのステレオパワーアンプの勇姿だ。外形寸法や基本的機能はそのままに、細部仕様は1㎏増の質量33㎏も含め、全面的なグレードアップを果たしている。
たとえば、同社資料はスピーカー駆動力を表す指数として「ダンピング・ファクター(DF)」に注目しているが、2015年の前モデルA-47の600に対して、今回のA-48は800を達成。ちなみにDFは、専門書を紐解けば、スピーカーのインピーダンスをパワーアンプの出力インピーダンスで割った値、とある。しかし、このDFの値を見ても、普段は使うことがないスペックなので、僕はピンと来ない。読者の多くの方も、失礼だが、そうではないだろうか。でも数字は多くの事実を語っているはずだ。
実際、この改善にはDFの定義通り、パワーアンプ出力部の出力インピーダンスを下げなければならない。本機資料は信号経路のいっそうの最短化に始まり、理想的なパターンの追求、低オン抵抗MOS-FETによるプロテクションスイッチの採用など、愚直な努力を記す。こうした技術手段の総合結果がDFなのだが、僕は技術的説明はできないが、しかしこの数値にアキュフェーズの真摯な姿勢を想うのである。
そしてS/Nだが、世代ごとに1dBの改善を果たし、本機は117dBを誇る。「たったの1dBじゃないか」と言われそうだが、僕はこの1dBにもアキュフェーズの姿勢や良心を想う。
こうしたきめ細かいグレードアップはパワーメーターに-50 dB指標を追加してのモニターレンジの拡張や、外観ではアルミヘアラインのトッププレートを採用するなど多岐にわたるが、パワーアンプらしい、誰にもわかるグレードアップとして電源部も対象である。まずトランスは高効率化した大型のトロイダル。注目のフィルターコンデンサーは前モデルの5万6000μF×2から6万μF×2へ容量アップを図っている。
果たしてそのサウンドは・・・・・
もう「気持ちいい!」と言うしかない
上位機の技術も取り込みながら数々のグレードアップで、価格も前モデルの本体63万円から同68万円にアップしている。果たしてサウンドやいかに……。コントロールアンプC-2150と組み合わせ、デノンのCDプレーヤーDCD-SX1をフロントエンドに、モニターオーディオPL300Ⅱスピーカーを鳴らし、確認した。
最初にハーモニカのトゥーツ・シールマンスのライヴCD『CULLY1989&1990』を聴いてみると、一聴して、普段のAVセンターによる視聴と「違うなあ~」と思ってしまう。チャンネルあたりに投入した物量やコストの、途方もない差を考えれば、当然のことだろう。むしろ違いがなかったらおかしい。しかし時に、途方もない物量投入にも関わらず、感動できない製品だってある。そこがオーディオの怖いところだ……。A-48で鳴らすトゥーツ・シールマンスにさっそくしびれた。なんと言っても瑞々しいリードの音色だ。そしてハーモニカとマイクを手で囲ったジャケ写からも思い浮かぶ、しなやかな太さ。フレーズの強弱感とキレがとても生々しい。そして圧巻は図太くビートを提示し、楽曲をリードするダブルベース。ピックアップシステムの恩恵でもあるが、弛緩なき重低音ビートだ。もう「気持ちいい!」と言うしかない。
低声部の分厚いカサンドラ・ウィルソンのCD『カミング・フォース・バイ・デイ』の歌声も、「やっぱりセパレート型の力量だね」と口に出そうな、立体的音像感の生々しさである。
なぜ生々しいのか……。理由は知る由もないが、ひとつ素晴らしいパワーリニアリティには注目したい。出力は8Ωで45W、2Ωでは180W、音楽信号による測定だが1Ωでは360Wと理論通り倍々になる。とにもかくにも1Ω負荷の表示は実力の証と思う。それも効率の悪い、しかし音がいいと言われる、Aクラス動作だから、すこぶるマニアックである。
BDプレーヤーを2ch設定にして映画『アリー/スター誕生』を視聴。効果音も音楽も緻密にして厚手のリアリティだが、やはり実在的なセリフ描写こそ一番の魅力。この表現力を体験して、ぜひサラウンドに展開してほしいと思った。バランスとアンバランスの入力切替えボタンの活用、あるいはC-2150の機能を使えばオーディオとAVの両立は容易だ。まずはシンプルな4.0chがおススメ。きっとA-48のさらなる実力も知るに違いない。