MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)で最強と呼びたくなるヒロイン、キャプテン・マーベルことキャロル・ダンヴァース。もともとは地球人でありながら、ライトスピードエンジンの爆発に巻き込まれ、そのエネルギーを吸収したことでとんでもないパワーを手に入れてしまう……。
まるで光子力エンジンの爆発のエネルギーを浴びて巨大化してしまう、往年の特撮シリーズ『シルバー仮面(ジャイアント)』みたいだなぁ、なんて考えてしまったりもするのだけれど、そんなことはさておいて、本作のUHDブルーレイを再生していると、約2時間、とても前向きな気分を楽しめます。
その前に、まずはパッケージの紹介を。『キャプテン・マーベル4K UHD MovieNEX』(¥8,000、税別)は、4K版UHDブルーレイと、ブルーレイ3D、2Kブルーレイの3枚を納めた贅沢なもの(未公開シーンやNGシーンなどの特典映像は2Kブルーレイに収録されており、UHDブルーレイとブルーレイ3Dは本編のみ)。
音声はUHDブルーレイがドルビーアトモスで、他の2枚はDTS-HDマスターオーディオ7.1ch(どちらも英語音声の仕様)というもの。
この他にスチールブックケースや限定コミックを収録した限定販売の『〜プレミアムBOX』も絶賛発売中ですが、今回は『〜4K UHD MovieNEX』を視聴できたので、その感想をお届けします。
まずはUHDブルーレイで、4K&ドルビーアトモスを体験することに。小社「月刊HiVi」9月号の特集BD FOCUSで久保田明さんが本作について紹介してくれますが、その取材にお邪魔して、隣でちゃっかり視聴させてもらいました。
65インチ有機ELテレビと7.1.4スピーカーシステムで見たけれど、約2〜2.5Hで見る4K/HDR映像はやっぱり凄かった。
ディズニー/マーベルのUHDはそもそも基本的な画質・音質のレベルが高いし、CGを多用した絵づくりも4Kテレビとの相性がいいのは間違いない。全編を通してクリアーで、細部まで色の載った見通しのいい画面が続いている。キャロルの肌のグラデーションが美しく、着ているジャケットの質感再現も見事!
なかでも出色は猫(?)のグース。ふかふかとした毛並みの表現や目の表情など、どう考えてもCGのはずなのに、本当にリアルなのです。わが家のアメショー(モカ)にそっくりで、確かにこんな顔つきするよなぁとしげしげと見返したほど。いや〜CGIの進歩、恐るべし。
またHDRの効果を活かしたシーンも印象的で、チャプター13〜の光の演出、まばゆさは特筆もの! このシーンでは、拘束されたキャロルの姿が座禅を組んでいるようにも見え、そこから瞑想世界(人工知能との心理戦)を経て、キャプテン・マーベルとして覚醒する(悟りを開く)流れが、光の輝きでしっかり表現されていると感じました。
先述したようにこの作品は見終わった時に「あ〜面白かった。気分爽快!」と感じさせてくれるわけですが、それは“主人公の自己喪失”→“試練の旅”→“覚醒・自己実現”という英雄譚のベースを踏襲しているからだと思います。さらにそれを映像と音の最新技術を使って演出しているのです。
なお、後日同じUHDブルーレイを、自宅のSDRプロジェクターでもチェックしてみたところ(パナソニックDMP-UB900による『ダイナミックレンジ変換』再生)、光の中の階調は若干寂しくなるものの、ピークの再現は力強く、SDR変換であっても充分楽しめた次第。
チャプター15〜の戦闘シーンからクライマックスへの流れも同様で、このHDR的光の演出や力強さが、先述した本作の前向きな気分につながっているのかも、なんて思っています。
もうひとつ、久々にブルーレイ3Dも見てみたところ、こちらも技術進歩がしっかり確認できました。3D眼鏡の関係上、画面はどうしても暗くなったように感じるけれど、そこは映像調整でカバー。チャプター12〜で青い地球をバックに宇宙船が上昇してくるシーンや、その後のキャロルが空を飛ぶことを覚えるシーンなど、絶妙な浮遊感が味わえます。
ちなみに『キャプテン・マーベル』の本編はシネスコ画角だけど、ブルーレイ3Dは16:9(シネスコの上下に映像が追加される)に変更されていました。おそらく3D視聴では黒帯が少ない方がいいという配慮からだと思うけど、個人的には映像が間延びしたような印象もあったかな。ネタバレになるので詳しくは書かないけれど、グースの大活躍シーンは、3Dでは思わずのけぞります。
一方ドルビーアトモスの音声は、思っていた以上に移動感がはっきりして、低域も効いている。宇宙船がスクリーン奥から飛んできて眼前を通過していくシーンでも、高速で移動している感じが音だけで伝わります。チャプター12〜の打ち上げシーンでも地響きを含めた低音が体に伝わってきて、快感です。
チャプター13〜覚醒シーンでの人工知能とのバトル(フォトンブラストの撃ち合い)も重量感がありつつキレのいい低音で、不当な押しつけ(?)に立ち向かうキャロルの意志の強さを盛り上げます。こちらは65インチはもちろん、110インチスクリーンと組み合わせても迫力充分でした。
というわけでフェイズ3に向かってストーリーがシリアスになっていきがちだったマーベル作品群の中で、本作は視聴後にすかっと元気にしてくれる貴重な1本でありました。しかも4K/HDRのパワフルな映像と、気分を盛り上げるドルビーアトモスによる音の演出が加わることで、爽快さが2倍(個人の感想ですが、笑)になるのは間違いなし。ぜひ『キャプテン・マーベル』はUHDブルーレイで楽しんで下さい! (取材・文:泉 哲也)
もうひとりのキャプテンの物語も4Kで登場!
『キャプテン・アメリカ』3作品をUHDブルーレイで楽しもう
『アベンジャーズ』シリーズで大きな役割を果たしたキャップことキャプテン・アメリカの誕生&復活後の活躍を描いたシリーズ3作も、4K UHDブルーレイで発売されている。
2011年公開の『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』を4K/SDR&ドルビーアトモスの環境でチェックしてみたが、全編を通してS/Nがいいことに驚いた。本作は暗闇の中で作戦行動を取るシーンも多いが、それでもノイズが浮くようなことがなく、画面が落ち着いている。
また第二次世界大戦中のシーンでは抑えた色遣いとダークな照明が、薄暗い中にも階調を保って再現されるし、復活したキャップがニューヨークの街中に飛び出すシーンでは、一転してきらびやかなネオンやディスプレイの輝きが目に飛び込んでくる。この落差は印象的だ。
やはりマーベル作品群と4K UHDブルーレイの相性がいいのは間違いない。StereoSound ONLINE読者諸氏も“4K&アトモスでシリーズ見直し!”にトライしてはいかがだろう。