DAC非搭載のトランスポートモデルにアルミ筐体を使ったPro仕様が登場
韓国のカクテルオーディオの製品は現在デジタルファイルプレーヤーX45Proが好評だが、新たにDAC非搭載のミュージックサーバー&デジタルファイルトランスポートX50Proが登場した。本機は2017年発売のX50Dの上級機として、性能と音質の頂点を目指して開発された製品で、DELAやfidataと性格を同じくするオーディオ専用NASとも言える。
MULTIMEDIA TRANSPORT Cocktail Audio X50Pro ¥600,000+税
●再生可能ディスク:CD、DVD-R/RW、CD-R/RW
●接続端子:デジタル音声入力2系統(光、同軸)、HDMI出力3系統、デジタル音声出力4系統(AES/EBU、同軸、光、USBタイプA)、USBタイプA 3系統、LAN 1系統、HDD/SSD用スロット2系統 他●対応サンプリング周波数/量子化ビット数:〜352.8kHz/24ビット(PCM)、〜22.5MHz/1ビット(DSD)
●消費電力:20W
●寸法/質量:W441×H111×D330mm/13.2kg
X50ProがX50Dから進化した点として、まず搭載するCPUの高性能化(デュアルからクアッドコアへ)を挙げたい。さらに13mmという極厚のアルミプレートが奢られたフロントパネルを始めとして、筐体全体がより剛性を高めた結果、見た目にも重厚なイメージを漂わせるようになった。さらに電源部からの放射ノイズを防ぐために、電源部をアルミパネルで包んでシールドするなどきめ細かな高音質化対策が見てとれる。
リアパネルにはストレージ用のスロットを2基装備して、それぞれ6Tバイトまでの3.5インチ/2.5インチHDD、あるいは2.5インチSSDが装着可能である。必要に応じて増設できるというのはたいへん便利だが、最大で12Tバイトという容量は、果たしてすべて使い切る人がいるだろうかというほどの大容量だ。
CDをリッピングしてストレージに保存する機能については、同社製品では既におなじみのもので、別途CDドライブを用意しなくてもよいことや設定もいらないということを考えると実に簡便で快適だ。
本機はDSDが11.2M㎐まで、PCMは352.8k㎐/24ビット(DXD)までとハイレゾ対応は文句なしで、さらにネットワークに接続すればミュージックサーバーとしても機能する。これらの各種機能の操作はフロントパネルの7インチ大型液晶ディスプレイを見ながら簡単に行なえるが、専用のリモートコントロールアプリをタブレット端末にインストール(iOS/Android対応、無償)すれば、手元の画面で操作することも可能となる。
ニュアンスに富んだサウンドでリッピングの優位性を実感
本機でデジタルファイルを再生するには当然ながら別途D/Aコンバーターが必要だが、これは逆に言えば、既に手元にD/Aコンバーターあるいはデジタル入力付きのディスクプレーヤーをお持ちの方はむしろ好都合とも言える。
というわけで、本機の試聴ではSACD/CDプレーヤーのアキュフェーズDP750に内蔵のDACをUSB接続で使用、スピーカーはモニターオーディオPL300Ⅱである。
さて、本機のような製品(ミュージックサーバー&トランスポート)の試聴では、組み合わせるDACによって音は当然変わってくるわけで、その点は考慮いただきたい。
まずジャズの『ブルーノート・オール・スターズ』(96k㎐/24ビッ ト/FLAC)をMac+オーディルヴァーナで再生した音と、本機のHDDに取り込んでUSB出力した音とをそれぞれ聴き比べてみた。Macで再生した音は精細にしてクリーン、充分にいい音と言えるが、比較すれば本機で再生した音はより線が太い印象。ムターとトリフォノフらによるシューベルト五重奏曲『ます』(96k㎐/24ビット/FLAC)も、本機で再生した音の方が透明感がアップして低域も厚みが増している。この曲で特徴的なコントラバスも存在感がより明瞭となった。
本機のもうひとつのアピールポイントであるリッピング機能もチェックした。フロントパネルのCDスロットにR+R=NOWの『コラージカリー・スピーキング』を挿入し、各種ファイルフォーマットからWAVを選んでトラック2をリッピング。この音を、CDをダイレクト再生した音と聴き比べると、リッピングした音のほうがニュアンスに富み空間感も広大、低域もグーンと下まで伸びている。対するCDをそのまま再生した音は、音のエッジを立てた鮮明でメリハリの利いた音である。これは一旦データにして保存、再生したほうが、音がよくなるということで、よく言われるリッピングのメリットを実感することができた。
本機は実に機能豊富で使い勝手も優れていると感じる。お好みのDACと組み合わせて大いに楽しんでいただきたい。