日本のヘッドホン・ベンチャーが、アメリカ市場を開拓せんとサンズエキスポのスタートアップ専門のユーレカパビリオンで自社製品を展示。来場者の反応もたいへんよいという。ソニーとベンチャーキャピタルWiLの共同出資になる、ambie(『アンビー』と発音。本社は東京)だ。

画像1: 【麻倉怜士のCES2019レポート17】日本のヘッドホン・ベンチャー、ambie。「環境音を聞くイヤホン」でアメリカ進出へ
画像: 音楽は細い音道管を通って耳に届き、環境音はそのまま耳に流れ込む。外音を遮断しないので、周囲の危険や呼びかけにも気づける

音楽は細い音道管を通って耳に届き、環境音はそのまま耳に流れ込む。外音を遮断しないので、周囲の危険や呼びかけにも気づける

 製品は、通常のイヤホンの完全に逆で、環境音がダイレクトに聴こえるイヤホンだ。開発者の三原良太ディレクターによると、「当社のイヤホン製品は、耳を塞ぐことなく音楽が楽しめ、“聴く”と“聞く”が両立でき、“ながら聴き”ができます。会話をしながら、料理しながら音楽を楽しめるイヤホンなのです」。

 一般的なイヤホンは、完全に耳を覆う。周囲の音は聞こえない。人とのコミュニケーションは初めから不可能だ。道では近づいている車に気付かないこともある。ambieヘッドホンはその真逆。むしろ主役は環境音で、イヤホンから流れる音楽は、いわばBGMなのだ。音楽は細い音道管を通って耳に届き、環境音はオープンにそのまま耳に流れ込む。音質(?)は自然音のほうが、断然、よい。まさに主客が逆転している。

画像: 三原良太ディレクター。身分はソニーから出向だが、偶然にも名札紐にも「ソニー」

三原良太ディレクター。身分はソニーから出向だが、偶然にも名札紐にも「ソニー」

 このアイデアを世に送り出す経緯が面白い。三原氏はソニーでイヤホンを手掛けていた(現在もソニーから出向している)。ソニー時代、今回の製品の原型的な、「周りの音が聞こえるイヤホンを提案した」が、ソニーはイヤホンで没入感や高音質を追求しているので、コンセプトが合わないと却下された。

 しかしソニーとしても、方向は合わないものの、アイデアは新鮮に映ったので、育成を決意。ソニー外でのベンチャーキャピタルとの共同事業の道を選び、2017年に創業。昨年から日本市場で販売を開始している。

 実際の開発はたいへんだったという。三原氏によると、「3Dプリンターにて金型は100個以上は作りました。なんとか、基本形ができたのですが、モニターに使ってもらったところ、あまり環境音が聞こえないというのです。それはソニー流に音楽の音質を上げていたからでした。あまりに音がいいと、逆に環境音がマスクされてしまうんです。そこで、環境音と音質のバランスを見直しました」。

 オーディオ用のイヤホンなら音質設計に全力を投入するが、環境がメインのイヤホンでは、それをしないのが超ユニークだ。

 CESはアメリカ進出の調査のために出展したが、「アンケートをみてもとても評判がよいです。ぜひいい形でアメリカに進出したいです」と、三原氏は抱負を述べた。アメリカ市場には音より環境を聴くという類似製品は皆無なので、大いに期待が持てよう。

画像2: 【麻倉怜士のCES2019レポート17】日本のヘッドホン・ベンチャー、ambie。「環境音を聞くイヤホン」でアメリカ進出へ
画像: サンズエキスポのユーレカパビリオンに出展したambie

サンズエキスポのユーレカパビリオンに出展したambie

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