株式会社ジャパンディスプレイは12月4日に、戦略発表会「JDI Future Trip〜Creating Beyond〜」を開催した。同社はソニー・東芝・日立・パナソニック・トヨタといったメーカーの液晶部門が統合して誕生した、中小型液晶ディスプレイ事業を手がけるメーカーだ。
今回の「Future Trip」では、2019年に向けた同社の新技術、新提案が多数展示されている。冒頭、同社常務執行役員 チーフ・マークティング・オフィサーの伊藤嘉明氏が登壇し、ジャパンディスプレイの今後の展開を紹介した。
ジャパンディスプレイでは、今年4月1日に新しい社内組織を立ち上げ、イノベーション戦略の策定を進めていったという。そこから生まれたのが、「最終製品ビジネスへ参入」「定期課金ビジネスの導入」「テクノロジーで社会的課題を解決」というテーマであり、今年後半はその戦略に沿った活動を展開してきた。
しかし同社はディスプレイの部品を作っている会社であり、この3つの戦術を実現するには新しい取り組みが必要だった。そこで「オープンイノベーションの推進」(各種イベントを開催し、国内外を通じてアイデアを持っているベンチャーなどと情報交換する)、「海外展開の開始」(シンガポール、ニューヨークなどの現地法人、アーティストとコラボ)、「戦略的アライアンスの締結」(23の会社・団体と共同開発/実証検証に向けてプロジェクトをスタート)を進めてきたという。
便利な生活のために、スマートバス停を提案
続いて同社 執行役員 ディスプレイソリューションカンパニー社長 湯田克久氏が、日本メーカーの技術結集体としての責務でもある「テクノロジーで社会的課題を解決」への取り組み内容を解説してくれた。
湯田氏は国連広報センターが掲げる「持続可能な開発のための2030年アジェンダ」から、住み続けられるまちづくりを」に取り組んでいくと紹介した。それがスマートバス停の設置だという。
路線バスは、特に地方では重要な交通手段であり、生活の足として不可欠なものだ。しかし現実問題として、その維持運営(時刻表の張り替えなどのメインテナンス作業)が大きな負担になっているという。
スマートバス停は本体に液晶パネルが搭載されており、時刻表や路線図をWi-Fi経由で更新できる。これによってメインテナンスの手間が大きく改善されるそうだ。しかも低電力の反射型液晶パネルなので、バス停に取り付けた太陽電池だけで運用も可能。つまり電力網の設置などが必要ないので、設置可能なエリアも格段に広がることだろう。
湯田氏によると、日本国内には50万のバス停があるが、スタートバス停はその1%にも満たないそうだ。既にジャパンディスプレイが提案するシステムは北九州市明和町で実証実験を始めており、2019から本格導入が予定されているそうだ。同社ではこれをスタートに、海外市場も視野に入れた事業を展開していくという。
ディスプレイからインターフェイスへ
そして再び伊藤氏が登場し、データマネージメント事業を手がけるArm Treasure Data(トレジャーデータ株式会社)と戦略的協業を締結したと発表した。
これは、今までと異なる取り組みの一環であり、パネルメーカーから脱却して、新しいビジネスモデルを構築する提案となる。キーワードは、「情報を“見る”から“活かす”へ」だ。
その具体的な展開については、同社 常務執行役員 チーフ・テクノロジー・オフィサーの永岡一孝氏が解説してくれた。
システムとしては、ジャパンディスプレイがインプット・アウトプットインターフェイス(ディスプレイを応用したデバイス)を、Arm Treasure Dataがデータマネージメントを担当して、B to B、B to Cの様々な局面で使えるソリューションを提案していくそうだ。
そのためにはインターフェイスを受け持つセンサーがポイントになるので、ジャパンディスプレイでも新たな技術、センサー用アルゴリズムを開発していく。一例として透明、大面積の指紋認識センサー(アプリの起動やマンションのドアロック用などに応用可能)や、非接触式のホバーセンサーの開発が進められており、どちらも来年生産開始を予定しているそうだ。
そして最後に、液晶パネルとセンサー技術を活用した、来年以降の新製品が紹介された。その主なアイテムは以下の通りとなる。