この価格帯でこれでだけのクォリティはお買い得!
4月に突然発表されたこの記事は、オーディオビジュアル趣味とする方にはまさに吉報であっただろう。その後、HiVi6月号でスクープ記事が掲載され、新たな国産Ultra HD Blu-ray(UHD BD)対応ユニバーサルプレーヤーのハイエンドモデル登場に期待が高まっていた。そして、昨日8月23日正式にパイオニアから「UDP-LX500」が発表された。なお、発売日は9月下旬で、価格は¥185,000(税別)だ。
UDP-LX500は現在発売されている製品の中でも、数少ないUHD BDを再生できる高級ユニバーサルプレーヤーだ。同じクラスのモデルの売れ筋にOPPO Digitalの「UDP-205」があったものの、同社はオーディオビジュアル事業から撤退してしまった。オーディオビジュアルファンにとっては衝撃的であっただろう。しかもその理由を一言で述べれば「将来的な発展が望めないから」というものだ。私を含め、このニュースに落胆した方は多かったはずだ。
確かにオーディオビジュアルのコンテンツメディアは、物理的な記憶媒体から、ストリーミング配信へと変化しているのは明らかである。ストリーミング配信における映像の進歩は著しいが、ディスクメディアの圧倒的な情報量からくる高品質な再生を、あらゆるネットワーク環境で同等に実現するのは現時点では不可能だといえる。
また、ディスク再生で映像を楽しむ方も多いはず。未だにCDプレーヤーの高級品が毎年各社から発売されているように、高品質なユニバーサルプレーヤーを欲しているユーザーは少なからず存在すると筆者は思っているのだが……。そんな背景がある中、ディスクプレーヤーの真打とも言えるパイオニアから待望の製品が登場したのだ。
パイオニアは初の映像ディスクメディアのLD時代から、高品位なプレーヤーをリリースし続けている希有なメーカーである。といっても、この記事を読んでいる方には周知の事実だろう。
Blu-ray Disc(BD)プレーヤー「BDP-LX88」の時もそうであったが、パイオニアは最新メディアが成熟しつつある時を狙って製品を投入してくる。ゆえに筆者は、「いつ発表されるのか?」「もしかしたら開発していないのではないか?」とやきもきしていたのだ。その発表のタイミングはファンに「待たせたね」と言わんばかりだ。
UDP-LX500はドルビービジョン対応。HDMIは2系統でセパレートが出力可能
個人的な気持ちはこれぐらいにして早速UDP-LX500を紹介したい。本機は事実上ハイエンドユニバーサルプレーヤーでは下位にあたる「BDP-LX58」の後継機と言えるモデルで、筐体サイズやデザインもそのまま継承している。という事は上位機「BDP-LX88」の後継機も出るのか? と思うワケだが、それはパイオニアのティーザーサイトを見れば「推して知るべし」といった所だろう。
出力端子はHDMIが2系統(セパレート出力可)、RCA1系統、デジタル出力が同軸と光の各一系統。HDMI端子にはパイオニアAVアンプと接続する事でジッターを低減するPQLS(プレシジョン・クォーツ・ロック・システム)も装備。USBメモリやNAS(ネットワークサーバー)によるファイルオーディオ再生も可能だ。LANは有線のみとなっており、残念ながらNetflix等のオンデマンドには対応していない。
今回も機器間のアース電位を揃えるゼロシグナル端子を装備。ファンには説明不要かもしれないが、例えば接続先がAVアンプの場合、本機のゼロシグナル端子とAVアンプの入力端子を接続する事でアース電位を揃え、音質と映像のクォリティアップが期待できるワケだ。
DACは旭化成「AK4490」を採用。オーディオ基盤は一新されており、電源部も大部分に手を入れクォリティアップに抜かりはない。なおUDP-LX500のアナログ出力は2chのみとなっている。これは、マルチチャンネル再生はAVアンプに任せ、アナログ出力は2chオーディオに的を絞り、高品位に再生したいとの意味だろう。
内蔵するディスクドライブ本体はケースをハニカム構造とする事で強度アップと振動を抑制。もちろん前作BDP-LX58譲りの3mm厚のシャーシ、3分割構造といった高剛性筐体設計も受け継がれている。UDP-LX500はUHD再生機の開発に当たって、最適なアップデートがなされたと言えるだろう。
映像面ではHDRと、『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』などの新作映画でいち早く採用された「ドルビービジョン」も対応した。ドルビービジョンについてはテレビの対応状況が各社まちまちだが、パイオニアとしては現時点で可能な限りフォーマットに対応する姿勢なのだろう。
画質は高精細かつナチュラル。ドルビービジョンも体感
試聴はいつも通り筆者の部屋で行った。4K試聴にはソニーの65型有機ELテレビ「KJ-65A1」を用意してもらっている。KJ-65A1はドルビービジョン対応なので、筆者はドルビービジョンを初めてじっくりと体験することが出来た。今回は画質チェックをテレビにて行った後、筆者のリファレンスシステムに接続し2chオーディオとサラウンドの試聴をしている。
まずはUDP-LX500の画質を紹介したい。本機には、出力機器の種類ごとに、画質モードが用意されており、今回は「OLED」を選択した。UHD BD『宮古島・癒しのビーチ』(4K/60pHDR)では、冒頭の青空がシャープかつノイズの少ない映像で、高精細かつナチュラルな映像は、まさにパイオニアらしいと言えるだろう。チャプター2の夕陽と水面の煌きの陰影もすこぶる好調で、HDRの恩恵を改めて実感した次第だ。
続いてもUHD BDで、前述の通りドルビービジョン対応の『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』を観る。ディスクを投入すると、自動で再生が始まる。ドルビービジョンのマークが表示され、お馴染みのオープニングが登場した。宇宙空間のシーンでは、星の煌きがシャープで、爆破シーンの陰影もいっさいの破たんなく表示された。これはドルビービジョンだけでなく、ソニーの有機ELテレビの恩恵もあるだろう。なお今回の試聴環境ではドルビービジョン再生時、UDP-LX500側で画質調整が行なえなかった。どうやら、ドルビービジョン再生時は低遅延モードになるのが理由らしい。
ところで、自己発光デバイス(つまり、有機EL)でHDRを見てしまうと、漆黒の中に一点だけを光らせる等の芸当が難しいプロジェクターとの違いを見せつけられる。今後スクリーンの大画面を取るかテレビでHDRの恩恵を最大限受けるかで、筆者のようなプロジェクターユーザーは大いに悩みそうだ。
2chオーディオのクォリティも高い。音の骨格がしっかりしている
今度はUDP-LX500の2chオーディオ再生の能力を試してみる。試聴ディスクはソフィー・ミルマンの『Take Love Easy』から「ビューティフルラブ」(CD)と、鈴木雅之の『ミディアム・スロー』から「Tシャツに口紅」(SACD)を選択。デジタルフィルターは筆者が好みのシャープとし、ダイレクトモードで試聴を行なった。
「ビューティフルラブ」のボーカルが聴こえた瞬間に筆者は、ツボを押さえたサウンドと印象を受けた。音の骨格がしっかりとしていて、ソフィー・ミルマンの腹の据わった声も音像がブレることがない。「Tシャツに口紅」ではギターデュオとボーカルの音色の描き分けもなかなかの物で、鈴木雅之特有の鼻から抜けるビブラートもエロエロな色気で聴かせてくれた。
ここでクラシックのサウンドが気になったので、ステレオサウンドから発売されているワーグナーの『楽劇《ラインの黄金》~舞台祝典劇「ニーベルングの指環」 序夜』から「ヴァルハラ城への神々の入城」(SACD)を聴いてみた。響きの余韻が若干あっさりとしているが、ワーグナーの壮大な音楽を臆することなく堂々としたサウンドを聴かせてくれた。もちろん低域のノビや細かいニュアンス表現等、細かい事を言えば不満がないワケではない。しかし音楽再生プレーヤーとしては十分過ぎるクォリティを有していると筆者は断言したい。それにそういった細かい事はUDP-LX500の後に登場するであろう「主役」に期待するのが筋だろう。
最後にサラウンド再生を聴いてみる。筆者はパイオニアのAVアンプを使っているのでPQLSが使えるが、まずはPQLSなしの状態で試聴した。聴いたソフトは最新作が話題の『ミッションインポッシブル/ローグネイション』で、街中を疾走するシーンを選択している。一聴して気になったのが付帯音の少なさだ。さらにPQLSをオンにすると、エンジン音が大音量で鳴り響くシーンでは明らかに明瞭度がアップするのが感じられた。
なお筆者はBDP-LX88を通常使っているが、HDMI接続ではUDP-LX500の方が品位の高いサウンド(PQLSオフであっても)と感じたのをお伝えしたい。このあたりはいくら一世代前の高級機であっても、デジタル技術の発展には敵わないのだろうと思った次第だ。
UDP-LX500は最後のディスクメディアと言われるUHD BDを再生するだけでなく、パイオニア伝統の光ディスクプレーヤーとしての資質を有していると筆者は感じた。この価格帯でこれでだけのクォリティが担保されているのであれば、現在のユニバーサルプレーヤーが置かれている環境としてはお買い得とも言える製品だ。ただ筆者としてはティーザーサイトで本機の後ろに、ベールの様な物で覆われている「何か」が姿を現すのを楽しみに待ちたい。
関連ニュース
UDP-LX500の紹介ページ