東京・秋葉原に店舗を構える、キットアンプメーカーのサン・オーディオ。真空管オーディオファンなら、一度は耳にしたことがあるだろう。サン・オーディオは、国内外で名高いトランスメーカーのタムラ製作所の代理店からスタートし、現在はオリジナルの真空管アンプキットや、特注トランスなどのパーツも扱っている。真空管アンプキットの開発、製作は30年近い歴史があり、国内外でもファンが多い。知る人ぞ知る名ブランドなのだ。
そんなサン・オーディオとステレオサウンドの季刊誌『管球王国』がコラボして誕生したのが、今回紹介する管球式プリアンプ「SVC-200 管球王国スペシャルヴァージョン」(以下、SVC-200管球王国)。販売は、ステレオサウンドストアのみでの取扱いとなる。
これぞ魔改造。管球王国スペシャルはベースモデルとは別物だ
要となる真空管は通常モデルのECC82/12AU7から英国BRIMAR製の高信頼管CV4068に、増幅部の抵抗はKOA製からアーレン&ブラッドレー製に変更している。さらに、コンデンサーはASC製フィルムコンデンサーをオーディオキャップ製錫箔巻き、電解コンデンサーもユニコン製BMI製とした。
電源部も大幅に手が加えられている。電解コンデンサーはユニコン製とニチケミ製から、BMI製とTK製にそれぞれ交換し、サン・オーディオ製のブロック型メタライズド・フィルムコンデンサーを投入した。真空管の変更でローノイズ化と信頼性の確保を図り、コンデンサーと抵抗の変更によって柔らかな音色と高い解像感を持つ音を実現している。
1月29日発売の『管球王国 Vol.87』で本機を含む管球式プリアンプ18機種の徹底試聴を特集しており、その中で評論家の三浦孝仁氏は「高いS/N感を感じさせるワイドレンジ再生が印象的」、吉田伊織氏は「現代的で質の高い音源になるほど本機の魅力が表れる」と述べている。
安心の品質と高音質を両立した、価値あるプリアンプ「SVC-200 管球王国スペシャルヴァージョン」。一生モノとして、手にしておきたいアイテムだ。
真空管のよさを残しつつも、現代的なキレあるサウンド
試聴環境はいつも通り筆者の部屋。リファレンスシステムは、ネットワークプレーヤーがパイオニア「N-70AE」、パワーアンプはトライゴン「モノローグ」、スピーカーはダイヤトーン「DS-2000ZX」だ。
今回、長期間借用させて頂いたので、じっくりといろいろな種類の音楽を楽しませてもらったのだが、筆者が持っている真空管プリアンプの固定概念を覆す現代的なサウンドは、ひじょうに興味深かった。
その中で代表的な試聴ファイルとして『保科洋作品集』から「風紋」(44.1kHz/24bit、WAVファイル)と、ステレオサウンドストアで発売されているズービン・メータ指揮・ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団の『ホルスト:組曲「惑星」』から、「第5曲: 土星―老いをもたらす者」(DSD 11.2MHz)のインプレッションをお届けしよう。
「SVC-200管球王国」を聴いて、真っ先に感じたのは「フレッシュさと、ブリリアントな響き」であった。「風紋」では金管楽器の響きはもちろんの事、木管楽器、特にクラリネットの音色が立体的で主旋律を歌うニュアンスの繊細が印象的だ。
『土星』では冒頭のトロンボーンがアンサンブルを奏でるパートのハーモニーも、響きはあるが華やかさを抑えつつも輝きのあるサウンドがいい。さらに後半、金管楽器が悲壮感のあるメロディーを吹く部分では、ダイナミックレンジが広くオーケストラと一体感があった。「SVC-200管球王国」のサウンドは、練り上げた回路構成と高音質パーツによってもたらされているのだろう。長期取材を通して、本機はクラシックとの相性がすこぶるいいモデルだと感じた次第だ。
「SVC-200管球王国」は、管球式プリアンプとしてのキャラクターを持ちつつ、解像度の高い現代的なサウンドが魅力だ。シャーシの剛性が高くパーツの持ち味を素直に出しやすいのもポイント。あくまで自己責任とはなるが、自分でパーツを換装し、それによる音の違いを楽しむことも期待できそうだ。そのままでもよし、好みに合わせて手を加えるもよし。真空管ファンには長く愛用できる逸品と言えるだろう。
【製品紹介】
SVC-200 管球王国スペシャルヴァージョン [完成品]
¥280,800(税込)
●入力端子:LINE4系統(RCAアンバランス)
●出力端子:PRE2系統(RCAアンバランス)
●出力インピーダンス:10kΩ
●利得:22dB
●使用真空管:6X4×1、CV4068(BRIMAR)×2
●備考:左右バランスコントロール装備
●寸法/重量:W364×H100×D280mm/7kg
●本モデルにフォノイコライザーアンプは搭載されていません