【PICK UP MOVIE】
『カメラを止めるな！』
6月23日（土）よりロードショー
新人監督の長篇映画第一作。低予算、役者も新人。もはや手垢が付いた感じのゾンビ・ホラー。どうなの、これ？ と思っていたら、座席から転がり落ちるほど面白い！ 今年上半期の邦画では『孤狼の血』とコレが双璧ではないか。
山奥の廃墟で、仲間たちと全篇ワンカット撮影が売りのゾンビ映画を撮っている撮影隊。ココね、表向きは浄水場跡だけど、裏では日本軍が死者を生き返らせる人体実験をやっていた場所らしいよ。
そういう余計なことを言うから、案の定、本物のゾンビが現われて現場は血の海になってしまう。「これが映画だ！ 本物の映画だ！ カメラを止めるな！」と狂喜乱舞する監督。ココから映画は予想外の方向に転がり出す。うおおお、と驚きながら、映画館は笑いの渦に巻き込まれるだろう。そして最後に感動が押し寄せてくるのだ。重みをこらえて必死に目を剥くゾンビのぷるぷるを目撃して。
映画を通して映画という表現物の成り立ちを指し示すメタフィクション。と、高尚にまとめることもできるけれど、それが絶妙のユーモアとマヌケさで縫い合わせられているのが魅力的だ。
自主映画の安っぽさ（という思い込み）を逆手にとった見事な演出。終盤、それまで穴が空いていたジグソーパズルにぴたりぴたりとピースがはまって、タイトルは挙げないけれど、フランソワ・トリュフォー監督1970年代の名画もかくやの喝采がスクリーンにあふれ出す。我ながら大袈裟だなあと思うけれど、本当だから仕方がないのだ。
後半、活躍する監督の娘がアル・パチーノの『スカーフェイス』や『タクシードライバー』のモヒカン・デニーロのTシャツを着て走り回っている。いないって、そんな女子中学生（笑）。でもこれが映画の王国だ。クエンティン・タランティーノが観たら宣伝部長を買って出てくれるのではないか。
全力推薦！ がんばれ、上田慎一郎監督と仲間たち！
【PICK UP MOVIE】
『カメラを止めるな！』
6月23日（土）より、新宿K’s cinema、池袋シネマ・ロサでロードショー
監督・脚本・編集：上田慎一郎
配給：ENBUゼミナール
2017年／日本／96分／ビスタサイズ
オフィシャルサイト：http://kametome.net/index.html
【コレミヨ映画館】
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vol.7『ワンダー 君は太陽』 http://www.stereosound.co.jp/news/article/2018/06/11/68305.html
vol.6『犯罪都市』 http://www.stereosound.co.jp/news/article/2018/04/26/67238.html
vol.5『パシフィック・リム：アップライジング』 http://www.stereosound.co.jp/news/article/2018/04/12/66817.html
vol.4『ラブレス』 http://www.stereosound.co.jp/news/article/2018/04/05/66665.html
vol.3『ザ・シークレットマン』 http://www.stereosound.co.jp/news/article/2018/02/21/64979.html
vol.2『ぼくの名前はズッキーニ』 http://www.stereosound.co.jp/news/article/2018/02/07/65126.html
vol.1『スリー・ビルボード』 http://www.stereosound.co.jp/news/article/2018/01/31/64898.html
【映画評論家 久保田明の連載】
http://www.stereosound.co.jp/column/eiga_no_kousaten/
