『ever』はファンが選んだ18曲を収録した“ファンベスト”
オフコースのデビュー45周年を記念して2015年に発売されたベストアルバム『ever』。ファンから「一番好きな曲」や「一番心に残る曲」を、そのエピソードとともに募り、上位18曲がCDに収録されている。つまり、"ファンが選んだ"ベストアルバムだ。
そのベストアルバムCD『ever』を、初めてアナログレコード化するプロジェクトがスタートする、という驚くべきニュースが編集部に飛び込んで来た。しかも、単にCD制作用のデジタル音源をそのままアナログレコードにするわけではないという。
『ever』に収録されている18曲のうち17曲は、いずれも1970年代~1980年代にかけて、アナログ・テープに録音されており、そのマスターテープはいまもコンディションのよい状態で保存されている(残りの1曲はデジタルマスターテープへの録音だそうだ)。
今回のプロジェクトでは、ユニバーサル ミュージック協力のもとアナログ・マスターテープを用意。あえて、一般的な市販のCD制作で行なわれるような音の調整を施さない手法でカッティング用ハイレゾマスターを作り、そこからアナログレコードを制作するという。つまり、オリジナル・マスターテープの生々しいサウンドそのものが愉しめる"音の良さ"にこだわり抜いたプロジェクトだというのだ。
編集部では、このオリジナル・マスターテープからのカッティング用ハイレゾマスター制作現場に立ち会うことができたので、レポートしたい。
マスターに込められた音を引き出す職人魂を見た
場所は、日本コロムビアのマスタリング・スタジオ。制作はアナログカッティングの名匠、武沢茂カッティングエンジニアが担当する。
このスタジオには、スチューダー「A80」と「A820」、2種類のテープレコーダーがある。このレコーダーでマスターテープを再生し、その信号をデジタル化するのだが、1970年代に広く使われたA80と、1980年代に一時代を築いたA820では、当時の流行りを反映してか、同じマスターテープの再生でも、サウンドの傾向がわずかに異なる。
武沢氏は、1曲ずつA820での再生をベースにデジタル化していく。その中で、楽器編成や曲調、録音されている音の状況などから「A80の方が合う」と判断した作品は、A80でも再生・デジタル化するという2段構えで作業を進めていた。マスターに込められた音の魅力を余すことなく引き出すという徹底した姿勢、そしてそのための手間を惜しまない、そんな武沢氏の職人魂をここに見た。
ファンには待望の『ever』アナログレコード。気になる発売時期は、今年夏を予定しているとのこと。新たな情報が届き次第、追って制作レポートをお届けする。