ステレオサウンドストアで販売中の真空管ヘッドフォンアンプ、ウエスギTAP-101HP。真空管OTL(出力トランスレス)方式ならではの瑞々しく伸びのある音をヘッドフォンで聴ける注目機だ。クラフトの楽しみもあるキット仕様と完成品仕様を展開するTAP-101HPの開発コンセプトを、上杉研究所の藤原伸夫氏が管球王国「マイ・ハンディクラフト」特別編として綴る。イントロダクションのPart1に続けて、藤原氏執筆のPart2開発記本編、Part3キット製作ガイドの、3部構成でお届けする。

HIGHポジションでの残留ノイズは50μV以下

◎本機のスペックと測定結果

 本機のスペックを下にまとめます。第9図が本機の周波数特性です。負帰還量を変えて電圧利得を変えていますが、理想的な負帰還アンプの特性で、安定に広帯域な特性を得ております。第10図-1〜3に歪率特性を示します。真空管式OTLアンプの特徴である負荷抵抗値に比例して最大出力が増大している様子が確認されました。A級動作の出力段ならびに十分な量の負帰還のおかげで、低歪特性が得られております。ヘッドフォンアンプは耳の至近距離に配される聴取形態から残留ノイズの低減が求められますが、HIGHポジションでも50μV以下で、雑音はまったく検知できません。

TAP-101HPの仕様
●型式:真空OTLヘッドフォンアンプ
●入力端子:LINE 3系統(RCAアンバランス×2、ステレオミニ)
●入力インピーダンス:200kΩ
●出力端子:ヘッドフォン2系統(Φ6.3mm標準フォーン、XLR・シングル接続)
      ※同時使用は推奨せず
●ヘッドフォンインピーダンス切替
●使用真空管:12AX7A(松下電器)×2、12AU7(SIEMENS)×2、6DJ8/6922(Philips ECG)×4
●寸法/重量:W358×H110×D240mm/5.7kg
●ヘッドフォンインピーダンス切替え

画像1: HIGHポジションでの残留ノイズは50μV以下

第9図 周波数特性

画像2: HIGHポジションでの残留ノイズは50μV以下

第10図-1 歪率特性 RL:32Ω(LOW)

画像3: HIGHポジションでの残留ノイズは50μV以下

第10図-2 歪率特性 RL:128Ω(MID)

画像4: HIGHポジションでの残留ノイズは50μV以下

第10図-3 歪率特性 RL:500Ω(HIGH)

画像5: HIGHポジションでの残留ノイズは50μV以下

音楽聴取は私的な体験。現代のリスニングニーズに応えるヘッドフォン

 最後に本機の開発に当たった考えを改めて述べさせていただきます。オーディオ機器による音楽再生とは、居住空間における時空を超えた音楽芸術の再生(Reproduce)であり、生演奏による音楽鑑賞と異なって、鑑賞者が積極的にオーディオ機器を用いて音楽音源をリアルタイムに再生するという、絵画や彫刻などの芸術鑑賞とは異なる鑑賞のスタイルです。これに用いられる音楽の音源は、その芸術の作品性からパッケージメディアが前提でありました。

 ITの拡充により、現代の音楽再生環境は大きく変わりました。音源のデジタル化は、音楽ライブラリの巨大化と楽曲の検索性向上/再生履歴の活用拡大につながり、音楽音源の概念はパッケージメディアの所有からクラウド環境における使用権利の取得に移行しております。使用されるオーディオ機器はスマートフォンのAV機能に統合され、もとより極めて私的な体験であるオーディオ機器による音楽聴取の手法としてヘッドフォンによる音楽再生は多くの音楽ファンのニーズに応えて拡充してきています。

 筆者はこうしたオーディオを「ニューオーディオ」として唱えるものです。従前のラウドスピーカーによる実空間における音楽再生「トラディショナルオーディオ」の愛好家においてはヘッドフォンによる音楽鑑賞は重きを置かれず、応急的なモニター用途などサブ的な位置づけのコンポーネントと扱われることがあるようです。しかし、芸術再生ゆえに再生クォリティの向上が音楽芸術の本質に接近する真理は世代を超えて健在で、高音質な音源、ヘッドフォンならびにヘッドフォンアンプが求められて市場は活況を呈しています。「ニューオーディオ」関連のイベントは20~30歳代の若いオーディオファンによって、かつてのオーディオブームを彷彿とさせる賑わいです。

 筆者のヘッドフォン体験は後にも先にも中学生時代のスタックス社「SR-3」のみで、ヘッドフォンの音を評価する座標軸を持ち合わせておりませんので、本機の音に対するコメントは差し控えます。ただ、過日開催されたヘッドフォンオーディオのイベントで、20歳代のオーディオマニア(50年前の筆者です)が熱心に試聴をしてくれて、最後に「今までに聴いたことのない、すごくいい音です」と評価してくれたことを申し添えます。彼が真空管式OTLのサウンドの魅力を感じ取ってくれていたならば嬉しいのですが……。

Part1はコチラからPart3はコチラから

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