ステレオサウンドストアで販売中の真空管ヘッドフォンアンプ、ウエスギTAP-101HP。真空管OTL(出力トランスレス)方式ならではの瑞々しく伸びのある音をヘッドフォンで聴ける注目機だ。クラフトの楽しみもあるキット仕様と完成品仕様を展開するTAP-101HPの開発コンセプトを、上杉研究所の藤原伸夫氏が管球王国「マイ・ハンディクラフト」特別編として綴る。イントロダクションのPart1に続けて、藤原氏執筆のPart2開発記本編、Part3キット製作ガイドの、3部構成でお届けする。

低電圧大電流動作が可能な近代管6DJ8を採用し、SEPP出力段を構成

◎出力管の選定

 管球式OTLヘッドフォンアンプとして、小型のシャーシに入力切替え、音量調整機能ならびに2チャンネル分の増幅回路を収納する必要があります。出力目標を32Ω負荷で100mWと設定すると、出力電圧は1.8Vrms、出力電流は55mArmsが求められます。オーディオ用として実績のある三姉妹管(12AX7、12AT7、12AU7)では必要なプレート電流が得られないので、フレームグリッド構造を採用した民生管としてポピュラーな近代管6DJ8を使用します。

 この真空管は当時の要求から低電圧大電流動作を可能としており、最大プレート電流定格は25mA確保されておりますので、この真空管を2ユニット並列として出力段を構成します。ちなみにMT管でプレート電流の大きな真空管としては、電源の制御管として開発された6RA2、6RA3、さらに、6DJ8と同時代に真空管式コンピューター用に開発された5687などが有名ですが、入手性ならびに発熱量(5687はヒーター電力5.7Wを要する)に難点があります(第2図)。

第2図 出力管選択のための特性比較

◎本機の回路構成

 当社のプッシュプルパワーアンプで積極的に採用しているサークロトロン出力回路は増幅回路当たり2つのフローティング電源が必要となり、今回の製品企画では4つのフローティング電源が必要となることより採用を見送り、1電源でまかなえる通常のSEPP(Single Ended Push-Pull)回路としました。

 第3図に本機のブロックダイアグラムを示します。初段は12AX7A、次段12AU7による2段差動アンプ構成で、後述の「打消し回路」によって、2ユニットを並列接続した出力管6DJ8を駆動するSEPP回路です。駆動するヘッドフォンのインピーダンスに応じて負帰還量を可変とし、加えて出力に固定抵抗を追加して、電圧ゲイン、出力インピーダンスをコントロールします。

 電源は±150Vで回路のSVRR(Supply Voltage Rejection Ratio:電源電圧の変動が出力に現れるが、この減衰度)が高いので、トランジスターによる簡単なリップルフィルターにより給電します。下側の出力管6DJ8のカソード電位は-150V程度となりますので、ヒーター-カソード間耐圧確保のために独立ヒーター巻線としてヒーターバイアス電圧を与えています。

第3図 ブロックダイアグラム

画像: 低電圧大電流動作が可能な近代管6DJ8を採用し、SEPP出力段を構成

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