低電圧大電流動作が可能な近代管6DJ8を採用し、SEPP出力段を構成
◎出力管の選定
管球式OTLヘッドフォンアンプとして、小型のシャーシに入力切替え、音量調整機能ならびに2チャンネル分の増幅回路を収納する必要があります。出力目標を32Ω負荷で100mWと設定すると、出力電圧は1.8Vrms、出力電流は55mArmsが求められます。オーディオ用として実績のある三姉妹管(12AX7、12AT7、12AU7)では必要なプレート電流が得られないので、フレームグリッド構造を採用した民生管としてポピュラーな近代管6DJ8を使用します。
この真空管は当時の要求から低電圧大電流動作を可能としており、最大プレート電流定格は25mA確保されておりますので、この真空管を2ユニット並列として出力段を構成します。ちなみにMT管でプレート電流の大きな真空管としては、電源の制御管として開発された6RA2、6RA3、さらに、6DJ8と同時代に真空管式コンピューター用に開発された5687などが有名ですが、入手性ならびに発熱量(5687はヒーター電力5.7Wを要する)に難点があります(第2図)。
第2図 出力管選択のための特性比較
◎本機の回路構成
当社のプッシュプルパワーアンプで積極的に採用しているサークロトロン出力回路は増幅回路当たり2つのフローティング電源が必要となり、今回の製品企画では4つのフローティング電源が必要となることより採用を見送り、1電源でまかなえる通常のSEPP(Single Ended Push-Pull)回路としました。
第3図に本機のブロックダイアグラムを示します。初段は12AX7A、次段12AU7による2段差動アンプ構成で、後述の「打消し回路」によって、2ユニットを並列接続した出力管6DJ8を駆動するSEPP回路です。駆動するヘッドフォンのインピーダンスに応じて負帰還量を可変とし、加えて出力に固定抵抗を追加して、電圧ゲイン、出力インピーダンスをコントロールします。
電源は±150Vで回路のSVRR(Supply Voltage Rejection Ratio:電源電圧の変動が出力に現れるが、この減衰度)が高いので、トランジスターによる簡単なリップルフィルターにより給電します。下側の出力管6DJ8のカソード電位は-150V程度となりますので、ヒーター-カソード間耐圧確保のために独立ヒーター巻線としてヒーターバイアス電圧を与えています。
第3図 ブロックダイアグラム


