ステレオサウンドストアで販売中の真空管ヘッドフォンアンプ、ウエスギTAP-101HP。真空管OTL(出力トランスレス)方式ならではの瑞々しく伸びのある音をヘッドフォンで聴ける注目機だ。クラフトの楽しみもあるキット仕様と完成品仕様を展開するTAP-101HPの開発コンセプトを、上杉研究所の藤原伸夫氏が管球王国「マイ・ハンディクラフト」特別編として綴る。イントロダクションのPart1に続けて、藤原氏執筆のPart2開発記本編、Part3キット製作ガイドの、3部構成でお届けする。

定電流化した差動回路でプッシュプルの対称性を確保

◎真空管によるSEPP回路と打消し回路

 真空管によるSEPP回路は、半導体と異なり相補極性の素子が存在せず同一極性(半導体のnpn型に相当)で構成されるため、第4図の上側の真空管(V1)と下側の真空管(V2)が直列に並び、V1のカソードとV2のプレートとの接続点から出力信号eoを取り出す構成となります。

第4図 真空管によるSEPP回路

 V1はカソードフォロアー、V2はプレートフォロアー動作となり、同一の入力信号(Eg1=Eg2)が入力された場合にV1のegk1は入力信号Eg1から出力信号eoを差し引いた(帰還信号として作用)振幅となって、プッシュプル動作の動作要件であるegk1=egk2が成立しなくなります。この結果、V1、V2の増幅度が大きく異なり、出力波形に大量の2次高調波が発生いたします。

 これを回避するために、従来から「打消し回路」と称してegk1=egk2となるよう種々の回路が考案されておりました。本機の打消し回路は、後述のP-K分割型位相反転に対して、電圧利得を併せ持つ、第5図に示すような定電流回路C.C.によって動作点が定められたV1、V2で構成される差動回路としております。

第5図 本機の打消し回路

 この回路ではiPv1=iPv2の関係で動作しますので、RPv1=RPv2とすることで出力管V3、V4に等しいegkが出力されることになります。ただし、V1のプレート電圧にはeoが加算されてV2のそれとは振幅が大きく異なり、V1とV2の交流動作点は大きく異なりますので、C.C.の代わりに固定抵抗を使用するとiPv1とiPv2が同一とならず、対称性が崩れます。C.C.の存在がこの回路の肝といえましょう。

 第6図に有名なP-K分割型位相反転回路の打消し回路を示しますが、常にiPv1とikv1は同一なので、出力管V3、V4に等しいegkが入力されることとなります。

第6図 P-K分割型位相反転回路の打消し回路

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