定電流化した差動回路でプッシュプルの対称性を確保
◎真空管によるSEPP回路と打消し回路
真空管によるSEPP回路は、半導体と異なり相補極性の素子が存在せず同一極性(半導体のnpn型に相当)で構成されるため、第4図の上側の真空管(V1)と下側の真空管(V2)が直列に並び、V1のカソードとV2のプレートとの接続点から出力信号eoを取り出す構成となります。
第4図 真空管によるSEPP回路
V1はカソードフォロアー、V2はプレートフォロアー動作となり、同一の入力信号(Eg1=Eg2)が入力された場合にV1のegk1は入力信号Eg1から出力信号eoを差し引いた(帰還信号として作用)振幅となって、プッシュプル動作の動作要件であるegk1=egk2が成立しなくなります。この結果、V1、V2の増幅度が大きく異なり、出力波形に大量の2次高調波が発生いたします。
これを回避するために、従来から「打消し回路」と称してegk1=egk2となるよう種々の回路が考案されておりました。本機の打消し回路は、後述のP-K分割型位相反転に対して、電圧利得を併せ持つ、第5図に示すような定電流回路C.C.によって動作点が定められたV1、V2で構成される差動回路としております。
第5図 本機の打消し回路
この回路ではiPv1=iPv2の関係で動作しますので、RPv1=RPv2とすることで出力管V3、V4に等しいegkが出力されることになります。ただし、V1のプレート電圧にはeoが加算されてV2のそれとは振幅が大きく異なり、V1とV2の交流動作点は大きく異なりますので、C.C.の代わりに固定抵抗を使用するとiPv1とiPv2が同一とならず、対称性が崩れます。C.C.の存在がこの回路の肝といえましょう。
第6図に有名なP-K分割型位相反転回路の打消し回路を示しますが、常にiPv1とikv1は同一なので、出力管V3、V4に等しいegkが入力されることとなります。
第6図 P-K分割型位相反転回路の打消し回路



