ウェスタン・エレクトリック(WE)の音を次世代に引き継ぐ意志を込めて、横浜市の大型倉庫スペースに構築した励磁型ホーンシステムで音を探求する和佐高志氏。『管球王国』115号での取材時は、期間を限定したリスニングルーム訪問も誌面で募られた。システムに新しいパワーアンプ、ウエスギU・BROS333OTLが加わったと聞き、出力管と回路構成が異なるウエスギ・アンプ2機種の聴き比べをお願いした。

──音源によってアンプの魅力の捉え方も変わってくるでしょうか。

和佐 音源の魅力を100%引き出すことを目指すのがオーディオの愉しみだとすると、今の私の環境では333OTLの方がそれに近付けそうという感覚です。でも、それはこの場所と音量で16Aホーン・システムを鳴らすからで、普通の住宅環境、異なるスピーカーではアンプの選択が変わって当然ですよね。330AHはひじょうにきれいな音を聴かせる、実に能力の高いアンプだと思います。

 一方で、スーパーカー的な333OTLをここで使うと、少し次元が変わる世界が見えてくるということですね。密度の濃さや粒立ちのよさ。音が隙間なくグッと迫る感じや一体感の大きさ。私が求めたいのはそういう方向性なんです。例えば、ヴォーカル主体の音源も、周りの音があってそれに乗った声を聴いていますから、333OTLで聴く方がしっかりと音に包まれる感じが得られるかなというところです。

──和佐さんはWEの音をリスペクトして理想の音を追求されていると思いますが、送り出し機器の選択も含めて、求める音の方向性はヴィンテージ志向ということではいらっしゃらないですね。

和佐 私の中にはヴィンテージ趣味というのはなく、音源をベストな音で再生するための方法、そのための最善の機器を探すということだけなんです。使うスピーカーはこれまでに変遷がありましたが、WEの励磁型システムが求めているものに近い音を出してくれるということです。

 16Aホーン・システムは設置の仕方も含めて、鳴らし方の選択肢はまだいろいろあると思っています。今日はNASの格納音源をWiFiで再生しましたが、アナログ再生でも発見がありますし、プリアンプの支配力の大きさもポイントです。送り出しは、今日も使ったリンDSMからパワーアンプに信号を送る手法に信頼を置いていますが、ヴィンテージだから、最新機器だからということではなく、手に入る機材でもっともよい音を出す努力を続けるということですね。

──ヴィンテージ機と現代システムをフラットな視点で捉えられ、目指す音のイメージも明確でいらっしゃる和佐さんの考えはとても参考になります。今日は本当にありがとうございました。

送り出し機器のラック。中央のGIP製セレクターはRCAアンバランスおよびXLRバランスの複数の入力と出力が切り替えられ、複数システムを同時に鳴らすこともできる。励磁・ホーン型システムにリン360を追加して鳴らすこともあり、オーケストラ音源などでは独特の方位感のある興味深い再生音も得られるという。試聴はリンKlimax DSMによるデジタルファイル再生を軸に行なわれた。右上のリンKlimax LP12はベッドロックプリンスへのアップグレードで音質が劇的に向上したという。この日はクラッシュ「ロンドン・コーリング」45回転LPも聴かせていただいた。

主な試聴曲
「ショパン:ピアノ協奏曲第1番」
クリスティアン・ツィメルマン(pf、指揮)、ポーランド祝祭管弦楽団
「チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲」
神尾真由子(vn)、トーマス・ザンデルリンク指揮ハレ管弦楽団
「So What」 Miles Davis
「Cantate Domino」 Oscars Motettkör, Torsten Nilsson
「bad guy」 Billie Eilish
「Thriller」 Michael Jackson
「ティコ」 押尾コ−タロー
「MIO」 あいみょん

上のJBLレンジャーパラゴンと下のジュークボックスは『管球王国』115号取材時の写真。和佐氏は7インチEPの蒐集にも力を入れられている。ジュークボックス両サイドのJBL4425は和佐氏が学生時代に本格的なスピーカーとして初めて入手されたもの。

『管球王国』118号(2025年 AUTUMN)より

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