300Bプッシュプルと6C33C-B OTL。16A+555が軸の中高域を2種のアンプで鳴らす。得られる音楽の愉悦はいかに変わるか
和佐高志氏
──和佐さんには『管球王国』115号(2025年1月)で初めてご登場いただき、ウェスタン・エレクトリック(WE)の流れを汲むオールホーン・励磁型システムの音を聴かせていただきました。
和佐 雑誌発売後に多くの方にリスニングルームを訪ねていただき、上杉研究所の藤原伸夫社長にもご来訪いただけました。ウエスギが日本の真空管アンプのパイオニア的なブランドだということは知っていましたから嬉しかったですね。そのときは私のシステムを聴いていただき、ぜひ改めてウエスギ・アンプをお持ちいただけないかご相談したんです。
そして、後日にウエスギU・BROS330AHをご持参いただけました。出力管300Bを交流点火するプッシュプル・モノーラルパワーアンプですね。出力管は最新のウェスタン・エレクトリック(WE)300Bでした。
──和佐さんはWEの音の再現につながるシステムとしては3系統のスピーカーをお使いです。
和佐 そのときに330AHで音を聴いたのは、3系統のうち中央に配置したシステムでした。復刻16AホーンにGIPラボラトリー製555ドライバー×2基をマウントしてGIP597Aトゥイーターを追加し、GIP4165ウーファー×4基を3Dシステム的に加えた構成です。GIP4165ウーファーはGIP製6550プッシュプル・モノーラルパワーアンプで駆動しており、GIP555とGIP597Aを330AHで鳴らしたんですが、ひじょうに音の印象がよかったんです。

和佐氏のリスニングルーム。3つの大型・励磁型ホーンシステムが構築される。中央にセットされた復刻16AホーンとGIP555×2基/chを軸としたシステムの中高域アンプとしてウエスギ・パワーアンプ2機種を組み合わせて試聴した。写真は300Bプッシュプル・モノーラルのウエスギU・BROS330AHを結線した状態。その後方にはシルバトーン製とGIPラボラトリー製のアンプが見える。16A+555システムは中央のボックス型エンクロージュアに収めたGIP4165ウーファー×4基を3Dシステム的に追加した構成で、GIP4165ウーファーはGIP製6550プッシュプル・モノーラルパワーアンプで駆動される。手前に見える半導体型パワーアンプのリンKlimax Solo 800は、写真には写っていないJBLパラゴンを主に鳴らしている。
──前回のご訪問時からシステムにはいろいろと手を入れてこられたんでしょうか。
和佐 左右外側に配置した「ミラフォニック・サウンドシステム」の再現システムでホーン+ドライバーをWE製のオリジナル24A+594Aに変更したのが、大きな変更点です。WE24A+594Aはヴィンテージ・オーディオ店エイフルを営んでおられた若林鋼二さんに譲っていただいたもので、私にとって現在のシステムを構築する原点となったユニットです。そこを出発点にGIPラボラトリー製ユニットでシステムを拡張し、送り出し機器にはリンのアナログプレーヤーLP12やネットワーク再生システムDSMを整えてきたわけです。
ミラフォニック・システムは、低音の表現など、ひじょうに納得のいく鳴り方をしています。3系統のうち、もっともコンパクトなのが手前に設置したGIP Monitor1で、GIP-KL220ホーン+GIP-D5016ドライバー、15インチ口径GIP815ウーファーによる2ウェイですが、これもバランスのいい音が聴けています。
写真はLch側。16Aホーンは各chに2基のGIP555ドライバーが組み合わされている。トゥイーターはGIP597A。奥が「ミラフォニック・サウンドシステム」を再現するシステムで、ホーン+ドライバーはWEオリジナルの24A+594Aが使われている。
──16Aホーン・システムでは、鳴らし方を変えたいイメージがおありだったんですか。
和佐 どのシステムでも幅広い音源を聴きますが、16Aホーン・システムは現代の映画の低音などを再生しようとすると鳴り方に限界は伴います。低音が力を伴ってバランスよく出てくるという意味では、46㎝口径のGIP4181Aウーファー2基とWE24A+594Aによる2ウェイのミラフォニック・システムに分があります。現代的な低音の出方という点ではGIP Monitor1の内側にセッティングしたリン360の音も実に優秀ですが、こういう広いスペースで浴びるように音を鳴らそうとすると、大型ホーンシステムの魅力は大きいんです。
16Aホーン・システムのGIP4165ウーファーは、ラムサ製デジタルマルチプロセッサーで低域をディレイさせて鳴らしています。本来はもっと天井高のある環境で16Aホーンの位置も調整したいですし、デジタルプロセッサーも外せれば外したい。調整でさらに本領を発揮させられるイメージがあります。そんなこともあって、330AHを中高域アンプとして試してみたわけです。
──最終的には6C33C-BプッシュプルOTL機であるウエスギU・BROS333OTLを導入されたわけですね。
和佐 330AHはしばらく聴き込ませていただいたんですが、同時に、115号の表紙になっていた333OTLは意匠も印象的で、やはりぜひ聴いてみたいと思いました。出力トランスを搭載しない構成で、藤原社長からは「突き詰めた設計の、フェラーリ的なアンプ」と聞き、そんなところも興味を引きました。実際に333OTLをお借りして16Aホーン・システムの中高域を鳴らすと、気持ちよく聴ける楽曲、音楽ジャンルの幅がさらに広がりそうな感触で、これは愉しみだなと、システムに組み込んでみることにしたんです。
真空管OTLアンプには難しさがあるとも聞きましたが、藤原社長に尋ねると保護回路が厳重に構築されて安心してロングライフに使えるというご説明で、自分なりに「セミオートマチックで扱いやすくなったフェラーリのようなアンプ」と捉えました。出力管プレートのアンバランス電流調整機能があったり、目配りしながら使う必要もあるかと思いましたが、それは真空管を正しい状態で使える仕様ということですよね。
ボンネットのチムニー機構など熱対策がされていますが、確かに出力管の発熱はありますし、十分に性能を発揮させるために30分ほどプレヒートした方がいいということで、その辺りは「突き詰めた設計」を感じますが、電源投入後しばらくは他のシステムを鳴らして待っているのも愉しみになるんですよ。



