画像1: BenQの4KスマートプロジェクターTK705STiは、さりげなく本格志向の映像が得られる、魔法の小箱である<TK705i/TK705STi徹底研究 その4>
画像2: BenQの4KスマートプロジェクターTK705STiは、さりげなく本格志向の映像が得られる、魔法の小箱である<TK705i/TK705STi徹底研究 その4>

現代的な意匠とスマートな機能を併せ持ったネットワーク時代の新発想プロジェクターBenQ TK705i/TK705STi

 BenQ(ベンキュー)のDLPプロジェクターというと、初期の超小型の可搬性に優れたモデルが印象に残っている。ただし画質志向はさほど感じられず、手軽さと低価格で日本という難しい市場に参入してきた印象がある。とはいえ、デスクトップ型としても小型軽量の外形から鮮度の高い映像が投映される仕掛けは、特に量販店のデモにて結構なインパクトがあり、新時代を感じさせたのは大きな功績であった。

 それ以降、次第に本格的なプロジェクター製品を展開しはじめたのだが、今回の「4Kスマートホームプロジェクター」には驚いた。

 いかにも現代的なキュービック系の外形であり、筐体はプラスチックだが銀色で柔らかなメタリックを訴求している。これはネットワーク時代におけるスマートな映像表示装置の潮流を意識したのだろう。

 今回の視聴では、映像機器からの有線接続を使わず、無線LAN経由で出画を得る方法で行なった。しかもすでに備わっているGoogle TVのスマートOSを使って、配信動画を出画して映像の品位を確認することにした。つまり本体と外部を結ぶラインは電源ラインのみというシンプルな構成だ。

画像: TK705iとTK705STiは、Google TV OSとサウンドシステムを搭載した、いわゆるスマートプロジェクター。NetflixやDisney+、Prime Video、Apple TV、YouTubeなどのネット動画アプリが本体だけで楽しめる

TK705iとTK705STiは、Google TV OSとサウンドシステムを搭載した、いわゆるスマートプロジェクター。NetflixやDisney+、Prime Video、Apple TV、YouTubeなどのネット動画アプリが本体だけで楽しめる

固定短焦点TK705STiと、1.3倍ズームレンズ搭載の標準焦点仕様TK705iの2機種を視聴

 視聴したのは投映レンズが固定短焦点のTK705STi、1.3倍ズームレンズ搭載のTK705iの2機種だ。いずれもLEDの4原色構成、つまりR/G/G/Bという構成で光出力3,000ANSIルーメンを達成している。

 それで100インチ大画面は十分に鑑賞できる水準であり、今回はゲイン1.25のキクチ製「Dressty 4K G2」の120インチスクリーンに投写した。これは明晰な輝度表現や精妙な階調表現、そして色再現性に秀でた格別な高品位仕様で知られている。視聴の多くの時間は固定短焦点のTK705STiを使用。

 自動台形補正や自動焦点調整は実に素早くよく効く。手動の方が精密な調整を行なえるのでは、という期待は持つ必要がないほどだ。ただし台形補正については画質に影響するので、あまりズレた設置法には注意したい。

 その画質だが、明るさ十分にして補正感の少ない正攻法の映像品位がスポーツ番組で難なく得られた。画質モードとしては「スタンダード」が良好。輪郭がわずかに強調されたり、コントラストが付きすぎたりする傾向は画質調整にて容易に整えられる。

 そしてちょっと驚いたのが明室での鑑賞だ。無理にギンギラに輝度や色温度を上げまくらなくても、コントラストを上げ、それに合わせて彩度を少し上げるだけで結構な見栄えになるのだ。無理に青白い色温度にする必要はない。映像の彫りを深くし、色の純度感を演出する能力が高いスクリーンとの組合せということもあるけれど、DLPプロジェクターらしい安定したコントラストに加えて、必要十分に色成分を含んだLED光源の演出力も加味されているのだろう。そもそも本機は最暗部から階調性がよく明示されてけっこう緻密なトーンが得られるのが魅力なのだ。

画像: TK705i、TK705STiの両モデルは、投写レンズ関係以外の仕様は同一。光源はLEDで、3,000ANSIルーメンの高輝度を実現している

TK705i、TK705STiの両モデルは、投写レンズ関係以外の仕様は同一。光源はLEDで、3,000ANSIルーメンの高輝度を実現している

画像: 3,000ANSIルーメンの高輝度を活かして、明所環境でのスポーツ観戦も魅力だ。映像モードにも「スポーツ」という設定がある

3,000ANSIルーメンの高輝度を活かして、明所環境でのスポーツ観戦も魅力だ。映像モードにも「スポーツ」という設定がある

適正サイズも画質調整の要素のひとつ。90インチサイズで観るNetflix『クイーンズ・ギャンビット』と、Disney+『わたしを離さないで』

 というわけで、画質チェックによく起用するドラマ系のNetflix『クイーンズ・ギャンビット』をじっくり視聴する。映像フォーマットは4K解像度のHDR10+である。主人公が第2話のドラッグストアに買い物に行く場面。

 これはちょっと軽めというか、浮いた感じがつきまとい、かといって映像メニュー設定内の「明るさ」を沈める(マイナス方向へパラメーターを下げる)と暗くなり、いっそう生気が乏しくなる。案外難しいのだけれど解決法はある。つまり、120インチサイズのスクリーンに投映して十分明るい大画面ではあったけれど、それが映像表現のゆとりをなくしているようなのだ。

 そこで画面サイズを90インチ程度に抑えてみた次第。これはいい! 雨上がりの曇天に薄日が差し込む午後。ドラッグストア内の化粧ビンの陳列が実に品のいい色とりどりになっているのだ。無数の化粧ビンに宿った日の光が希望の象徴、人生の転機の誘いのように薫っているのだ。

Netflix『クイーンズ・ギャンビット』 90インチ相当の画面で投写

90インチ程度の投写サイズで観たNetflix『クイーンズ・ギャンビット』は、「HDR10+」モードをベースに「明るさ」「コントラスト」「彩度」をアジャストした

画像4: BenQの4KスマートプロジェクターTK705STiは、さりげなく本格志向の映像が得られる、魔法の小箱である<TK705i/TK705STi徹底研究 その4>

Netflixリミテッドシリーズ『クイーンズ・ギャンビットー』Netflixにて独占配信中
●リミテッドシリーズ全9話●2023年アメリカ●出演:アニャ・テイラー=ジョイ、ビル・キャンプ、マリエル・ヘラー、トーマス・サングスター ●原作:ウォルター・テヴィス

 というわけで、本機は小型軽量にして公称3,000ANSIルーメンという十全の光出力の持ち主なのだけれど、広い輝度レンジにわたって精妙な階調や色模様を展開する映像となると、このように画面を適正サイズに縮小するやり方が有効ということもある。もうひとつの対応策は、スクリーンの反射ゲインが高いものを用意することだ。ただし明るいスクリーンと画質の関係は微妙なのでじっくり選びたい。

 Disney+で配信されているカズオ・イシグロ原作の映画『わたしを離さないで』は、2K+SDR方式の映像だが、90インチで冴える映像だった。冒頭付近、少女二人が夢物語をささやき合うのだが、金髪よりもかぐわしい栗毛色の髪の柔らかなゆらぎがよく解像される。微妙な光沢を伴なう色はなかなか味わい尽くせない品位をふりまいている。

 そして食堂場面のニスが擦れて木質の匂いがしそうなテーブル、美術室の頭上からの光に彫りを深くする編み上げのセーター、淡彩色の照り映えなど、実に見ごたえがある。画質調整といっても「映画」を選び、コントラストと彩度を少し合わせこむ程度で結構な高品位が得られるのだからうれしい。4K変換もお任せで大丈夫。

Disney+『わたしを離さないで』 90インチ相当の画面で投写

画像5: BenQの4KスマートプロジェクターTK705STiは、さりげなく本格志向の映像が得られる、魔法の小箱である<TK705i/TK705STi徹底研究 その4>

『わたしを離さないで』ディズニープラスで独占配信中
© 2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

『わたしを離さないで』(2010年イギリス)
●監督:マーク・ロマネク●脚本:アレックス・ガーランド●原作:カズオ・イシグロ●出演:キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイ

2K&SDR映像の『わたしを離さないで』は、「Auto Cinema」(自動シネマ)モードをベースに軽くアジャストする程度で良好な画質が得られた

和の光彩が絶品だったNetflixの和製ドラマ『舞妓さんちのまかないさん』

 他に現代的なCG合成映像が頻出する派手なSF作品やモノクロ作品なども見ごたえがあったのだが、驚愕したのは、是枝裕和の手による和製ドラマ『舞妓さんちのまかないさん』(Netflix)だった(4K映像のHDR10+フォーマットでの配信)。

 その第5話後半を画質チェックによく使うのだが、舞妓さんが集まる屋形の内部や花街の周辺が和のテイスト満載で毎度見とれてしまうほど。自宅の配信映像でそうした境地の画質に仕立てるのにずいぶん手間をかけたのだけれど、ここではあっさりと、ほとんど無調整で微細な光彩や質感、家具調度から舞妓さんの造形感、川沿いの水分を含んだ空気感など見て取れるのだ。

 そもそもDLP方式は強靭なコントラスト表現が得意な反面、滑らかな階調情報や質感が得にくい欠点があっただろう。それが本機では安定した黒の黒らしさの上に、微妙な陰影や濃淡が描写され、衣装の細密な模様の綾や染色調が実に鮮やかに浮きだすのは奇跡を見るようだ。

Netflix『舞妓さんちのまかないさん』チェック

画像8: BenQの4KスマートプロジェクターTK705STiは、さりげなく本格志向の映像が得られる、魔法の小箱である<TK705i/TK705STi徹底研究 その4>

Netflixシリーズ『舞妓さんちのまかないさん』独占配信中
●シーズン1全9話●2023年日本●監督・総合演出・脚本:是枝裕和●原作:小山愛子●出演:森七菜、出口夏希、蒔田彩珠、城桧吏、福地桃子、若柳琴子、南琴奈、リリー・フランキー、他

本文には触れられていないが、そのほか、Netflix『リプリー』やPrime Video『スパイダーノワール』なども確認している

画像9: BenQの4KスマートプロジェクターTK705STiは、さりげなく本格志向の映像が得られる、魔法の小箱である<TK705i/TK705STi徹底研究 その4>

Netflixリミテッドシリーズ『リプリー』独占配信中
●リミテッドシリーズ全8話●2024年アメリカ●監督・製作総指揮・脚本:スティーヴン・ザイリアン ●原作:パトリシア・ハイスミス●出演:アンドリュー・スコット、ダコタ・ファニング、ジョニー・フリン、エリオット・サムナー、他

 階調性と色の情報密度に秀でているだけでもお見事だが、色の時分割表現をする単板DMDにつきもののカラーブレーキングノイズ(通称、色割れノイズ)もほとんど感じさせないのだ。これでちょっと華奢な印象がある脚部やそれを受ける土台に十分な振動対策をしたらさぞかし克明な映像になることだろう。

 最後に、ズームレンズ+通常焦点仕様のTK705iも試したが、これまた意外なことに、こちらの方が緻密な質感や遠近構図の展望など優位を感じることしばしであった。ズームレンズによる画質劣化については、フィルム映写機時代からさんざん経験してきたのだが、これはちょっと興味をそそられる事態だ。

 さりげなく本格志向の映像が得られる魔法の小箱を歓迎する。

(撮影:後藤敦子)

4K DLPプロジェクター:TK705STi ¥249,000 税込(短焦点モデル)

●型式:1チップDLPプロジェクター
●投写デバイス:0.47インチDMD
●光源:4LED
●スクリーン上の解像度:水平3,840✕垂直2,160画素
●輝度:3,000 ANSIルーメン
●色域:98%(Rec709カバー率)
●コントラスト比:600,000:1(FOFO値)
●投写比:0.8
●投写距離:100インチ=1.8m、120インチ=2.1m、150インチ=2.7m
●レンズ仕様:F=1.8、f=8.498
●内蔵スピーカー:8W✕2
●接続端子:HDMI入力2系統(2.1、HDCP2.2対応、1系統はHDMI eARC対応)、USB Type A1系統、USB Type C 1系統、アナログ音声出力1系統(3.5mmステレオミニ)、12Vトリガー端子1系統
●ノイズレベル:24dB(Ecoモード)、26dB(標準モード)
●消費電力:250W(標準)、0.5W未満(スタンバイ時)、2W未満(ネットワークスタンバイ時)
●オプション:天吊金具CMP-80(¥19,800税込)あり
●内蔵OS:Google TV(Android 11)
●Bluetooth対応:5.2対応
●Wi-Fi対応:802.11a/b/g/n/ac/ax(2.4GHz/5GHz対応)
●寸法/質量:W229.2×H168.2✕D249.7mm/3.8kg
●ラインナップ:通常焦点+光学ズーム対応モデルTK705i(¥229,000税込)あり

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