

映像機器、とりわけプロジェクターを使う場合は、機器の潜在能力をフルに引き出し、コンテンツを最高レベルで楽しむためには、映像イコライジングが絶対に必要だ
BenQの4Kスマートプロジェクター、TK705STiを徹底的に使いこなす。DLPプロジェクターでのそれは、コンテンツに合わせた映像イコライジングをいかに効果的に行なうかに尽きる。簡易的にはコンテンツの種類に合わせたメーカーが自ら設定したプリセット・イコライジングパターンがあるが、それは、あくまでも対象とするコンテンツの種類に平均値で対処するものであり、個々のコンテンツを最高レベルで楽しむためには、個々に対応したカスタムイコライジングが絶対に必要だ。
一般的に直視型やプロジェクターでも映像イコライジングは必要だが、特にDLPプロジェクターで必須になる理由は、原理的にネイティブコントラスト(同一画面の黒部と白部の割合)に課題があるからだ。映像イコライジングにて黒レベル、白レベル、そして階調性を同時に調整することで、デフォルトでの再生画質に比して、格段のコンテンツ・オリエンテッドな映像が得られる可能性が高い。それを本プロジェクターで試してみようというのが今回の趣旨だ。
TK705STiの基本性能を、まずはテストディスク「QT-4000」で確認する
本機は、「ブライト」「スタンダード」「自動シネマ」「RPG」「HDRユーザー」「HDR10+」「HLG」……など、合計15ものプリセットパターンを持つ。ここから「スタンダード」を選び、各項目はデフォルト値のままで株式会社キュー・テック(現、株式会社クープ)が2015年に製作した業務用4K高画質主観評価標準動画像集『Ultra Hi-Definition Reference Software for Professional QT-4000series』(編註:業務用で一般用には市販されていない)ーー私も製作に協力した4K映像のリファレンス作品集だーーをUHDブルーレイに収めたディスクで再生する。
編集部註:ディスク再生機器は、パナソニックの4KレコーダーDMR-ZR1、スクリーンはキクチのDressty 4K G2(120インチ16:9、ゲインは1.25)を用いた。以下同
画質チェック①キュー・テック製 画質評価映像集『QT-4000』
カラーバー、果物、夜景、時計、金管楽器……などの様々なテスト映像を投写した。透明感があり、すっきりとクリアーな映像だ、というのが、私の第一印象だ。特筆されるのは、デフォルト値でも不自然な強調感が少ないこと。私は、数多くのコンパクトサイズを特徴とするDLPプロジェクターを観てきたが、その多くがコントラスト、輝度、彩度、シャープネスに見栄え重視の人工的なブースト感が強い。
ところが、目の前の本機TK705STiはバランスが良好で、不自然な強調感も少ない。映像イコライジングなしのデフォルト状態でのチェックなので、黒浮きは認められるが、これは調整にて対応可能だろう。このDLPプロジェクター離れしたバランスの良い画質は、長年に渡ってホーム用のDLPプロジェクターを作り続けてきたメーカーの矜持と評価したい。
定番のUHDブルーレイ『宮古島 〜癒しのビーチ〜』のワイドレンジ再生を目指す
画質チェック②UHDブルーレイ『宮古島 ~癒しのビーチ~』 〜全暗環境で確認〜
では定番のコンテンツを使って、カスタムな映像イコライジングを試してみよう(記述した各パラメーターの項目は、一部を除いて『0』から『100』の調整設定となっている)。
定番のUHDブルーレイ『宮古島 ~癒しのビーチ~』のチャプター4。東平安名崎灯台を遠くに望む情景。映像モードは「HDR10」を選択した。まず全暗下で観る。映像イコライジングのポイントは、「輝度」関連項目だ。まず輝度部分で適切なコントラストと明るさを得た後に、彩度をそれにアジャストする。色相は、原則的にはデフォルトのままでよい。
実際に映像を観ると「HDR10」モードのデフォルト設定である「明るさ」『50』、「コントラスト」『50』では、黒浮きがはなはだしい。そこで、まず直感的に「明るさ」を下げて、黒レベルを落とし、さらに「コントラスト」を上げる方向で調整していく。ところで、映像機器では、メーカーによって、「コントラスト」という名前の項目でのどのようなパラメーターを調整するのかの考え方が違っており、「コントラスト」を上げると黒レベルが持ち上げるメーカーもあるが、BenQの製品は「コントラスト」を上げると白レベルが上がり、黒レベルが下がる。つまり映像の表現レンジがワイドになる方向で変化する。
だから、本機では、黒を沈めるために「コントラスト」を上げるのも良い。でも上げすぎると、白レベルが持ち上がり過ぎて、階調が飛んでしまうので、バランスを考えることが肝要だ。画像を観ながら調整していった結果、「明るさ」を『29』に落とし、「コントラスト」を『60』に上げることにした。
しかし、しばらく観ていくと、黒は締まるが、階調をさらに引き出したほうがよさそうだと気付いた。そこで、「明るさ」と「コントラスト」を相互的にそれぞれ微妙に動かし、ベストポイントを探る。「明るさ」を上げると、黒の階調は出てくるが、今度は黒浮き方向になる。そこで、それに合わせて「コントラスト」を上げ下げし、様子をみる。また、その逆も試す。様々に試行錯誤した結果、「明るさ」は(『29』ではなく、先程調整した値そのままの)『43』をキープし、「コントラスト」を黒側の階調を出す方向で『60』から『53』に下げた。
結果として実にクリアーで、ヌケが良く、透明感に溢れた、まさに私がイメージしている『宮古島』らしい映像になった。南国にふさわしい、ワイドレンジでハイバランス、そして伸びやかな画調が得られたのである。
東平安名崎灯台を遠くに臨む光景。蒼い海、白い波、遠方に浮かぶ白い雲……という、チャプター4を構成する映像要素が、生命感を持って屹立した。この数値で分かるように、本プロジェクターは、アジャストにかなり敏感で、しかもカーソル移動が速いので、映像イコライジング操作が快適だったことも指摘しておこう。
『宮古島 ~癒しのビーチ~』の映像イコライジング(全暗環境)
映像モード HDR10
明るさ 50(デフォルト値) → 43
コントラスト 50(デフォルト値) → 53
(それ以外はデフォルト値)

UHDブルーレイ『宮古島 〜癒しのビーチ〜』(ビコムVUB-5702) ¥12,100 税込
画質チェック③UHDブルーレイ『宮古島 ~癒しのビーチ~』 〜100ルクス照度環境で確認〜
では明るい環境ではどうか。もともと高輝度なDLPプロジェクターだから、明所でも鑑賞可能だが、映像イコライジングでどれほど向上するか。HiVi視聴室は、調光が可能なので今回は約100ルクスにセット。スクリーンには照明が直接は当たらず、手前の床は明るい状態だ。
さきほどの暗室向けのイコライジングの「明るさ」『43』、「コントラスト」『53』で、ほぼ満足する画質だと観た。スクリーンに入光していないのが効いたのだろう。
とはいえ、やはり環境光の影響は少しはある。それが、少しの黒浮きだ。さきほどの暗室では、沈みや階調が十分な黒が得られていたが、さすがに明室環境では黒はそれなりに、浮く。そこで、「明るさ」を『43』から『40』にわずかに下げると、明室でもバランスの良いコントラストが得られた。
この映像イコライジング調整を分析すると、もともとのプロジェクター自体の高輝度さに加え、絵柄のAPL(画面の平均輝度)が高いので、コンテンツ自体がハイコントラストであることも相まって、明所環境でも良好なパフォーマンスが得られたのだ。
『宮古島 ~癒しのビーチ~』の映像イコライジング(100ルクスの照度環境)
映像モード HDR10
明るさ 50(デフォルト値) → 40
コントラスト 50(デフォルト値) 50 → 53
(それ以外はデフォルト値)
UHDブルーレイ『ラ・ラ・ランド』の鮮やかなマジックアワーの名場面から大きな感動を引き出す映像調整
画質チェック④UHDブルーレイ『ラ・ラ・ランド』 〜全暗環境で確認〜
では、映画コンテンツはどうか。私が愛してやまないUHDブルーレイ『ラ・ラ・ランド』のチャプター5。ロサンゼルス郊外の丘の上の、マジックアワー(日没後の夕景)シーン。手前の灰色の道路、ロサンゼルスの山並みの暗部、空がオレンジから藍色に変わる……という映像情報をどうイコライジングで再現させるか。映像モードはおなじくHDR10。
まず暗所で投写する。イコライジングはさきほどの「明るさ」『40』、「コントラスト」『53』のまま、最初に変更したのが、詳細設定にある「ガンマ」のパラメーターだ。『暗』、『中』、『明』が設定でき、『宮古島』はデフォルトの『中』で観ていたが、『ラ・ラ・ランド』では『明』を選んだ。白側を伸ばすことで、光のレンジを拡大するのだ。
さらに黒側の階調を出すために、「明るさ」を『49』に上げ、「コントラスト」も『49』まで落とした。これで黒レベルと階調のバランスは良くなったが、もう少し階調が欲しいので、「明るさ」を3ポイントあげ、『52』にした。すると階調は出る方向だが、黒も当然、少し浮いた。
そこで、「コントラスト」を5ポイント上げて、『54』に。これにて、黒側のバランスは良くなったが、白も同時に持ち上がるので、グレインノイズが目立ち、輪郭部分が少し強調気味になった。
ここで「シャープネス」を調整。『0』から8段階で設定でき、デフォルト値は『8』だ。それを『2』まで落とすと、フィルム撮影らしいしっとりさと清々しさが醸し出されるようになった。ここはワイドレンジのガンマを基本に、黒の沈みと階調をバランスさせ、さらに細部の強調感を緩めるという映像イコライジングが正解であった。
『ラ・ラ・ランド』の映像イコライジング(全暗環境)
映像モード HDR10
明るさ 50(デフォルト値) → 52
コントラスト 50(デフォルト値) → 54
シャープネス 8(デフォルト値)→ 2
ガンマ 中(デフォルト値)→明
(それ以外はデフォルト値)

UHDブルーレイ『ラ・ラ・ランド 4K ULTRA HD+本編Blu-ray&特典Blu-ray』(ポニーキャニオン/ギャガ PCZE-57001)¥8,580 税込
画質チェック④UHDブルーレイ『ラ・ラ・ランド』 〜100ルクス照度環境で確認〜
ここまでは暗所での話。次に明所ということになるが、明るい環境で映画を映すのは、イコライジング的に難しい。そもそも映画とは劇場の暗所でスクリーンに映すメディアだ。なので、明所で映画投写というのはそもそもナンセンスかもしれないが、頑張ってみよう。
「HDR10」映像モードのデフォルトからの出発だ。まずは「コントラスト」だ。明所なので白側の伸びが必要。そこで、思い切って『80』まで上げた。それに従って黒も沈むが、白も当然、華麗になる。
ところが、ここまで上げると白のエネルギーが強すぎ、白飛びが発生する。それを避けるために「コントラスト」を『66』まで下げる。さらにこのレンジ感とバランスを取るため「明るさ」を再度、アジャスト。ここでもかなり下げたり、少し下げたり……と微調整し、『48』でジャストフィットした。
『ラ・ラ・ランド』の映像イコライジング(100ルクス照度環境)
映像モード HDR10
明るさ 50(デフォルト値) → 48
コントラスト 50(デフォルト値) → 66
彩度 50(デフォルト値)→ 48
(それ以外はデフォルト値)

「明るさ」は『50』→『48』にわずかに落としたうえで、「コントラスト」を『50』→『66』に、「彩度」は『50』→『48』に調整した
ところが、今度は黒が沈んできたので、色に影響する。つまり濃度が上がる。そこで、「彩度」をデフォルト値の『50』から僅かに下げ『48』に。これにて明所でも適切なコントラストと彩度感が得られた。
夕景の青い空気感、エマ・ストーンのワンピースの黄色、ショルダーバックの赤、頬の細やかな立体感など、『ラ・ラ・ランド』の美質が、明るい環境でもスクリーンに見事に再現されたではないか。
結論 再生環境とコンテンツのマッチングを図る「映像イコライジング」は必須。TK705STiの調整に対する対応力も見事だった
直視型ディスプレイ、プロジェクターを問わず映像イコライジングは、再生環境並びにコンテンツとのマッチングを図る映像武器として必須のものだが、特に、プロジェクターでは、絶対必須であることが、本プロジェクターの取材を通して再度、確認できた。TK705STiの対応性は見事であった。
(撮影:後藤敦子)
4K DLPプロジェクター:TK705STi ¥249,000 税込(短焦点モデル)
●型式:1チップDLPプロジェクター
●投写デバイス:0.47インチDMD
●光源:4LED
●スクリーン上の解像度:水平3,840✕垂直2,160画素
●輝度:3,000 ANSIルーメン
●色域:98%(Rec709カバー率)
●コントラスト比:600,000:1(FOFO値)
●投写比:0.8
●投写距離:100インチ=1.8m、120インチ=2.1m、150インチ=2.7m
●レンズ仕様:F=1.8、f=8.498
●内蔵スピーカー:8W✕2
●接続端子:HDMI入力2系統(2.1、HDCP2.2対応、1系統はHDMI eARC対応)、USB Type A1系統、USB Type C 1系統、アナログ音声出力1系統(3.5mmステレオミニ)、12Vトリガー端子1系統
●ノイズレベル:24dB(Ecoモード)、26dB(標準モード)
●消費電力:250W(標準)、0.5W未満(スタンバイ時)、2W未満(ネットワークスタンバイ時)
●オプション:天吊金具CMP-80(¥19,800税込)あり
●内蔵OS:Google TV(Android 11)
●Bluetooth対応:5.2対応
●Wi-Fi対応:802.11a/b/g/n/ac/ax(2.4GHz/5GHz対応)
●寸法/質量:W229.2×H168.2✕D249.7mm/3.8kg
●ラインナップ:通常焦点+光学ズーム対応モデルTK705i(¥229,000税込)あり





