
現在発売中のHiVi2026年秋号でお届けした「最新高画質テレビ9機種徹底テスト」。そこでは55インチ有機ELテレビ3機種と75インチ〜98インチのMini-LEDバックライト採用液晶テレビ6機種の一斉テストを実施。最新薄型テレビの、特に映像パフォーマンスについて、画質のプロである麻倉怜士さんと藤原陽祐さんのお二人にリポートしていただいた。その詳細については、誌面をぜひご覧いただきたいが、液晶テレビ6製品の中で、特に印象に残ったモデルがあった。それがRGB Mini-LEDバックライトを搭載するレグザの85インチ液晶テレビ「85ZX1S」だ。というのも、製品発表時とは様変わりといってよいほどの綿密なチューニングが施され、画質面、音質面での圧倒的なグレードアップが図られたからだ。ということで、HiViの特集記事を追補する意味もあり、テスターを務めたお二人にレグザ85ZX1Sのパフォーマンスについて、改めてのリポートを依頼することにした。ぜひご注目いただきたい。(編集部)
麻倉怜士はこう観た! 映像自身が、映画のものがたりを雄弁に語る。基本画質の良さに加えて、「表現」性の豊かさを引き出す絵づくりの技が光る!
テレビが最終的にわれわれに与える映像は、「パネル+回路+絵づくり」の総合的な結果である。レグザ85ZX1Sは、特に絵づくりのテクニックが抜群に優れる。RGB Mini-LEDバックライトを搭載する液晶テレビは、基本的にバックライトのローカルディミングの動作が部分的に「ホワイト発光」になるか「カラー発光(編註:RGB LEDが独立して発光する状態)」になるかという跛行(はこう)の問題を抱えているわけだが、レグザ85ZX1Sの絵づくりは、そうした原理的な課題とは違う地平にて、ストーリーテリングの技が、大いに光った。
そのことが分かったコンテンツがブルーレイ『きみに読む物語』だ。私は本作を15年以上もリファレンス映像作品として見続けているが、「色再現が物語を紡む」という意味では、85ZX1Sでの鑑賞はなかなか得難い体験であった。
本作の基本色は「赤」だ。チャプター11のヒロイン、アリーの全身を着飾る赤が、レグザ85ZX1Sでは、単にコンテンツの映像を映すという意味での「再現」に留まらず、この物語に特化した「表現」領域まで達していると観た。全身の赤衣装からは、本テレビが「赤を通じて、ものがたりを語っている」ことが、痛切に感じられたのである。もちろん、コントラストや黒の階調性は、液晶テレビであることを、一瞬忘れるほどのパフォーマンスであるが、そうした基本画質の良さに加え、表現性の豊かさが大いなる魅力だ。
アリーの赤は、帽子、スーツ、スーツのボタンと、左右4つの革のアクセント、ストッキング、靴、口紅、頬紅、手袋、イヤリング、ハンドバック……と全てに渡るが、レグザ85ZX1Sは、帽子と手袋の暗い赤、ストッキングの濃さ、ハンドバックの臙脂色、スーツの薄い格子模様……という色の彩度、色相のディテイルを見事に描き分けた。婚約者に偽って過去の恋人に逢いに行くアリーの心情をメタファーした「赤」を、細やかにストーリーテリングしていたのである。赤にこだわる彼女の心理まで伺える絵づくりだ。アリーの目力(黒目の中の、タッチライトの輝き!)も決然としている。
レグザ85ZX1Sはそんな敢然としたヒロインの<想い>を見事に絵づくりで表現していた。

85ZX1Sに採用されているRGB Mini-LEDバックライト液晶パネルの構造図。非常に多数のRGB独立LED光源を用いて、高輝度、広色域、高コントラストを追求。レグザご自慢の映像エンジン、そして絵づくり技術の合わせ技で薄型テレビの新時代画質を目指す
藤原陽祐はこう観た! レグザ85ZX1Sは、視聴ポジションにとらわれず、暗室で安心して映画が楽しめる初めての超大型液晶テレビかもしれない
バックライトにRGB Mini-LEDを用いたフラッグシップ液晶テレビとなると、色鮮やかな映像を思い浮かべるかもしれないが、レグザ85ZX1Sはそれを強調するような絵づくりではなく、あくまでもニュートラルな色合い、滑らかなタッチ、階調性を大切にした見せ方に徹している。黒をしっかりと抑えつつ、艶やかで、質感の高い映像を淡々と描き上げていくという印象で、フェイストーンも安定している。
UHDブルーレイ『マリアンヌ』のHDR10映像再生でも色域を特に広げた感じはなく、ニュートラルな表現に徹している。肌の透明感、明暗の変化を描き出し、ローライトでも色調が崩れにくい。コントラスト感は中庸だが、ただシャンデリアの輝き、ガラスのディテイル、あるいは車の反射光と、質感の表現は意欲的で、微小信号を丁寧に拾い上げていく。
米国盤UHDブルーレイで観た『シビル・ウォー アメリカ最後の日』のドルビービジョン再生でも落ち着きのある画質傾向は変わらない(映像モードはドルビービジョンダーク)。一定のコントラスト感を確保しながら、ニュートラルな発色と豊かな発色で、様々なシーンを淡々と描き上げていく。テストでは、液晶テレビにとっては厳しいナイトシーンを中心に確認したが、最暗部まで破綻せず、安定していた。それも単に黒が締まるだけでなく、ローライトの微妙なディテイルを粘り強く再現するため、黒の表現が単調にならない。豊かな階調性、鋭いフォーカス感、見通しの良さと、随所でADSパネルの強みと巧みな絵づくりのノウハウを感じさせてくれる再現性だった。
現在、家庭用の液晶パネルは、大きく、正面コントラストに優れたVA方式(Vertical Alignment)パネルと、視野角による画質の変化が少ないADS(編註:ADSは、IPS[In-Plane Switching]とほぼ同等の構造で特徴も近似している)パネルの2種類に分けられる。様々な視聴シーンが想定される家庭用テレビとしては、後者のパネルときめ細かな部分駆動の組合せで、広視野角と高コントラストを両立するのが理想だろう。
ただこれを実現するには技術的にハードルが極めて高く、大画面液晶テレビとして、画質的に納得できる製品に仕上げるのは簡単ではない。実際、これまでにも各メーカーが挑戦しているが、成功例はないに等しい。ところがADS系のADS Proと呼ばれるパネルを搭載した85ZX1Sは黒がほどよく締まり、1.5H前後(Hは画面の高さ)となる約1.5m前後の近接視聴でも周辺部のコントラスト感、色再現が安定している。しかも、このように近接してにじり寄っての鑑賞のみならず、ADS方式のパネルであるため、斜め位置からの鑑賞でも色が抜けるような、いわゆるカラーシフト現象も少ない。
レグザ85ZX1Sは、視聴ポジションにとらわれず、暗室で安心して映画が楽しめる初めての超大型液晶テレビとなるのかもしれない。

量子ドットシート採用のMini-LEDバックライト採用モデル(図左)と、85ZX1Sで採用されているRGB Mini-LEDバックライト(図右)の動作原理比較。表示している絵柄にもよるが、後者の方式ではRGB独立駆動による、鮮やかで素直な色再現がメリットとされる

RGB Mini-LEDバックライトを用いた高輝度、広色域、高コントラストの3拍子揃った映像美が、85ZX1Sの最大の特徴だが、サウンドシステムも非常に力が入っている。なんと合計22個のスピーカーを搭載し、最大出力140Wのアンプで駆動。 トップスピーカーとサイドスピーカー、さらにセンタースピーカーから生み出される5.1.2チャンネル音響を駆使したサウンドが特徴だ
RGB Mini-LED液晶ディスプレイ:85ZX1S オープン価格(実勢価格132万円前後)

●型式:RGB Mini-LED液晶ディスプレイ
●パネル方式:ADS Pro液晶
●解像度:水平3,840✕垂直2,160画素
●映像エンジン:レグザエンジンZRα
●内蔵チューナー:地上デジタル3系統、BS・110度CSデジタル3系統、BS4Kデジタル2系統
●接続端子:HDMI入力4系統(eARC/ARC対応1系統)、デジタル音声入力1系統(光)、LAN端子1系統、ヘッドホン端子1系統、USB Type A端子2系統(録画用×1、AV周辺機器専用×1)
●内蔵スピーカー(括弧内はアンプ出力):・2ウェイメインスピーカー(30W)×6、2ウェイサイドスピーカー(20W)×4、2ウェイトップスピーカー(20W)×4、センタースピーカー(10W)×2、ウーファー(60W)×6
●ノイズレベル:24dB(Ecoモード)、26dB(標準モード)
●消費電力:553W(標準)、0.3W未満(待機時)、60W(機能動作時)
●画面寸法:W1,872×H1,053mm
●寸法/質量:W1,896×H1,148✕D400mm/58.5kg(以上スタンド付)
●特徴:映像関連/RGB独立エリアコントロール、ワイドアングル液晶パネル、低反射ARコート、3次元カラーリマスター、64色軸リッチカラーイメージコントロール、120Hz倍速(ゲームモード144Hz VRR対応)、HDRオプティマイザー、クラウドAI高画質テクノロジー(ネット動画にも一部対応)、プロユース映像設定機能、クラウドAI高画質連携、ほか。音声関連/レグザイマーシブサウンド360PRO、マルチスピーカークオリティマネージメント、ドルビーアトモス(5.1.2ch対応)、オーディオキャリブレーション、クリア音声、おまかせAIサウンド、マルチバンドイコライザー(20バンド/5バンド)、ラウドネス補正、シンクロドライブ、Bluetooth対応、レグザサウンドプロセスVIR、VIRイコライザー、高遮断クロスオーバーフィルター、ほか。センシング関連/ミリ波レーダー高画質、ミリ波レーダー高音質、ミリ波レーダー省エネ(離席時省エネモード)、スマートちょっとタイム
●シリーズラインナップ:100インチモデル(100ZX1S、実勢価格198万円前後)


