英国の老舗ブランド/ケンブリッジオーディオが新たな輸入元と提携し、久しぶりに日本市場に戻ってきた。1968年創業の同社は、ケンブリッジ大学の卒業生等が集まって製作したアンプが注目され、以降スピーカーやCDプレーヤー等を輩出。1990年代初めにロンドンの起業家が率いるAudio Partnership社がブランドを取得して再編を図ってから今に到る。
同社が初めて日本に紹介されたのは1970年代で、当時は知る人ぞ知る存在だった。1990年代になって前述した経営体制に代わるとともに、国内大手輸入商社と提携。コンパクトなD/Aコンバーター「DacMagic」が評判となり、広く知られるようになる。同社の製品は順次、日本市場に導入される予定とのことだが、ケンブリッジオーディオの製品に一貫して盛り込まれているのは、いたずらに高級路線を追うのでなく、なおかつ奇を衒うこともなく、ライフスタイルに根差したコンベンショナルなスタイル。製品の内容に比して、比較的リーズナブルな価格に抑えられている点にも好感が持てる。
音楽をありのままに素直に描くAXC35 & AXA35の組合せ
今回は複数のモデルをテストする機会を得た。まずはプリメインアンプAXA35とCDプレーヤーAXC35のフルサイズコンポーネントのエントリーグレードと、2機種をラインナップしているスピーカーシステムのうち、よりコンパクトなSX50を組み合わせて聴いてみよう。

CD Player
AXC35
オープン価格(実勢価格8万9,100円前後)
●型式:CDプレーヤー
●接続端子:アナログ音声出力1系統(RCA)、デジタル音声出力1系統(同軸)
●寸法/質量:W430×H75×D305mm/4.3kg

アナログアンバランス音声出力と同軸デジタル出力の2系統のみと非常にシンプルなAXC35の接続端子。電源インレットは、いわゆるメガネ型端子のタイプ。クォリティアップのためにオーディオ用としてリリースされているメガネ型電源ケーブルの換装も高い効果が望めるだろう
Integrated Amplifier
AXA35
オープン価格(実勢価格8万9,100円前後)
●型式:プリメインアンプ
●定格出力:35W+35W(8Ω)
●接続端子:アナログ音声入力6系統(RCA×5[うち1系統MMフォノ]、3.5mmステレオミニ)、Rec出力1系統(RCA)、ヘッドホン出力1系統(6.35mmフォーン)、ほか
●寸法/質量:W430×H83×D340mm/約5.7kg

AXA35プリメインアンプは、音声入力は背面のアナログRCAアンバランス端子と、前面の3.5mmステレオミニ端子のみの装備というシンプルな構成を採る。MM対応のフォノ端子も装備するので、アナログレコードプレーヤーとの連携もスムーズに図れる。USB Type A端子は5V給電ならびにハードウェアのアップデート向けの端子で、デジタル音声ファイルの再生はサポートしていない。スピーカー端子はYラグ、バナナプラグが使用できる
AXA35はAB級で35W×2出力のアンプを内蔵したモデルで、4系統のライン入力のほか、MM対応フォノ入力を備える。前面に備わった3.5mmのAUX入力端子は、スマートフォンやポータブル機器との接続を考えたもの。いわゆる幅430mmのフルサイズモデルだが、高さは83mmと非常にスリムな筐体がポイントだ。
AXC35はCD再生に特化したCDプレーヤー(=SACDは非対応)で、シーラスロジック(旧ウォルフソン・マイクロエレクトロニクス)製DACチップWM8524を搭載している。このチップセットは登場から10年以上が経過しているものの、今もって音質に定評がある。背面端子の装備は、アンバランスのアナログ出力以外は同軸デジタルのみだ。
スピーカーSX50は、ペーパーコーン振動板に特殊なコーティング(トリーテッドと称している)を施した135mm口径ウーファーと25mmシルクドーム型トゥイーターによるブックシェルフ型2ウェイ。バスレフポートは背面に備わっている。
以上の組合せによるサウンドは、周波数レンジを欲張らず、素直な帯域バランスにてまとまった良さがある。つまり、背伸びして音楽が破綻しないのである。それこそがケンブリッジオーディオならではのレーゾンデートル(存在意義)に相違ない。
サマラ・ジョイのヴォーカルは、整った佇まいの音場イメージが好ましい。ヴォーカル音像はすっきりと立ち、質感の柔らかさと瑞々しさがあって温度感もほど良い。4管のアンサンブルの立ち位置の明瞭さやリズムセクションの安定感も感じられる。AXC35がCDの音をありのまま再生しているようで、妙に高域を伸張したり、テクスチャーを必要以上に強調したりせず、ストレートに再現している。
上原ひろみのソニックワンダーの演奏は、ベースラインがもう少し厚みを持って出るということなしなのだが、それはこの後に聴くスピーカーSX60に期待するとして、低域のピッチは克明に再現している。ピアノの打鍵は力強く、ドラムもエネルギッシュ。いずれの音色も鋭いトランジェントを伴なったリアルなものだ。トランペットはエフェクトをかけて浮遊感を醸し出しているのだが、その漂う定位を素直に再現している印象である。
ヒラリー・ハーンの独奏ヴァイオリンによる「ショーソン:詩曲」では、オーケストラの立体的なステレオイメージの手前にハーンのヴァイオリンの音像がくっきりと結ばれる。その旋律が時に激しく、時に柔らかく、実に滑らかで艶やかな響きであった。
AXA35/AXC35とSX50の組合せで得られたパフォーマンスは、ケンブリッジオーディオがその創業当初から推し進めてきた、いうなれば“気張らないオーディオ”を体現したものと思えた。

Speaker System
SX50
オープン価格(実勢価格4万4,000円前後、ペア)
●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:25mmドーム型トゥイーター、135mmコーン型ウーファー
●出力音圧レベル:87dB/2.83V/m
●インピーダンス:8Ω
●寸法/質量:W161×H225×D240mm/3kg
高さ225mmとまさにブックシェルフ(本棚)にも入る小型スピーカーだが、内容は非常に本格的。25mm高域ユニットと135mm低域ユニットの2ウェイ構成の本機は、サイズ、そして価格からは想像ができない優秀なサウンドパフォーマンスを誇る

SX50は背面にポートを配置したリアバスレフ方式を採用。ポートからの背圧が前面に放射されないので、デスクトップなどニアフィールド配置にも最適なモデルだ。スピーカー端子はシングルワイアリング接続専用で、SX60も同様だ
Speaker System
SX60
オープン価格(実勢価格6万8,200円前後、ペア)
●型式:2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
●使用ユニット:25mmドーム型トゥイーター、165mmコーン型ウーファー
●出力音圧レベル:89dB/2.83V/m
●インピーダンス:8Ω
●寸法/質量:W200×H340×D272mm/5kg
SX50と構成は似ているが、ウーファーサイズを165mmに拡大しつつ、エンクロージャーサイズも大きくアップ。小型スピーカーらしい音像定位感の良さを保ちながら、低音再生能力の拡張を果たし、ワイドレンジ化を達成した2ウェイ機。プライスタグが信じられない高性能スピーカーだ
SX60は低音再現性が大きく高まるが穏やかなトーンはSX50と共通の美点
以上のシステムでスピーカーのみSX60に換えてみたらどうだろう。SX50よりも一回りほど大きいエンクロージャーに165mmのトリーテッドペーパーコーン型ウーファーを搭載。トゥイーターは同じ25mm口径のシルクドーム型だが、バスレフポートが前面に備わり、壁際等でも比較的楽に設置できる設計である。
ヒラリー・ハーンを再生すると、ゆったりとした穏やかトーンはSX50と変わらずとも、さすがにエンクロージャーの容量が大きくなったことで低音域の振る舞いに余裕を感じる。重心が低くなり、チェロやコントラバスの実在感が強化された印象だ。それに伴なってオーケストラのエネルギーにも厚みが増し、スケール感がさらに重厚になった。
ハーフサイズ機MXN10 & MXW70はニュアンス豊富な本格の音が魅力
次に試したのが、ハーフサイズにまとめられたコンポーネントMXN10とMXW70である。これらもまた、ケンブリッジオーディオが得意とする「ミニマルデザイン」に根差したコンセプトに基づいた製品といってよい。

Network Player
MXN10
オープン価格(実勢価格8万2,500円前後)
●型式:ネットワークプレーヤー
●接続端子:アナログ音声出力1系統(RCA)、デジタル音声出力2系統(同軸、光)、LAN端子1系統、ほか
●寸法/質量:W215×H52×D191mm/1.2kg

ケンブリッジオーディオは近年、音楽ストリーミング再生技術「StreamMagic」に注力、現代の音楽再生環境にフィットさせた製品を多数リリースしている。MXN10は「StreamMagic」機能内蔵モデルの最小機で、音量調整機能も実装しており、ステレオパワーアンプMXW70との組合せに好適だ
Power Amplifier
MXW70
オープン価格(実勢価格12万5,400円前後)
●型式:ステレオパワーアンプ
●定格出力:70W×2(8Ω)、125W×2(4Ω)、250W(8Ω、モノーラル時)
●接続端子:アナログ音声入力2系統(RCA、XLR)、ほか
●寸法/質量:W215×H57×D215mm/1.65kg

MXW70は、MXN10同様いわゆるハーフサイズコンポーネントながら、オランダHypex製NCOREモジュールのカスタマイズ仕様による強力なアンプ回路を内蔵したステレオパワーアンプ。サイズからは想像できない駆動力の高さが魅力。RCAのほかXLR端子も装備、トリガー入出端子なども備えて多彩な用途に役立つ製品だ
MXN10はネットワークプレーヤー。最大で768kHz/32ビットのPCMと22.5MHzのDSDに対応と、最新スペックを網羅している点が頼もしい。内蔵DACチップはESSテクノロジーのSabre「ES9033Q」というハイスペックタイプだ。また、Qobuzはもちろんのこと、SpotifyやAmazon Music、TIDALといった主要ストリーミングサービスに対応している。本体にディスプレイはないが、日本語表示対応の専用アプリ「StreamMagic」にて快適に操作できる。プリアンプ機能を内蔵しているので、ボリュウム調整も可能だ。
パワーアンプMXW70は、70W×2(8Ω)をギャランティーするHypex NCOREモジュールによるクラスDアンプを内蔵。ブリッジ接続にすれば250W(8Ω)のモノーラルアンプとして増強も可能だ。高調波歪みやクロストーク性能も優秀な設計で、入力端子にアンバランス/バランス双方を装備しているのも嬉しい。
MXN10+MXW70のペアに組み合わせたスピーカーは、引き続きSX60とし、Qobuzのストリーミングを再生した。
サマラ・ジョイは、滑らかで潤いのある声だ。MXN10+MXW70はこんなにコンパクトな組合せなのに、まさに本格の音を聴かせる。各々の心臓部を司る回路の完成度の高さだろうか。4管アンサンブルのニュアンスの豊かさにはMXN10のDAC周辺の充実を、一方のリズムセクションをがっちり聴かせるドライブ力の高さにはMXW70のスピーカー駆動力をそれぞれ感じた。
バイバ・スクリデの独奏で聴くショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲は、ティンパニやコントラバスの重奏など、ローエンドの実体感がとてもしっかりしている。また、ヴァイオリンの悲哀的なメロディが情緒豊かに再現されたことも印象的であった。試聴後に本体を触ってみたがほんのり温かい程度。クーリング性能も万全のようだ。
MXN10はスマートフォンでのコントロールがスムーズに行なえるし、Bluetooth対応という点から考えても、これらの組合せがデスクトップオーディオにも最適であるといってよいだろう。
もちろん大型システムをお使いの方のセカンドシステムとして、あるいはネットワークオーディオ入門セットとしてもおすすめできるクォリティである。MXW70は、サラウンドシステムやマルチアンプ駆動用のパワーアンプとしての使い途もおもしろそうだ。
ケンブリッジオーディオの現行ラインナップ

>本記事の掲載は『HiVi 2026年秋号』







