定額制の音楽ストリーミングサービスQobuzが日本で正式にスタートした2024年は、国内外のネットワークプレーヤーに改めて注目が集まった年でもあった。だが、サブスクリプションを軸に現在のエンタテインメント環境を見渡してみると、音楽だけでなく映像コンテンツも実に魅力的だ。さらに、ドルビーアトモスを始めとするイマーシブオーディオの存在も見逃せなくなってきた。このような様々なソースを楽しみたいとなれば、音楽と映像、サラウンドの3つを高品位に扱えるプレーヤーが欲しくなる。

 今回紹介するZidoo(ジドゥ)「UHD8000」は、そんな要求に応えてくれる一台だ。Android 11を採用したストリーミングプレーヤーである本機は、ハイレゾ音源、各種ストリーミングサービス、ドルビーアトモス、さらには8K映像やDolby Visionを含む多彩な映像ファイルまで扱える。一般的なネットワークオーディオ機器とは少し異なる、メディアプレーヤーとしての能力まで備えているところが、最大の特徴と言っていいだろう。

ミュージックストリーマー:Zidoo UHD8000 ¥363,000(税込)

画像1: 音楽配信、映像コンテンツ、イマーシブオーディオのすべてを一台で楽しめる。ジドゥ「UHD8000」は、独自の存在感を備えた “高品質メディアプレーヤー” だ

●搭載OS:Android 11
●CPU:AmlogicS928X-K ARM Cortex-A76+Cortex-A55(Penta-core)
●GPU:ARM Mali-G57 MC2
●対応ハイレゾフォーマット(2ch):最大 DSD512、PCM 768KHz/32ビット
●接続端子:LAN(10/100/1000Mbps)、HDMI出力✕2(メイン、オーディオ専用)、USB Type-A✕2、USB Type-B、デジタル音声出力✕2(同軸、光)、アナログ音声出力✕2(RCA、XLR)
●ストレージ:8GバイトDDR4+64GバイトeMMC
●寸法/質量:W430✕H80✕D312mm/5.9kg

画像: 付属リモコンはコンパクトで操作感もいい。ただし、基本的には画面を見ながら操作するタイプなので、音楽ファイルを聴く場合はアプリを使ったほうが便利かもしれない

付属リモコンはコンパクトで操作感もいい。ただし、基本的には画面を見ながら操作するタイプなので、音楽ファイルを聴く場合はアプリを使ったほうが便利かもしれない

 UHD8000を手がける、Zidoo Technology Co., Ltd.は2014年に設立された中国のメーカーで、ARMマルチコアアーキテクチャーを用いた数々の製品を手掛け、ホームシアター向けメディアプレーヤーやオーディオ製品などを展開している。多機能なストリーマーで知られるEversolo(エバーソロ)も、Zidoo Technologyが展開するブランドだ。

 EversoloとZidooのキャラクターを差別化するうえで重要なのが、後者は映像ソースにも対応すること。特にUHD8000は上記の通りメディアプレーヤーであり、オーディオ用ストリーマーという捉え方では、その能力の一部分しか見えてこない。

 UHD8000はISO、MKV、MP4、TS、M2TSに加え、H.264/H.265系を含む多彩な映像フォーマットも扱える。さらにDSF、DFF、WAV、FLACなどの音楽ファイルにも対応。今回はこうした特徴を踏まえ、2チャンネルだけでなく、ドルビーアトモスや映像コンテンツも試してみることにした。

 取材はStereoSound ONLINE試聴室で実施。AVセンターにはデノン「AVC-A1H」、スピーカーにはB&Wの「800 D4」シリーズ、トップスピーカーにはイクリプス「TD508MK4」等を使った5.1.4環境を準備した。

 UHD8000を目の前にすると、まずその造りに目が向く。430mm幅のアルミニウム合金製シャーシはブラックで統一され、直線を基調とした端正なデザインだ。フロント中央には大型ディスプレイを配置。動作状態などを確認できるだけでなく、視覚的なアクセントになっている。

画像: フロントパネル内側にはふたつのスロットを搭載し、それぞれ最大16TバイトのHDDを取り付け可能。ここにデータを保存すれば、UHD8000だけでハイレゾファイルや映像作品を楽しむこともできる

フロントパネル内側にはふたつのスロットを搭載し、それぞれ最大16TバイトのHDDを取り付け可能。ここにデータを保存すれば、UHD8000だけでハイレゾファイルや映像作品を楽しむこともできる

 フロントパネルの内側には3.5インチHDD用の格納ベイが2基用意され、それぞれ最大16Tバイト、合計最大32Tバイトのストレージを構築できる。ハイレゾ音源やCDからリッピングしたデータだけなら32Tバイトは相当な大容量だが、本機は映像ファイルも扱う。それを考えれば、大容量ストレージを本体内部に収められるメリットは大きい。ローカル再生を中心にシステムを組むなら、NASを別途用意せず、本機だけで大規模なライブラリーを構築する選択肢も現実的だ。

 操作方法も多彩で、付属リモコンに加え、iPhone/iPad/Android端末用の「Zidoo Controller」アプリを用意する。基本的な再生操作やシステム設定だけでなく、音楽ライブラリーやアプリケーション、ストリーミングサービスの選択にも対応する。

 背面を見ると、本機の正体がさらに見えてくる。まず入出力端子が豊富だ。ネットワーク接続用のギガビットEthernetを始め、USB 3.0×2、USB 2.0、USB DAC入力、光/同軸デジタル音声出力、USBオーディオ出力、アナログRCAアンバランス/XLRバランス出力などを装備する。

 注目したいのが2系統のHDMI出力だ。メインHDMIはHDMI2.1aに対応し、最大8K/60pの映像出力が可能。別途オーディオ専用HDMI出力も備え、映像と音声を分離出力できる(メニューで設定可能)。ドルビーアトモスのビットストリーム出力やマルチチャンネルPCM、DSD出力にも対応する。

 さらに日本国内仕様ではWi-Fi6とBluetooth 5.2にも対応した。有線LANを基本とした本格的なシステムだけでなく、設置環境に応じてワイヤレス接続を選択できるようになった。

出力端子は選択式。どれを使うかは、事前に選んでおこう

画像: UHD8000のリアパネル。本文にもある通り、2系統のHDMI出力(映像/音声用と音声専用)を搭載しているのが一番の特徴だ。USB Type-Aは、USBメモリーや外付けUSB HDDをつないで音楽や映像データの再生も可能

UHD8000のリアパネル。本文にもある通り、2系統のHDMI出力(映像/音声用と音声専用)を搭載しているのが一番の特徴だ。USB Type-Aは、USBメモリーや外付けUSB HDDをつないで音楽や映像データの再生も可能

画像: 出力端子は排他式なので、本体の設定メニューから使う端子を選んでおく。専用アプリ「Zidoo Controller」からも設定できる

出力端子は排他式なので、本体の設定メニューから使う端子を選んでおく。専用アプリ「Zidoo Controller」からも設定できる

 内部構成を見ると、UHD8000がオーディオ再生をかなり重視して設計されていることがわかる。まず、D/A変換にはESS Technologyの32ビットDACチップ「ES9069Q」を採用。USB DACとして使用した場合は最大でDSD512、PCM 768kHz/32ビットまでのデコードに対応する。

 USBオーディオ系にはXMOSチップを搭載し、45.158MHzと49.152MHzの2基の水晶発振器を採用、クロックジッターの低減を図っている。デジタルオーディオでは信号処理の基準となるクロックの精度が重要であり、UHD8000では高サンプリングレート音源の処理を含め、クロック周辺にも対策が施された。

 既存のストリーマーにはLinuxベースのOSを採用している製品が多いが、UHD8000はAndroid 11を採用していることも特徴だ。さらにZidoo独自のオーディオエンジンによってAndroid OS側の制約である、48kHz縛り(基本的に44.1/88.2/176.4kHzなどの音源はサンプリングレートコンバーターで48kHzにリサンプリングされる問題)を回避しているのだ。

 アナログ段はDACからXLR出力まで完全バランス設計とし、RCA出力信号もこのバランス回路から生成する。メーカー公称値ではS/N 123dB超、THD+N 0.00015%未満、ダイナミックレンジ123dB超を実現している。

画像: StereoSound ONLINE視聴室に「UHD8000」をセットし、常設機器との組み合わせで取材を行った。AVアンプはデノン「AVC-A1H」、スピーカーはB&Wの「800 D4」シリーズを中心にした5.1.4システムだ。プロジェクターのJVC「DLA-V90R」で120インチ映像を再生している

StereoSound ONLINE視聴室に「UHD8000」をセットし、常設機器との組み合わせで取材を行った。AVアンプはデノン「AVC-A1H」、スピーカーはB&Wの「800 D4」シリーズを中心にした5.1.4システムだ。プロジェクターのJVC「DLA-V90R」で120インチ映像を再生している

 いよいよ試聴をスタート。まずはiPadを操作し、Qobuzのハイレゾストリーミングを再生した。UHD8000の音を聴いて最初に感じたのは、高域の張りと透明感だった。聴感上のS/Nが高く、音像の輪郭が明瞭で、見通しのいいサウンドである。一方で低域は量感をしっかり確保しながら、適度なメリハリを持たせている。決して線の細いタイプではなく、音楽のエネルギーを積極的にこちらへ伝えてくる印象だ。

 ジャズヴォーカルでは、ホリー・コール「Comin' Home Baby」を選んだ。ヴォーカルの細かなディテイルをしっかり描き、ピアノは音の立ち上がりが素早い。ヴォーカルや主旋律を担う楽器が埋もれず、押し出しのあるエネルギーを伴って前へ出てくる。この明瞭さはUHD8000のひとつの持ち味だと感じた。

 続いてApple Musicからマルーン5のアルバム『Love Is Like』を再生する。ここでもUHD8000のキャラクターは明快だった。現代のポップスが持つ積極的で華やかなサウンドを完成度高く表現し、キックドラムにはしっかりと芯がある。中高域の見晴らしもよく、ヴォーカルの明瞭度が高い。情報量を確保しながら、音楽を勢いよく聴かせてくれる。

 Apple Musicのドルビーアトモス音源から、セリーヌ・ディオン「My Heart Will Go On」を選んだ(AVC-A1HとはHDMI接続)。映画『タイタニック』のテーマ曲として知られる楽曲だが、ドルビーアトモス版では空間全体を使ったミックスを聴くことができる。ヴォーカルがセンターに定位し、その響きがフロントからリア方向へ展開する。周囲だけでなく天井方向にもコーラスが広がり、リスナーを包み込む。ステレオとは明確に異なる、360度と高さ方向を含めた空間そのものを使った表現だ。これは圧巻だった。

 Apple Musicにはもうひとつ見逃せないコンテンツがある。ミュージックビデオやライブ映像だ。今回は2025年に公開されたマライア・キャリー『Mariah Carey's Here For It All Holiday Special』を再生した。ビットレートが限定されるストリーミング映像ではあるものの、暗部の黒潰れは少なく、色彩豊かなステージをコントラストのメリハリよく描き出す。

 音についても、これまで聴いてきたUHD8000の躍動的なキャラクターがライブ作品とうまく噛み合う。広大なステージのスケール感や、会場を埋める観客の盛り上がりがストレートに伝わり、音と映像を一台で扱える本機ならではの楽しさを実感できた。

 実際に使ってみて好印象だったのが操作レスポンスで、アプリの起動やライブラリー操作もスムーズだった。音楽、映像、ストリーミングアプリ、ファイル管理と、多くの機能を一台で扱うUHD8000だからこそ、こうした基本的なレスポンスの良さは重要だ。

画像: Apple Musicでは、様々なアーティストのライブ作品も楽しめる。今回はマライヤ・キャリーのクリスマスライブや、マイケル・ジャクソンのMVをチェックした

Apple Musicでは、様々なアーティストのライブ作品も楽しめる。今回はマライヤ・キャリーのクリスマスライブや、マイケル・ジャクソンのMVをチェックした

 いかがだろうか。現代のオーディオ市場では、優れたストリーマー、ネットワークプレーヤー、ネットワークトランスポートに事欠かない。国内外の多くのメーカーが、それぞれの思想に基づいた幅広い選択肢を提供している。

 しかし、音楽再生に加えて映像ソースまで扱えるUHD8000は、その中でも稀有な存在だ。QobuzやTIDAL、Amazon MusicだけでなくApple Musicにも対応し、ローカルファイルについてもWAVやFLACなどのハイレゾ音源を内蔵HDDへ保存して再生できる。

 さらに大きなメリットが、Apple Musicなどで配信されているドルビーアトモスの空間オーディオを、本格的なマルチチャンネル・スピーカーシステムで楽しめることだ(AVアンプは必要だが)。もちろんスピーカーの設置等には若干のノウハウが必要だが、家庭でこれだけスケールの大きな体験ができるのは、UHD8000ならではの魅力である。

 ストリーミング、ハイレゾファイル、ドルビーアトモス、映像ファイルなどの再生ソースとフォーマットが多様化する現在、UHD8000はそれらを一台で横断して楽しむという魅力的な回答を提示している。今回じっくり使ってみて、Zidooが単なる “音楽ストリーマー” ではなく、“メディアプレーヤー” というカテゴリーで独自の立ち位置を築いていることを強く実感した。

(撮影:嶋津彰夫)

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