OCTOBER 2026 NEW RELEASES- THE CRITERION COLLECTION

THE CRITERION COLLECTION has announcedits OCTOBER 2026 slate of 4K UHD BLU-RAY(4)and BLU-RAY(3)releases ー Amongst them are:CHRISTIANE F.(1981)THE SILENCE OF THE LAMBS(1991)FRANKENSTEIN (2025)and THE COMPLETE KUBRICK(1952 - 1999)

4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
THIRTY-DISC 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION COLLECTOR’S SET

10月20日はクライテリオンにとって、そして映画ファンにとって、かつてないほどエキサイティングな一日となる。この日にリリースされるのは(公開年代順に)『クリスチーネ・F』(1981)『羊たちの沈黙』(1991)そして2026年フィジカルディスクのハイライトとなる『コンプリート・キューブリック』だ。後者はキューブリックの全監督作品を、30枚の4K UHD BLU-RAY/BLU-RAYディスクに収録。13本の長編映画と3本の短編映画が4Kレストアされている(詳細は下欄リンク)。

画像: United Kingdom, United States • 1955 - 1991 • 1572 minutes • Black & White / Color • 1.37:1 / 1.66:1 / 1.85:1 / 2.20:1 • English ー When viewing this Clip, please set resolution to 1080p/HD

United Kingdom, United States • 1955 - 1991 • 1572 minutes • Black & White / Color • 1.37:1 / 1.66:1 / 1.85:1 / 2.20:1 • English ー When viewing this Clip, please set resolution to 1080p/HD

4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

1970年代(1975~1977年)のベルリンを舞台に、薬物中毒を扱った映画の中でもっとも衝撃的な作品のひとつとして知られる『クリスチーネ・F』(1981)の登場である。原作はクリスチアーネ・フェルシェリノウ(クリスチーネ・F)本人の口述をもとに、独シュテルン紙の編集者カイ・ヘルマンとホルスト・リークが書き上げた回顧録『かなしみのクリスチアーネ ー ある非行少女の告白』(1978年刊行/原題:Wir Kinder vom Bahnhof Zoo)。この本によってフェルシェリノウはドイツの若者世代の象徴となったが、映画化された本作品も1981年ドイツ映画で国内映画興行成績(観客動員数)第1位に輝いている。脚色は3年後に『ネバーエンディング・ストーリー』の脚本を書いたヘルマン・バイゲル。バイゲルは原作の冒頭と結末を省略し、複雑な家庭で生まれた13歳の少女が麻薬に溺れ、売春をしながら過酷な日々を送る姿を綴っていく。『ブルックリン最終出口』『バーダー・マインホフ 理想の果てに』などで知られるウーリー・エデルの長編監督デビュー作。

画像: Germany • 1981 • 131 minutes • Color • 1.78:1 • German ー When viewing this trailer, please set resolution to 1080p/HD

Germany • 1981 • 131 minutes • Color • 1.78:1 • German ー When viewing this trailer, please set resolution to 1080p/HD

14歳を目前にした、デヴィッド・ボウイを崇拝するクリスチーネ・F(ナーチャ・ブルンクホルスト)。このあどけない少女が、離婚した母親の目を逃れて(実在する)ディスコ「サウンド」で時間を過ごすようになる。そこでデートレフ(トーマス・ハルシュタイン)と恋に落ちるが、その出会いが純真な彼女を麻薬中毒へ、そして売春へと導いていく。ホラー映画のヒロインのように堕落していく彼女の体は不気味な色に変わり、髪は汚れの蓄積したオレンジに染まり、緑がかった青白い肌となる。幾度も腕に針を刺し、そのすべてを至近距離から見つめるカメラ。どうにかしてヘロインを断とうと誓った後に突き付けられる、『エクソシスト』のリンダ・ブレアなど及びもしない胸が悪くなるシーン。西ベルリンのドラッグと音楽シーンのなかで、無残に堕ちていく少女の悪夢のような姿が観る者を震撼させる。

画像1: 4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION
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冷徹なドキュメンタリータッチで描かれ、デヴィッド・ボウイのサウンドトラックに支えられた本作品は、薬物中毒の恐ろしさを悲しくも陰惨に描いた映画であり、その恐ろしさこそがこの映画の核心である。監督エデルは、初めて演技をする素人たち、そしてベルリン動物園駅(ツォー駅)の悪名高いドラッグ・クルージング・シーンの常連客たちとロケ撮影を行い、未成年売春から残酷な禁断症状、ジャンキー生活の止めどない堕落を容赦なく捉えてみせる。ボウイ自身も「ステーション・トゥ・ステーション」のコンサートパフォーマンスに登場しており、サウンドトラック・プロデューサーとして参加した(自身の楽曲も9曲提供した)サウンドトラックは名作「ベルリン三部作」を生み出した黄金期の集大成とも言えるもので、ナイトクラブの暗黒面をも見事に音で表現している。

画像2: 4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

撮影監督はライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督とのコンビで知られるユルゲン・ユルゲスと、テレビ界出身でこれが初の長編映画での仕事となったユストゥス・パンカウ。主な登場人物が非職業俳優で構成された作品のため、撮影を円滑に進めるため、スケジュールと撮影シーンに応じて両名が分担して作業を進めている。ユルゲスが屋外などのドラマ部分、パンカウはスタジオ内での撮影を担当しているが、当時のベルリンの(ドラッグカルチャーを扱った)センシティブでリアルな現場での撮影は制限やトラブルも多く、過密日程をこなすために撮影監督2名体制を要したという。

画像2: ー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HD

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彼らが共有したのは、ドキュメンタリータッチであっても独特のスタイルとトーンを盛り込むこと。シネマティックで構築的なライティングを避け、ハンドヘルドのカメラワーク、増感現像による粗い画調、光量を抑えたアベイラブルライト(自然光とその場にある灯り)といったアプローチによってドキュメント映像のような臨場感を生成。色調は荒廃したベルリンを象徴する抑えたクールトーン(青味や緑味)が支配。一方で、重要な舞台となる(実在の)ディスコ「サウンド」の電飾やベルリンの雑踏など、夜の世界の幻想性や官能性を醸し出す艶めかしい色彩が使われる。異質な色彩トーンをぶつけ合う色彩設計やコントラストによって、若者たちの持つ生への渇望、死への接近を視覚対比させて表現しようと試みたのである。また、ストリートを映し出すアングルは(クリスチーネたちの視野と視線を意識させる)アイレベル。大人たちの社会の冷酷さ、若者たちの無力さを強調するハイアングルとローアングルの使い分けも巧い。薬物静注のポンプ場面では、ネガティブスペース(余白)のないエクストリーム・クローズアップが多用され、逃げ場のない状況を強調しながら、観る者に観客に生理的な嫌悪感と臨場感を突きつけている。

画像3: 4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

『クリスチーネ・F』の4Kレストア作業は、2021年、独ファロス・ポストグループ(Pharos – The Post Group/旧ARRI Media)が行っている。35mmオリジナルカメラネガから4Kスキャン、デジタルレストアされているものの、HDRグレーディングは施されていない。ファロスによれば「上映プリントに記録されていた当時の西ベルリンのどんよりとした、くすんだ空気感を忠実に残した質感」を再現したという。そしてこの4K SDRマスターを使用した(NON-HDR)独盤4K UHD BLU-RAY/BLY-RAYが、2022年4月に独EuroVideoからリリースされ、2025年仏版にも流用されている(仏Metropolitan Studios/但し独盤にはエラー箇所がある)。

2023年に4Kレストア版の北米上映権を取得したヤヌス・フィルム(クライテリオンの親会社)は、監督エデルの意向も尊重し、4KスキャンDPXファイル(Log形式の修復前ファイル)に戻って新たな4KデジタルレストアとHDRグレードを実施。HDRグレーディングには監督エデルも立ち合い、最終的な承認を与えている。エデルは「HDRは決して過度なものではなく、なおかつ私が望む限りオリジナルに近いもの」と語っている。その後、2025年7月にフィルム・アット・リンカーン・センターやアメリカン・シネマテークなどの上映館で限定上映。そして10月、レストア4K UHD BLU-RAY/BLU-RAYリリースの運びとなった。

画像4: 4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES
TWO-DISC(4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY with the film and special features)COMBO PACK RELEASE

  • NEW 4K DIGITAL RESTORATION, approved by director Uli Edel, with remastered 5.1 surround DTS-HD Master Audio soundtrack
  • HDR PRESENTATION OF THE FILM(DOLBY VISION / HDR10 COMPATIBLE)
  • New interview with Edel
  • New appreciation by filmmaker Sean Baker
  • Interview from 2022 with actor Natja Brunckhorst
  • Screen tests
  • New English subtitle translation
  • PLUS: An essay by scholar Hester Baer

Released: OCT 20, 2026
List Price: $49.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 2-DISC SET)$39.95 USD (BLU-RAY 1-DISC)

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タイトルクリスチーネ・F
1981年
監督ウルリッヒ・エデル
製作ベルント・アイヒンガー ハンス・ヴェット
原作カイ・ヘルマン ホルスト・リーク クリスチアーネ・フェルシェリノウ(口述)
脚本ヘルマン・バイゲル ウルリッヒ・エデル
撮影ユルゲン・ユルゲス ユストゥス・パンカウ
音楽ユルゲン・クニーパー
soundtrack producerデヴィッド・ボウイ ハリー・マスリン トニー・ヴィスコンティ
出演ナーチャ・ブルンクホルスト トーマス・ハルシュタイン イェンス・クーパル イアン・ゲオルグ・エフレル クリスチーヌ・ライヒェルト クリスチーヌ・レハル デヴィッド・ボウイ

AWARDS

モントリオール世界映画祭1981年
☆ 受賞観客賞(ウルリッヒ・エデル)

4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
THREE-DISC 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

若い女性を殺害して皮を剥ぐ連続猟奇殺人事件が発生。FBI訓練生クラリス(ジョディ・フォスター)は、監禁中の天才精神科医にして殺人鬼のレクター博士(アンソニー・ホプキンス)の智恵を借りながら犯人に迫っていく。もはや説明不要の傑作スリラー『羊たちの沈黙』(1991)の登場である。鈍い灰色の朝靄が立ちこめるオープニングショットから、レクター博士が新たな獲物を求めて歩を進める夕暮れのラストシーンまで、この映画は光を失った映像世界(撮影タク・フジモト)を創り出し、不気味で不安を掻き立てる劇伴(音楽ハワード・ショア)がそれを際立たせている。

画像: United States • 1991 • 118 minutes • Color • 1.85:1 • English ー When viewing this trailer, please set resolution to 2160p/4K

United States • 1991 • 118 minutes • Color • 1.85:1 • English ー When viewing this trailer, please set resolution to 2160p/4K

トマス・ハリスによる原作小説は、その根底に18〜19世紀の古典的なゴシック小説(古城、深い森、霧、地下迷宮、怪物のモチーフ)の構造が組み込まれていることは、すでに周知の事実となっている。文学研究においても、古典的ゴシック小説を現代のアメリカに置き換えたアメリカン・ゴシックの傑作として高く評価されている。地下牢(ダンジョン)の構築。怪物(レクター博士)の二面性。連続殺人犯のゴシック的異形への変身願望。その原作小説の映画化では、幕開けから(小説の文字では表せない)ゴシックホラー映画のようなムードを醸し出している。そびえ立つ木々。濃い霧。ティボール・カルマンによるタイトルの、文字間隔や配置の微妙な不均一性。これらは潜在意識に働きかける効果があり、表面下に不安や不穏さを忍ばせ、なおかつ来るべき悲劇を予兆させて究極的に巧い。こうした演出は、本作品の監督ジョナサン・デミの師、ロジャー・コーマン監督の60年代エドガー・アラン・ポー原作映画 ー たとえば『アッシャー家の崩壊』『落とし穴と振り子』などを彷彿とさせる。そうした恐怖演出の心理手法を本作品に持ち込み、さらに視覚的なゴシック要素を随所で盛り込んだことで、観客にゴシックファンタジーと警察捜査ドラマの間を行き来するさせてみせるのだ。加えてデミは、風景や個体に心理と歴史をマッピングする手法に長けており、その結果、『羊たちの沈黙』には400年以上にわたる白人アメリカの遺物が詰め込まれることとなった。

画像1: ー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HD ー

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監禁病棟の地下特別房との境界を照らす深紅、あるいは夜間暗視ゴーグルAN・PVS-5が捉える可視光線の緑など、ゴシック様式を彷彿とさせる配色が散りばめられている点も興味深い。それは前述したポー映画化作品群のゴシック調の色使いを見るかのようでもある。なかでも夜間暗視(ナイトビジョン)の緑でクラリスを照らし出す場面は極めて不穏だ。それはクライマックスの緊迫感を高めるためのスタイリッシュな配色であり、殺人鬼バッファロー・ビルの視線を観客に共有させるおぞましい瞬間でもあるが、もっとも重要な点はビルの根底にある病理の視覚的表現として機能していることだ。

前述したゴシック小説の舞台となる中世ゴシック期では、緑色は邪悪な情念、不条理、そして悪魔の象徴とされた。その後、中世末期からルネサンス期にかけて、ダンテの叙事詩『神曲』や画家ヒエロニムス・ボスの絵画などの題材となり、一般庶民の文化や芸術にも深く根を下ろしていくことになる。シェイクスピアは四大悲劇『オセロ』の中で「嫉妬」の本質を「緑色の目をした怪物(green-eyed monster)」と表現し、『ヴェニスの商人』の中でも「緑色の目をした嫉妬(green-eyed jealousy)」と記しており、緑=嫉妬の意へと完全に定着した時期でもあった。またキリスト教における七つの大罪(傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、色欲、暴食、怠惰)を色で表す際、緑は「嫉妬」の色として表されることにもなったのである。本作品では七つの大罪が明確なテーマとして明示されているわけではない。だが、登場人物たちの心理や動機、あるいは聖書的なメタファーを深く読み解くことで、大罪の要素が密接に絡み合っていることが解るはずだ。

画像2: ー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HD ー

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ナイトビジョンの緑色の色調は「邪悪な情念」「嫉妬」の色と直接的に結びついており、観客は単にビルの目を通して見るのではなく、彼の「邪悪な情念」のレンズ(目)を通した「嫉妬」の視覚表現として機能しているのである。すでにレクター博士はクラリスに、ビルが女性への憎しみ、サディズム、または性的欲望から殺害しているわけではないと智恵を授けている。やがて示されるビルの病理は、女性の体躯に対する深い嫉妬から生じ、その部位を取り入れ続けることで自己を変革しようとする妄想的で邪悪な欲望だ。そのクライマックス。クラリスは暗闇の中を手探りし、ビルが近くにいることに気づかない。だがビルはどうだ。ナイトビジョンの緑を通してクラリスの顔に向かって差し伸ばされる手は、まるで大切なものに触れようとしているかのようだ。決して傷つけるのではなく、子供が望み欲するようであり、同時に手に入れたくても手に入れられないもの、自分もそうありたいのに手に入らないものに向かって伸ばされる「嫉妬」の手なのである。そして現代では緑色は、生命力、癒しなどを象徴するポジティブな側面もあり、それをクラリスに置き換えてこの場面を観ると、緑色に秘められた二面性がより深みのあるドラマを形成していることに気づくはずである。

画像1: 4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE THREE-DISC 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

中世ゴシック期において、赤色は神聖な愛とキリストの血(自己犠牲)、最高権力や富、そして対極にある地獄の炎と悪魔という、極めて強い二面性を持つ重要な色とされた。七つの大罪で言えば憤怒にあたる。ゴシック文脈における赤は、血、生贄、宿命、そして人間の根源的な恐怖の象徴だ。レクター博士が収監される地下特別房の入口にあたる鉄格子は、重苦しい深紅に塗られ、照らすライトも燃え盛る赤を思わせる。もうお分かりかと思うが、撮影監督タク・フジモト、美術監督クリスティ・ズィー、そして美術装飾のレン・A・オハラは、クラリスが現実世界から、地獄を思わせる恐怖が支配する空間へと引き摺り込まれる境界線として赤色を機能させている。さらに地下特別房を、剥きだしの石壁、重々しい鉄格子といった中世の城の牢獄のようにデザインし、不気味な洋館や古城に迷い込むというゴシックの定番プロットを、現代の監禁病棟の地下特別房に置き換えてみせている。その一方で、クラリスが任を帯びるFBIアカデミーやクロフォード主任捜査官の部屋は、蛍光灯の青白い光(近代的、理性的、科学的)で構成されている点にも注目されたい。

画像3: ー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HD ー

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『羊たちの沈黙』の35mmオリジナルネガからの4Kデジタルレストアは、2017年、クライテリオンとMGMが共同で行ったのが最初である。さらにフジモトがカラーグレーディングを監修、最終の承認を与え、2018年2月にクライテリオンBLU-RAYがリリースされている(高画質版として定評がある)。その後、2021年に米キーノローバーが、2024年に英アロービデオがUHD BLU-RAYをリリースしている。いずれもMGMからライセンスを取得してリリースしたものだが、以降の状況は少し複雑なものになっている。まずキーノ版に関して。

画像: ー 2018 Criterion BD ー

ー 2018 Criterion BD ー

画像1: ー 2021 Kino Lober 4K UHD ー

ー 2021 Kino Lober 4K UHD ー

30周年にあたる2021年、MGM主導で限定劇場公開用に4Kデジタルレストア/HDR(HDR10とドルビービジョンHDR)グレーディングが行われ、フジモトが確認し承認している(2017年クライテリオン・マスターとは異なる)。このマスターは完璧なものであるはずだったが、キーノ版UHD BLU-RAYリリース後に問題が発覚。本編序盤の約20分間(リール1)に関して、オーサリング段階でのカラースペース(色空間)エラーがあったのである。これによって前述の「赤」は退色し、屋外や室内の色彩トーンも不自然な青緑を帯びる結果となってしまった。この冒頭20分に関しては肌の描写も平坦なものとなっている。全編の黒レベルもクライテリオンBLU-RAYより不安定で、黒浮き黒ツブレする箇所も散見されている。サウンドは5.1ch、および2.0chを収録。但し2.0chトラックは、5.1ch音声データを2.0chにフォールドダウン(変換・統合)したものであった。

画像: ー 2018 Criterion BD Stereo waveform ー

ー 2018 Criterion BD Stereo waveform ー

画像: ー 2021 Kino Lober 4K UHD Stereo waveform ー

ー 2021 Kino Lober 4K UHD Stereo waveform ー

画像: ー 2021 Kino Lober 4K UHD 5.1(Downmix)waveform ー

ー 2021 Kino Lober 4K UHD 5.1(Downmix)waveform ー

この問題にしてアロービデオは修正を実施。2021年MGMマスターのライセンスを取得、フィデリティ・イン・モーション社のデヴィッド・マッケンジーがエンコードとマスタリングを手掛けてリブート版として完成させたのである。キーノ版のエラーを修正できるかどうかが大きな問題とされたが、結果、HDRカラーは適切な色空間内で調整されており、同じく適切な量の彩度とコントラストを備えた、豊かで質感のある画を実現(アロー推奨はドルビービジョン鑑賞)。リリース当時入手可能な『羊たちの沈黙』の決定版ホームビデオリリースと評価された。サウンドは2021年リマスター5.1chトラックに加え、あらたにレストア/リマスターしたオリジナル2.0chトラックを収録している。

画像: ー 2024 Arrow Video 4K UHD ー

ー 2024 Arrow Video 4K UHD ー

画像2: ー 2021 Kino Lober 4K UHD ー

ー 2021 Kino Lober 4K UHD ー

2026年になって現時点まで『羊たちの沈黙』は、北米・欧州を中心に35周年記念の限定劇場公開が行われている(9月までの予定)。このスケジュールの終了を待ってクライテリオン版の登場となるわけだが、リリースまでに時間を割いたのには理由がある。ライセンス契約の競合、他社の失敗と成功の静観、そして自社マスターを完璧な4K HDR仕様へ昇華させるためのスタジオの判断だ。2018年クライテリオンBLU-RAYリリース後、北米地区でのUHD BLU-RAYリリースのライセンスを獲得したのがキーノであった。クライテリオンはこのライセンス失効を待って新たに契約する必要があり、キーノ版リリースから5年の歳月を要することになった。この間、アロービデオのリブート・プロセスやその市場の動向を静観し、北米地区のファンが100%満足する真の決定版を自社から出すタイミングを計っていたのである。ちなみにアロー版は欧州地区のみのライセンスを取得しており(UHD BLU-RAYはリージョンコードFREEながら)本編・特典収録のBLU-RAY版はR-B仕様である。

画像4: ー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HD ー

ー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HD ー

そのクライテリオンUHD BLU-RAYだが、マスターは2021年MGM、2024アロー版と異なるものである。4K HDR化に伴う追加の修復とHDRグレードは、クライテリオンのインハウス・チーム(および委託スタジオ)によるものだ。これは公開された下欄の文面からも明快だ。文末のカラーリスト:EFilmのケヴィン・オコナーは2018年クライテリオンBLU-RAY制作時のカラーリストでもある。

画像2: 4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE THREE-DISC 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

Our upcoming 4K release of THE SILENCE OF THE LAMBS features the same restoration that is included on our Blu-ray edition of the film. It has been re-encoded for the 4K release, which is exclusive to Criterion. We did not use the master from MGM or Arrow, and there are no color space issues present on our release. 

THE SILENCE OF THE LAMBS is presented in the aspect ratio of 1.85:1. Supervised by director of photography Tak Fujimoto, this 4K restoration was created from the 35 mm original camera negative. The original 2.0 surround soundtrack was remastered from the 35 mm magnetic track. Please be sure to enable Dolby Pro Logic decoding on your receiver to properly play the 2.0 surround soundtrack. The feature is presented in Dolby Vision HDR(high dynamic range)on the 4K Ultra HD disc.

Colorist: Kevin O’Connor/EFILM

画像: Colorist: Kevin O’Connor/EFILM

4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES
THREE-DISC(4K UHD BLU-RAY/TWO BLU-RAY with the film and special features)COMBO PACK RELEASE

  • NEW 4K DIGITAL RESTORATION, supervised by director of photography Tak Fujimoto, with 2.0 surround DTS-HD Master Audio soundtrack
  • HDR PRESENTATION OF THE FILM(DOLBY VISION / HDR10 COMPATIBLE)
  • Alternate 5.1 surround DTS-HD Master Audio soundtrack
  • Audio commentary from 1994 featuring director Jonathan Demme, actors Jodie Foster and Anthony Hopkins, screenwriter Ted Tally, and former FBI agent John Douglas
  • Interview with critic Maitland McDonagh
  • Deleted scenes
  • Interview from 2005 with Demme and Foster
  • Four documentaries featuring hours of interviews with cast and crew
  • Behind-the-scenes featurette
  • Storyboards
  • Trailer
  • English subtitles for the deaf and hard of hearing
  • PLUS: An introduction by Foster; two essays, one by critic Amy Taubin and one by critics Willow Catelyn Maclay and Caden Mark Gardner; pieces from 2000 and 2013 by author Thomas Harris on the origins of the character Hannibal Lecter; and a 1991 interview with Demme

Released: OCT 20, 2026
List Price: $49.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 3-DISC SET$39.95 USD (BLU-RAY 2-DISC)

画像: 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES THREE-DISC(4K UHD BLU-RAY/TWO BLU-RAY with the film and special features)COMBO PACK RELEASE

クラリスと観客のシンクロは『羊たちの沈黙』の成功の鍵であり 、その多くはタク・フジモトの映画的手法、とりわけエクストリーム・クローズアップの素晴らしさにも起因している。それは早くも序盤で登場する。クラリスと上官のジャック・クロフォードのやりとりである。基本的にはカメラアングルはアイレベルに分類されるが、真正面から捉えられたクロフォードは、ほんのわずかにローアングルから、彼の視線を少し見上げるように撮られている。一方でクラリスは対照的なアングルから捉えられ、彼女のアクションは首を傾げ、話すときにはしばしば横を向く。これは「支配」を象徴した巧妙な映像言語である。ふたりの視線が交錯するリバースショットによって、観客はある種の威圧感を覚えるはずだ。観客はすでに彼女の目を通して、そして彼女の立場に立って物事を見るように誘導されており、もしも原作小説を読んでいる方ならクロフォードに対して抱える葛藤を知っているだけに、その効果は層倍のものとなる(高品位な大画面鑑賞ならなおさらだ)。

画像5: ー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HD ー

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いよいよクラリスがレクター博士に会う場面になると、威圧感はより複雑になり、クラリスと同じく観客は混乱を来す。ふたりはより長回しのリバースショットで撮影・編集されているにもかかわらず、観客の心理や視線誘導をコントロールするためのテンポとリズムが生み出されており、映像のダイナミズム、その質が深まっている。レクター博士のエクストリーム・クローズアップは(威圧感どころではない)露骨な恐怖によって描かれ、対するクラリスはその恐怖に圧倒され、しかもフレームのオフセンターに追いやられている。構図は非対称。右側には大きなネガティブスペース。この余白を使ってデミとフジモトは、台詞では語られない心理力動を生み出している。爬虫類のような風貌と獲物を射るような瞳を輝かせるレクター博士の一挙手一投足は、クラリス(観客)が抗うことのできない誘惑的な魅力を放っており、恐怖に支配されながらも心を奪われてしまうのだ。知的なゲームを仕掛けてくるレクター博士は、ロマン主義におけるルシファーのような存在であり、その存在感は圧倒的だ。思えばロマン主義の作家たちが書いたゴシック小説の悪役たちは、単なる悪人ではなく「抗えない魅力と高潔さを持った、美しくも恐ろしい反逆者」として描かれており、まさにレクター博士はルシファーの系譜と言える。さらに聖書やヨハネの黙示録において、堕天使ルシファーが姿を変えたもの、あるいはその正体そのものとされるレッド・ドラゴンを想い起こせば、原作小説『羊たちの沈黙』の前章『レッド・ドラゴン』との関係性もより明快になるはずである。

画像6: ー When viewing this clip, please set resolution to 1080p/HD ー

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ー Coming soon! Manhunter – The Final Cut (UK Studio Canal 4k UHD All Region / Blu-Ray Region B) ー

タイトル羊たちの沈黙
1991年
監督ジョナサン・デミ
製作エドワード・サクソン ケネス・ウット ロン・ボズマン
製作総指揮ゲイリー・ゲッツマン
原作トマス・ハリス
脚本テッド・タリー
撮影タク・フジモト
音楽ハワード・ショア
出演ジョディ・フォスター アンソニー・ホプキンス スコット・グレン テッド・レヴィン アンソニー・ヒールド ケイシー・レモンズ ダイアン・ベイカー ブルック・スミス フランキー・R・フェイソン ロジャー・コーマン チャールズ・ネイピア ジョージ・A・ロメロ

AWARDS

アカデミー賞1991年
☆ 受賞作品 監督 主演男優 主演女優 脚色
★ ノミネート音響 編集
ベルリン国際映画祭1991年
☆ 受賞監督
NY批評家協会賞1991年
☆ 受賞作品 監督 主演男優 主演女優

4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY COMBO RELEASE
DIRECTOR-APPROVED FOUR-DISC 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION

10月27日、クライテリオンはギレルモ・デル・トロ監督作『フランケンシュタイン』(2025)で10月のリリースを締めくくる。メアリー・シェリーが1818年に発表した原作小説は、ゴシック小説を代表する金字塔的な作品である。先述の『羊たちの沈黙』は直系のフォロワーではないが、文学的・心理学的な観点から非常に深いテーマ性の共通点を持っているので、これを機に併せて鑑賞するのも一興かもしれない。さてクライテリオン版だが、ここでは150分劇場公開版に加え、新たに編集された158分ディレクターズカット版『フランケンシュタイン:リボーン・カット』もリリースされる。

画像: United States, Mexico • 2025 • 150 minutes • Color • 1.85:1 • English ー When viewing this Clip, please set resolution to 2160/4K

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『リボーン・カット』はNetflix配信版(劇場公開版)に未公開映像(修道院のシーンなど)を追加したものだが、単なる拡張版ではない。デル・トロが本来意図していたストーリーのテンポや心理的ダイナミズムを生み出すために、作品全体にわたって細密な再構築を施したものである。デル・トロ自身、このバージョンを制作中に「すべての縫い目を編み直す(All the Stitches)ような作業」であると言及しており、全編に渡ってカッティングのタイミングや音響・音楽キューやボリュームも細かく調整、極めてシームレスな作品に仕上げられている。また『リボーン・カット』をより理解できるよう、デル・トロによるシーンごとの音声解説トラックを収録しているあたり、さすがクライテリオンである。こうした別バージョンの収録は『フランケンシュタイン』に始まったわけではない。昨年10月リリースのクライテリオンUHD BLU-RAY『ナイトメア・アリー』では、全編に渡り細かな再編集と映像・音声の調整を行った、高品質モノクローム・バージョン『NIGHTMARE ALLEY: VISION IN DARKNESS AND LIGHT』が収録されている。こうのようにデル・トロとクライテリオンは「配信や映画館で1度鑑賞して終わり」にせず、「映画ファンが手元に置いて何度も味わう愛蔵版」にするため、フィジカルメディア化における企画段階からサプライズを用意していたのである。

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クライテリオンとデル・トロ。両者の関係は非常に良好であり、これまでに『クロノス』(1993/4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY)『デビルズ・バックボーン』(2001/BLU-RAY/BOXセット所収)『パンズ・ラビリンス』(2006/BLU-RAY/BOXセット所収)『ナイトメア・アリー』(2021/4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY)『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ/4K UHD BLU-RAY/BLU-RAY』(2022)がリリースされている。その中でNetflix配信作品は『ピノッキオ』、そして10月予定の本作品となる。デル・トロは熱狂的なフィジカルメディアの擁護者であり、日頃から「配信サービスにある映画は、ある日突然ラインナップから消え、二度と見られなくなるリスクがある」と警鐘を鳴らしてきた。彼の哲学・信条によると「形として手元に残るディスクだけが、本当の意味で映画を所有し、文化として保存する方法」なのだという。

フィジカルメディアを所有するということは、ある意味で『華氏451度』(レイ・ブラッドベリのディストピアSF小説)にも通じるような、重大な責任を伴う行為だ。もしあなたが愛する映画の4K UHDやブルーレイ、DVDなどを所有しているなら、あなたは未来の世代に向けて、それらの映画を預かり、守り続ける「守護者」となる。 ギレルモ・デル・トロ

画像1: フィジカルメディアを所有するということは、ある意味で『華氏451度』(レイ・ブラッドベリのディストピアSF小説)にも通じるような、重大な責任を伴う行為だ。もしあなたが愛する映画の4K UHDやブルーレイ、DVDなどを所有しているなら、あなたは未来の世代に向けて、それらの映画を預かり、守り続ける「守護者」となる。 ギレルモ・デル・トロ

一方でクライテリオンは、これまでマーティン・スコセッシやアルフォンソ・キュアロン監督作など、動画配信サービスのオリジナル作品をフィジカルディスク化している。配信限定になりがちな秀作・傑作をオリジナル・クオリティで届けるほか、貴重な特典映像やコメンタリーなどを収録して手元に残そうという真の映画アーカイヴ・プロジェクトを推進しているのである。クライテリオンはNetflixとパートナーシップを結んでいるが、それでもデル・トロは契約時、『ピノッキオ』『フランケンシュタイン』のクライテリオン・リリースをあらかじめに契約事項に盛り込んでいる。また、デル・トロや多くの映像作家がフィジカルメディアを擁護する姿勢を貫く理由のひとつに、提供される映像・サウンド品質に大きな違いが生じる点を挙げている。たとえば『ピノッキオ』(下欄表)。その差異は一目瞭然。彼らは、ホームシアター環境で映画の世界に没入するためには、フィジカルメディアの圧倒的な情報量が不可欠と考えており、自分たちの芸術を正確に届けるためにフィジカルメディアを強く支持しているのである(配信時代になり、クライテリオンの存在感はより大きくなっている)。

Guillermo del Toro PINOCCHIO:Direct Comparison of Video and Audio Bitrates

Netflix 配信版クライテリオン 4K UHD
ディスク規格—(ストリーミング)BD-100(3層・100GBディスク)
映像コーデックHEVC / AV1HEVC
HDR(DV)Dolby Vision Profile 5Dolby Vision Profile 7
映像転送レート最大 約15Mbps 〜 18Mbps平均 83.65 Mbps / 最大 94.60 Mbps
音声コーデックDolby Digital PlusDolby TrueHD
音声転送レート(アトモス)最大 768 kbps平均 4473 kbps / 最大 8,000kbps±
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デル・トロが長年の夢を叶えて完成させた本作品のビジュアルは、ハンドメイド感覚のゴシック古典美と緻密な色彩設計が特徴のひとつとなっており、その成果は撮影監督ダン・ローストセンとプロダクションデザイナーのタマラ・デヴェレルの仕事によるところが大きい。なかでも4K HDRの観どころは、ゴシック様式の重厚な雰囲気によって特徴づけられる世界感の再現にある。長年の夢を実現するという重責を担ったデヴェレルは、グリーンバックに頼らず、すべてをゼロから手作りした有機的な触感に訴える360度環境を構築。さまざまなゴシック建築デザインや歴史的要素を巧妙に組み合わせ、スコットランドの給水塔からロンドンの解剖台に至るまで、その範囲は多岐に渡っており、デル・トロが「非常に伝記的」と評した視覚的なインパクトを生み出したのだ。デル・トロ作品でお約束の円形モチーフも、本作品の重要な要素となっている。それは生命の循環を表しており、開幕と終幕の循環的なストーリーとも繋がっている。

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デル・トロが描く映像世界は、美しさと残虐性が不可分に織り交ぜられている。美と残虐が織りなす視覚的な共時性。そこは独ロマン派を代表する風景画家カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの絵画から着想を得た北極の荒涼とした凍てつく風景、ヨーロッパの宮殿の鮮やかでゴージャスな色彩、研究室の汚れた血まみれの床が混交するような映像世界である。撮影監督ローストセンが構築した色彩象徴主義の撮影操演は本作品のハイライトだ。ローストセンのライティング・デザインによって、あらゆる空間にゴシック調のムードを高める工夫が凝らされており、なかでも単一光源照明と絵画的な陰影の使い方へのこだわりは必見となろう。ストーリーを展開していく上で、照明光は必要な場所にのみ存在すべきであり、セット全体を人工的な明るさで満たすべきではない。ローストセンとデル・トロが構築した光彩い陰影は、画家カラヴァッジオやレンブラントなどのキアロスクーロ(明暗対比技法)、あるいはアトキンソン・グリムショウの陰鬱な夜景から深いインスピレーションを得て、まるで光が登場人物のひとりとして存在するように演出されている。

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ローストセンによれば、本作品のおよそ9割はARRIアレクサ65(3:2オープンゲート/ARRIRAW 6.5K収録)に24mmレンズを装着して撮影されたという(96fpsハイスピードショット他、一部ショットはRED VラプターXL VV/17:9モード/REDCODE RAW 8K収録)。レンズはエルンスト・ライツ・ウェッツラー社(ライカ・シネマレンズ部門を担う姉妹会社)製の大型単焦点シネマレンズ、ライツ・タリア(Leitz Thalia)を使用。滑沢性に富み、絹のような質感を持つクリーンな描写が特徴だ。解像度は極めて高いものの、デジタル特有の硬質感と無縁、とりわけ人間の肌質表現が極まっている。そのラインナップを飾る24mm広角レンズは、被写体に極限まで迫ったダイナミックな広角マクロ撮影も可能であり、60mmという圧倒的なイメージサークルを確保できる。この広角レンズの選択により、ヴィクトリア朝時代のセットの壮大でオペラ的なスケールを捉えつつ、同じショット内で執拗なまでにタイトなクローズアップを連続して撮影することが可能になった。ARRIアレクサとライツ・タリアが生み出すディープフォーカス画は、その機能性と同時に芸術性によって高く評価されている。編集の必要性を減少させるとともに、時間と空間との結合力を高めることに成功しており、多くの空間面を1ショットで同時に捉えることを可能としたことに加え、そのシーンの客観性の維持(観客の主観の排除)を確立してみせた。その巧みは4K UHDの観どころのひとつとなろう。

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デル・トロの2015年監督作『クリムゾン・ピーク』以降、物語そのものがより顕著にシンボル(象徴)で形作られるようになり。色彩、衣装、セット、モチーフなど、すべてが何らかの意味を持つように設定されている。本作品でもそれぞれのキャラクターや感情、テーマに合わせて厳密な配色が施されているが、とりわけ注目はピジョンブラッド(pigeon blood/深く濃い赤)。デル・トロが「母親の色」と定義した赤だ。本作品は原作小説の構成を踏襲し、ヴィクターの物語と怪物の物語の二章構成となっており、前者でもっとも注目すべき色がピジョンブラッドである。この赤はヴィクターの母親の場面で強烈な印象を残す。彼女が出産で命を落とした時、ヴィクターの服に血のついた手形が残る。その後、赤のモチーフは幾度となく画面に現れ、ヴィクターと母親の親密な関係と、彼女の死が彼の人生に与えた深い影響を想起させる。ネクタイの赤、赤いシーツ、研究所の赤いライトに至るまで、死によって大切なひとを失った絶望の色は常に彼と共にある。それがヴィクターの、不老不死を執拗に追い求める原動力となっているのだ。その時々で表情を変える赤の再現が、4K HDRでどのように再現されるか、乞うご期待である。

画像3: フィジカルメディアを所有するということは、ある意味で『華氏451度』(レイ・ブラッドベリのディストピアSF小説)にも通じるような、重大な責任を伴う行為だ。もしあなたが愛する映画の4K UHDやブルーレイ、DVDなどを所有しているなら、あなたは未来の世代に向けて、それらの映画を預かり、守り続ける「守護者」となる。 ギレルモ・デル・トロ

本作品の音響デザインと音楽は、ゴシック小説の世界観を現代の音響技術で再現したものだ。生と死、情念、エゴ、宗教的畏怖、圧倒的な自然の恐怖・・・ゴシック小説の中核を音響・音楽的にアプローチし、ドルビーアトモス・サウンドトラックの中で編み上げたのである。音響効果に関しては(音楽のアプローチを打ち消すように)周波数帯域を占有し過ぎたり、耳障りな効果音を長々と使うような過剰な演出を避けつつ、意図した音を厳選するなど細心の注意が払われている。例えばヴィクターが使っている道具や器具の共鳴音、切断音。不快感を覚える程度の肉の音だけが響き、肉が潰れるような効果は排除、切り裂く音だけに集中させている。常に心掛けられているのは、音のシンプルな表現だ。静寂。環境音。氷。嵐。雷鳴。マスケット銃から小便の音に至るまで、重層的かつ精巧精緻に1音1音を作り上げ、さらにそこから「余分」を排除、削ぎ落しているのである。

画像4: フィジカルメディアを所有するということは、ある意味で『華氏451度』(レイ・ブラッドベリのディストピアSF小説)にも通じるような、重大な責任を伴う行為だ。もしあなたが愛する映画の4K UHDやブルーレイ、DVDなどを所有しているなら、あなたは未来の世代に向けて、それらの映画を預かり、守り続ける「守護者」となる。 ギレルモ・デル・トロ

Victor Frankenstein: "In you, I have created something truly horrible."
The Creature: "Not something! Someone!"

一方で、音響デザインと音楽は、怪物がSOMETHING(何か)からSOMEONE(誰か)へと変化していく過程を追うためのサウンド・ストーリーテリングとして明確に用いられている。とりわけ怪物の声。その声には聴覚的な発達曲線が明確に示されている。動物的なうなり声や激しい野生のノイズを幾層も重ねた、誕生直後の異質なSOMETHINGとしての響き。次第に知性を得るにつれて異質なノイズの層が剥ぎ取られ、その響きは内なる意識を反映し成熟するかのように(演じるヤコブ・エロルディの)生身の肉声の比率が増えていく。声の構成が変わること自体が、人間性の獲得というテーマを象徴しており、もっとも重要な音響デザインとなっている。

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声だけだはない。撮影監督ローストセンが構築した自然空間や建築空間には、音響的な質感を用いて心理状態を投影。色彩と音響デザインの関係性も然りで、怪物とヴィクターの精神的・肉体的な変化を共感覚的に表現、没入させるために完全に連動しているのである。例えば序盤。青と白が描く極寒の世界に響く、強迫的で、あらゆる感情を拒絶する効果音。色と音が伝える孤独感は、存外に深い。第二章になり、怪物の声が成熟していくと、画面からクールトーンが失われ始め、暖色を軸としたウォームトーンに満たされていく。それはまるで人間の体温を感じさせる絵画のようだ。魂の色の変化として描音されるサウンドトラック、存分に楽しまれたい。

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アレクサンドル・デスプラのスコアも興味深い。キリスト教における赦しと裁きの葛藤を表現する重要な精神的音響装置として機能しており、キリストの偶像として生み出された怪物のモチーフとして、繊細で純粋なソロ・バイオリンの音色(演奏エルドビョルク・ヘムシング)が与えられている。怪物がついに目を覚まし、初めてその肉体を動かそうとする決定的な瞬間を迎えると、それまで鳴り響いていた楽曲がシャープ・カットアウト。続くバイオリンの音色によって、怪物が(原作小説にあるルシファーの要素を排した)神の愛を乞う無垢な存在であることを象徴するのである。一方、ヴィクターのメインテーマはエレガントな7音のモチーフで構成されている。だがデスプラは不気味に響くパイプオルガンと、地を這うように響く低音の電子パルスを潜ませてみせた。ご存じのようにパイプオルガンは教会の象徴であり、同時に神の絶対的な視線を想起させる。ルシファーの要素を一身に纏ったヴィクターの狂気と愚行、すなわち神に背く行動を重ねるたびに、オルガンと重低音が激しさを増し、神の裁きを象徴するかのように鳴り響くのである。

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DIRECTOR-APPROVED 4K UHD + BLU-RAY SPECIAL EDITION FEATURES
FOUR-DISC (TWO 4K UHD BLU-RAY/TWO BLU-RAY with the film and special features)COMBO PACK RELEASE

  • 4K DIGITAL MASTER OF THE THEATRICAL VERSION OF THE FILM
  • NEW 4K DIGITAL MASTER OF FRANKENSTEIN: THE REBORN CUT, a new 158-minute extended director's cut of the film
  • HDR PRESENTATION OF THE FILMS(DOLBY VISION / HDR10 COMPATIBLE)
  • DOLBY ATMOS SOUNDTRACKS(BOTH VERSION)
  • New audio commentary on The Reborn Cut, featuring director Guillermo del Toro
  • The Anatomy Lesson: Director's Cut, a new documentary on the making of the film
  • The Parlour, a collection of conversations on craft featuring del Toro; actors Jacob Elordi, Mia Goth, and Oscar Isaac; cinematographer Dan Laustsen; production designer Tamara Deverell; costume designer Kate Hawley; and creature designer Mike Hill
  • Q&As moderated by filmmaker Martin Scorsese and musician Patti Smith
  • Interview with composer Alexandre Desplat conducted by film-music scholar Jon Burlingame
  • Trailer
  • English subtitles for the deaf and hard of hearing and English descriptive audio
  • PLUS: An essay by scholar and author Christopher Frayling

Released: OCT 27, 2026
List Price: $59.95 USD(4K UHD + BLU-RAY 4-DISC SET$49.95 USD (BLU-RAY 2-DISC)

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タイトルフランケンシュタイン
2025年
監督ギレルモ・デル・トロ
製作ギレルモ・デル・トロ J・マイルズ・デイル スコット・ステューバー
原作メアリー・シェリー
脚本ギレルモ・デル・トロ
撮影ダン・ローストセン
美術監督タマラ・デヴェレル
衣装デザインケイト・ホーリー
音楽アレクサンドル・デスプラ
出演オスカー・アイザック ジェイコブ・エローディ ミア・ゴス クリストフ・ヴァルツ フェリックス・カマラー チャールズ・ダンス デヴィッド・ブラッドリー ラース・ミケルセン クリスチャン・コンヴェリー ニコライ・リー・コス カイル・ゲイトハウス ローレン・コリンズ ソフィア・ガラッソ

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アカデミー賞2025年
☆ 受賞美術 衣装デザイン メイクアップ&ヘアスタイリング
★ ノミネート作品 助演男優 脚色 撮影 作曲 音響

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GONE WITH THE WIND will be available to own on November 3, 2026 in a 4K Ultra HD Collector’s Edition, 4K UHD Steelbook, along with a standard 4K UHD Blu-ray and Digitally.

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