魅力的なネットワークオーディオ関連コンポーネントで、日本で存在感を急速に高めているWiiM。手頃な価格と高機能を両立し、オーディオファンのみならず幅広いユーザー層を獲得していることでも知られている。しかし、その成功の背景には単なるコストパフォーマンスの追求だけではない、独自の開発思想とソフトウェア重視の企業文化がある。今回、WiiMでカスタマーコミュニケーションを担当するRyan Sloaneさんに話を聞いた。
WiiMとは「Wi-Fi Internet Music」
まず、WiiMブランドのコンセプトを教えてください。
私たちの根底にあるのは、「素晴らしい音を誰もが楽しめるようにしたい」という考え方です。そのために外観と使い勝手の両方を兼ね備えた文字通りスマートなデザインの製品を誠実な価格設定で作る、それがWiiMというブランドのコンセプトになります。
元々われわれはLinkplay Technologyという、グーグルやブロードコム、インタービデオ、ハーマンなどの出身の経験豊富な技術起業家たちによって2014年に設立された会社が母体で、世界各国のオーディオブランドのネットワーク系のソリューション開発のビジネスを行なってきました。2023年にそのノウハウ、技術を活かし、自らのオーディオコンポーネントを作るブランドとして、WiiMを立ち上げ、以後様々なモデルを展開しています。本社はカリフォルニア州ニューアークで、中国・上海や深圳などに拠点を構えています。
会社の出自からもおわかりいただける通り、製品開発に力を入れている会社であり、ネットワーク技術やソフトウェア開発に強い人材が多く、それらを含めて現在、社内の8割近くがエンジニアという構成です。
WiiMというブランド名の由来は?
WiiMとは「Wi-Fi Internet Music」に由来する造語です。音楽配信をもっと身近に、もっと使いやすくしたいという思いが出発点だと聞いています。われわれ自身は「ウィム」という発音で呼んでいますが、日本では「ウィーム」という発音が定着してしまったようですね。日本での販売パートナーのエミライと相談して、そのままにしておこうか、ということにいまはなっています(笑)。

カスタマーコミュニケーション担当のRyan Sloaneさん
WiiMは、ハードウェアではなく「体験」をお客さまに提供します
WiiM製品の大きな魅力は、ハードウェアの作り込みに加えて、ソフトウェアの完成度の高さが挙げられますね。
ありがとうございます。私たちは単に性能の高いハードウェアを売りたいわけではありません。購入後も長く使っていただける製品を目指しています。だからソフトウェアの完成度を追求し、必要なアップデートが的確にできるようにすることも非常に重視しています。
アップデートの頻度も多いと思います。製品によっては、数週間単位で機能追加や改善を行なっています。新しい音楽サービスへの対応、ルーム補正機能の追加、バグ修正などを継続的に提供するのがわれわれのポリシーです。
わたしはカスタマーコミュニケーションという役職に就いていますが、ファンコミュニティやSNSなどからのフィードバックも積極的に活用する役割を担っています。そうしたコミュニティやユーザーから寄せられる意見を開発チームへ直接伝え、アップデートのテーマとして常に検討し、対応しています。
WiiMはアプリの使いやすさが魅力だと思いますが、なりよりも日本語対応の完成度の高さにはいつも驚きます。
ありがとうございます。日本語対応も含めて、アプリの言語対応は、単なる言語変換の問題だとは考えていません。WiiMでは、どのような言語にも関わらず、製品自体の品質そのものを左右する極めて重要な要素であるという発想で開発、作り込んでいます。
とりわけ日本語の対応は重視しています。というのも、日本のユーザーは非常に目が肥えていて、UI(ユーザーインターフェイス)画面でのわずかな違和感や文字のズレまでポジティブな姿勢で指摘してくださいます。WiiMにとって日本語の対応がしっかり出来ているかは「Proof of Concept」、つまり「自分たちの考え方が正しいかを証明する」、そんな試金石でもあります。わたくし自身のカスタマーコミュニケーションという役職においても大きな役割のひとつです。

WiiM AMP Ultraに、2本のWiiM SoundとWiiM Sub Proを組み合わせたイメージ
改めてお伺いしますが、WiiMの強みはどこにあると考えていますか。
やはりソフトウェアです。変化が激しいストリーミングサービスでの新しい機能の対応やサポートを継続的に行なっていますし、HDMIに対応しているWiiM AMP、WiiMAMP PRO、WiiM AMP Ultraなどは、テレビメーカーの仕様変更や最新モデルの対応を継続的に検証し、問題なく使えるようにソフトウェアの開発を常に続けています。
前述した通り、私たちはハードウェアメーカーであると同時に、ソフトウェアメーカーでもあります。だから製品発売後の改善やアップデートを当然のことだと考えています。別の言い方をすれば、お客さまがわれわれの機器をできるだけ長く使える環境を維持していることも、われわれの製品自体の大きなセールスポイントとして受け取っていただきたいのです。
最近は低価格帯で性能を重視した、いわばコストパフォーマンスの高さで話題を集めても、短期間でオーディオブランド自体が市場から姿を消したり、製品がソフトウェア的に使えなくなったりするケースも少なくありません。われわれは、そうした存在とは違う、と明確にお伝えしたいですね。日本での販売パートナーであるエミライと連携することで、日本でも長くお客さまといい関係でお付き合いできるよう取り組んでいます。
WiiM初のサウンドバーWiiM BAR登場
WiiM AMPシリーズ3製品は、テレビとの連携がスムーズに果たせるHDMIARC対応モデルとして
HiVi読者からも高い評価を得ています。
ありがとうございます。WiiM AMPシリーズは、日本のみならず世界各国のユーザーで好評です。テレビと組み合わせて使うお客さまが非常に多く、その先にあるニーズも見えてきました。
その流れで開発したのが、われわれ初のサウンドバーとなるWiiM BARです。ウィーンで開催されたオーディオイベント「ハイエンド」に続き、ここ日本でのOTOTENイベントで参考出品し、お陰様でたいへん好評いただいています。多くのユーザーから「テレビと組み合わせるならサウンドバーも欲しい」という声が多く寄せられ、それが開発の契機となった製品なんです。
中央にある円形のタッチディスプレイで様々な操作ができることが外観上の特徴で、製品コンセプトは「音楽をしっかり楽しめるサウンドバー」。現在、市場にはたくさんのサウンドバーがありますが、「映画をよりよく楽しむ」ことをターゲットにしている製品が多いと思います。WiiM BARは、映画ももちろん楽しめますが、なによりも音楽ストリーミングサービスを中心にして、非常に高音質で音楽が楽しめることを重視した製品となります。

WiiM初のサウンドバー。幅は106cm
WiiM BAR単体でも、内蔵する9基のユニットと2基のアップファイアリング(上向き)スピーカー、4基のパッシブラジエーターでドルビーアトモスやDTS:Xを3.0.2再生できますし、既存のスマートスピーカーWiiM SoundあるいはWiiM Sound Liteをワイヤレスサラウンドスピーカーとして組み合わせた拡張再生にも対応しています。さらにサブウーファーWiiM Sub Proも追加すれば、5.1.2という高度な再生も可能です。
アプリを使った「RoomFit」機能も備えており、サラウンドシステムとしての音場補正調整もシンプルに実現できます。現在、アメリカなどでは479USドルのプライスにてプレオーダーを開始、出荷の準備している状況です。日本での展開も近々アナウンスできると思いますので、ご期待ください。

テレビの前に置かれているのがWiiM BAR。ラックの下には、ワイヤレス接続できるサブウーファーWiiM Sub PROの姿も見える
インタビューを終えて〜WiiMの躍進はまだまだ止まらない
躍進を続けているオーディオブランドWiiM。彼らの実態は、「優れたハードウェアを作るメーカーがソフトウェアに力を入れている」というよりも、むしろ「ソフトウェア企業が、快適かついい音を徹底的に追求する、そんな発想でオーディオコンポーネントを作るメーカー」であることが明確になった。
従来のオーディオ業界では、製品は完成した状態で市場に送り出されることが当然の発想であったが、しかしWiiM製品は違う。製品発売を出発点と考え、市場でのリリース後も継続的なアップデートによって機能や使い勝手を向上させ進化するコンポーネントを指向する。その姿勢はアプリの完成度や日本語ローカライズにも色濃く表れている。
特に興味深かったのは、日本市場を単なる販売先ではなく、「品質を検証するための市場」と位置付けている点だ。日本のユーザーの厳しい視点を積極的に受け入れ、製品改善につなげていく姿勢には好感が持てる。
さらに「音楽が楽しめるサウンドバー」という発想で開発されたというWiiM BAR。OTOTENの会場で鳴らしていた音を聴く限り、相当優れたパフォーマンスが期待できそうだ。優れた使い勝手を備えたネットワークオーディオコンポーネントを続々と生み出したWiiMが、WiiM BARによってホームシアターのニュースタイルを作り出す構えだ。WiiMの躍進はまだまだ止まらない。
(取材・まとめ/HiVi編集部・辻 潔)

本国のホームページで紹介されている再生イメージ。WiiM BARは、日本でもリリースされているスマートスピーカーWiiM Soundを組み合わせることでワイヤレスサラウンドにも再生する

