①「クライスラー:愛の喜び(ディアンス編)/福田進一」 192kHz/24ビット

②「Marianna Martines:Keyboard Concerto in G Major: I. Allegro/Idith Meshulam Korman(pf)、Oxford Philharmonic Orchestra」 96kHz/24ビット

③「Aftab Darvishi:Likoo, for Violin Solo/アンネ=ゾフィー・ムター」 192kHz/24ビット

④「マーラー:交響曲第4番:第1楽章/エッシェンバッハ指揮ヴェルビエ祝祭管弦楽団」 48kHz/24ビット

⑤「The Great Migration/Yaya Bey」 44.1kHz/24ビット

⑥「My Foolish Heart/ビレリ・ラグレーン」 96kHz/24ビット

⑦「おいしい水(2026 version)/小野リサ」 96kHz/24ビット

⑧「かわさき(feat. すずめのティアーズ)/中西レモン」 96kHz/24ビット

今回紹介する楽曲のプレイリストはこちら>

https://open.qobuz.com/playlist/63843672

 

 ①素晴らしく雰囲気が良く、同時にもの凄くハイファイ。指の移動ノイズまで実に明瞭だ。コードを構成する一音一音が分解して見えるほどの高解像度。粒立ちの良いアルペジオや粒が揃ったトレモロが心地好い。美しい低音で歌うメロディに軽やかに絡む高音のオブリガートが素敵だ。中間部のフラジオレットも鮮やか。空間性が濃密で、響きが美しく暖かい。空気が透明であり、直接音も間接音も豊潤。さすがは超ワイドレンジのデトリック・デ・ゲアールマイクを駆使したマイスターミュージックの名録音。

 ②まるでモーツァルトのような典雅で麗しい、ピアノコンチェルト。音の進行が快適で、旋律とハーモニーも5月晴れのような爽やかさ。音調も曲調と同じ方向で、清涼にして、耳をくすぐる気持ちよさ。センターに陣取ったピアノを室内オーケストラが囲み、好適な音像バランスで、感動的に、ラブリーに音楽を進行させる。録音も極上。特に第1ヴァイオリンの倍音の豊かなこと。細やかな階調感が耳に優しい。

 ③アンネ=ゾフィー・ムターの新作『East Meets West』から、イラン系オランダ人作曲家アフターブ・ダルヴィーシの喪失や別れを歌った無伴奏ヴァイオリン作品「Likoo(リクー)」。アンコールや祈りの場面で演奏される小品だ。中東的な旋律が現代性を纏った激しく、速く、そしてくねくねとしたバッセージには、フラジオレット、アルペジオ、重音……とヴァイオリンのハイテクが至るところに散りばめられている。過去からのバッハ的、ロマン的な要素も濃い。音調は高解像度だが、細部をきりきりとは立てずに、あるがままの生成的な進行。静粛な空間に飛び交う、かそけき弱音が美しい。空間性がたいへん豊かで、センターのヴァイオリンから孤空に発せられる音が空間に精妙に拡散していく様は、微小信号再現が得意なハイレゾならではの美質。

 ④第1楽章冒頭。鈴、フルートに乗った左の第一ヴァイオリンの精妙さ。それとは対照的に右のチェロがエネルギッシュに、ヴィヴィッドに奏し、次に奥からの木管が存在をアピール。室内楽的な明晰さ、クリアーさ、そして華麗な倍音感がたいへん心地好い。各楽器の音色が美しく、レンジも広い。エッシェンバッハがアゴーギクやダイナミクスも含め、濃厚な表情をオーケストラに与えていることが、名録音にてしっかりと聴き取れる。空間感も素晴らしい。音像位置が左右、奥行方向に正確に再現され、互いの有機的な、そして音響的な繋がりがたいへん濃い。帯域バランスは爽やかですっきりとしているが、音楽的な表情は濃密な、まさにエッシェンバッハ節だ。2018年7月23日のヴェルビエ音楽祭でのライヴ録音。

 ⑤N.Y.出身でワシントンで活動するシンガーソングライター、Yaya Beyの最新作から。凄くオンマイクで、センターのダブルトラックの歌声の実在感が強烈。メッセージ力が強い。冒頭はヴォーカルとコーラスのみだが、次第にベース、ミュートトランペット、キーボードが加わり華やかに、驚速のパーカッションも参加し、さらにゴージャスに。これらの全ての音像が、それぞれしっかりと輪郭を持ち、エッジも鋭く、存在を強烈に主張する。でも、最も印象的なのはセンターに陣取るYaya Beyのディープな高剛性ヴォーカルだ。

 ⑥ビル・エヴァンスで有名なスタンダード「My Foolish Heart」が、新しい命を得て、新鮮に聴けた。センターのビレリ・ラグレーンのセミアコギターの歌いが濃く、右側でしっとりと演ずるピアノも表情豊か。ベースのピッチカートによるメロディ弾きは、トレモロも加わり、心に染みいる。録音は抜群に素晴らしい。各楽器の存在がクリアーで、透明度も高い。確実な楽器音像を糾合し、ゴージャスにして濃密な空間が形成されている。各楽器の表情が明瞭だ。

 ⑦19年ぶりの再録。小野リサの魅力の高域のかすれまで、細やかに聴ける。録音は鮮烈。歌のボディがリッチで、オンマイクの眼前感。2つのスピーカー間の揺るぎなく安定した音像から味わい深い歌声が流れ出る。聴き手を包み込む爽やかなヴォーカルと弾力的なピアノのデュエットが心地好い。各音像の描きも的確。まさに現代的な高解像ボサノヴァ。

 ⑧中西レモンは、民謡・芸能の研究家であり歌手。女性デュエット「すずめのティアーズ」をバックに、日本の伝統曲を西洋音楽的な解釈にて、「かわさき」(岐阜県郡上市の郡上おどりの郡上節)を歌う。西洋のハーモニーに日本音階、それも短音階旋律をのせる試みが、たいへんユニークで、不思議に決まっている。こうした試みは世界的に注目され、中西レモンの独特な節回しにハマるファンが急増しているという。かつて外山雄三の日本民謡のクラシック編曲『管弦楽のためのラプソディ』が世界的にヒットしたが、それと軌を1つにする現代版「民謡ラプソディ」だ。共演のすずめのティアーズの空虚5度の尖ったハーモニーも渋い。

候補として試聴した曲のプレイリストはこちら>

https://open.qobuz.com/playlist/63117160

 

>本記事の掲載は『HiVi 2026年夏号』

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