デノンから、同社AVアンプの新ラインナップが2モデル発表された。両モデルともドルビーアトモス、DTS:Xのイマーシブオーディオ再生に対応しており、発売は6月26日を予定している。

AVR-X3900H ¥279,400(税込) 9.4ch対応
AVR-X2900H ¥202,400(税込) 7.2ch対応

画像: 「AVR-X3900H」

「AVR-X3900H」

 上位機のAVR-X3900Hは “最初のハイエンドAVアンプ” を、弟機のAVR-X2900Hは “AVアンプで始める初めてのオーディオ” を目指しており、これまでのAVアンプの音質概念を変えるべく企画されている。

 そもそも現代のAVアンプは、サラウンドフォーマットや4K/8Kといった様々な信号に対応するため、求められるスペックもきわめて厳しくなっている。そのため製品数が減少傾向にあるが、デノンはそんな中にあっても充実したラインナップを誇っている。さらに今回の2モデルの登場で、中堅ゾーンがいっそう充実することになる。

 そんな新製品はAVR-X3900H、AVR-X2800Hの後継機という位置づけで、それぞれ様々な進化が盛り込まれている。

 まずデノンが目指す “Vivid & Spacious” サウンドにより近づくべく、D/Aコンバーターを見直して、電流出力型DACチップを採用した。あわせて周辺回路、カップリングコンデンサーも再検討して交換、I/V変換部には薄膜抵抗を採用している。これらの改良により、プリアウトのS/Nが15dB改善されたという。

画像: 「AVR-X2900H」

「AVR-X2900H」

 ブロックコンデンサーも新規に開発した。コンデンサーの電解紙にはトップモデル「AVC-A1H」に搭載されているものと同じ材料を使用し、固定剤を使わないといった構造もAVC-A1Hを踏襲する。内部の箔もAVC-A1Hと同じ素材で、引っ張り強度、巻きのテンションも微調整して仕上げたそうだ。これらの細かい仕様は、デノンとパーツメーカーとの長い信頼関係があって実現できたものという。

 パワートランジスターも新しいパーツに変更している。なお従来モデルのAVR-X2800HとAVR-X3800Hでは別々のパワートランジスターを搭載していたが、今回は2モデルとも同じパーツになった。つまり、AVR-X2900Hはパワーアンプ部の底上げも達成されているわけだ。

 そのAVR-X2900Hは、電源トランスもリニューアルされている。これは “7.1ch対応AVアンプで最高の音” を目指した結果で、電源トランス自体もAVR-X2800Hから変更され、さらに珪素合板とショートニングを追加し、ノイズ漏れを最小化している。メイントランスには、振動制御プレートも追加されている。

画像1: デノンから、“最初のハイエンドAVアンプ” を目指した「AVR-X3900H」が登場。弟機の「AVR-X2900H」は、“AVアンプで始める初めてのオーディオ” がコンセプト

 ここまでが音質面での主な進化点だが、もちろん機能面でも新たな提案は行われている。

 まずリビングにサラウンドシステムを設置しようとした場合に問題になりやすいケーブルの引き回しを解消すべく、ワイヤレスサラウンド機能に対応した(後日のアップデートで対応予定)。

 これは、サラウンド、またはサラウンドバックスピーカーに信号をワイヤレス伝送できるもので、昨日発売された新世代DENON HOMEシリーズ(DENON HOME 200/400/600)との組み合わせで実現できる。DENON HOME 200なら2台、DENONHOME 400/600なら1台でサラウンドやサラウンドバックを受け持たせることができるわけだ。なお本機能はトップスピーカー用ではなく、あくまでサラウンドまたはサラウンドバック用とのことだ。またサラウンドバックを有線接続した場合にサラウンドをワイヤレスで駆動することはできないので注意していただきたい。

 ワイヤレスサラウンド機能の設定はHEOSアプリから簡単に解除/再接続できるので、普段はDENON HOMEシリーズでスマホなどの音楽を楽しんで、映画などを観る場合だけサラウンドスピーカーとして使うといったことも簡単にできる。リビング等で活用するのにもぴったりの機能といえそうだ。

画像2: デノンから、“最初のハイエンドAVアンプ” を目指した「AVR-X3900H」が登場。弟機の「AVR-X2900H」は、“AVアンプで始める初めてのオーディオ” がコンセプト

 もうひとつ、AVR-X2850Hで初搭載されたチャンネルレベル表示機能にも対応した。各スピーカーの出力レベルをオンスクリーン表示してくれるもので、サラウンドを解析的に聴きたいといった方にも好評を博している。本機能は、リモコンのオプションボタンで簡単にオン/オフできるのも嬉しいだろう。

 上位モデルのAVR-X3900Hに初搭載されたのは、チャンネルエキスパンダー機能だ。これはドルビーアトモス音声の再生時に、デノン独自の処理を加えてチャンネルを拡張、すべてのトップスピーカーから音声を再生することで、つながりのいい音場を構築してくれる。

 ドルビーアトモスの場合、スピーカー設定の組み合わせによっては特定のトップスピーカーから音が出ないことがあるという(トップスピーカーにフロントハイトとトップミドルを選んだ場合、フロントハイトは鳴らない、など)。チャンネルエキスパンダー機能では、そういったケースでもフロントとトップミドルの信号をミックスしてフロントハイト用の信号を創出してくれる。

 デノンでは独自アルゴリズムの開発に約4年かけたとかで、再生時には “ちょっとだけ鳴らす” ことが空間のつながりにも効果的という結論に至っている。再生時の効果はLow/Highを準備しているので、再生する空間の大きさに合わせて選んでほしいとのことだ。ちなみに5.1chからアップミックスした信号についてはこの機能は動作しない。

画像3: デノンから、“最初のハイエンドAVアンプ” を目指した「AVR-X3900H」が登場。弟機の「AVR-X2900H」は、“AVアンプで始める初めてのオーディオ” がコンセプト

 同じくAVR-X3900Hは、センターチャンネルバイアンプモードも搭載する。内蔵された9chパワーアンプを活用し、フロントL/Rに加えてセンタースピーカーもバイアンプ駆動に設定できるもので、大型センタースピーカーをお使いの方など有効に活用できるはずだ。

 映像信号は、8K/60pや4K/120p、HDR10+、Dolby Visionのパススルーが可能で、1440pやAMD FreeSyncといったゲーム映像にも2モデルとも対応済。ゲーム映像の動きもなめらかに再現する。

 近年話題の音楽ストリーミングサービス機能にはHEOSで対応、QobuzやSpotify、Amazon Musicなどが楽しめる。ミュージックサーバーやUSBメモリーに格納した音源も再生可能で、DSD 5.6MHzにも対応している。

 その他の違いとしてはAVR-X3900HはIMAX Enhenced、Auro-3D、360 Reality Audioの再生も可能で、11.4chプロセッシング機能(プリアウト)も備えている。

画像: デノン本社の視聴室で、両モデルの音を確認

デノン本社の視聴室で、両モデルの音を確認

 新製品内覧会で両モデルの音を体験できた。再生機器はデノン視聴室常設のB&W製スピーカーを使っている。

 AVR-X2900Hは、5.2.2に設定。まずはアナログ接続による2ch再生で『フォープレイ』の「バリ・ラン」を聴く。組み合わせたスピーカーが大型モデルなので、きちんとドライブできるのかという不安もあったが、楽器も伸びやかに響くし、低域もしっかり再現できている。スネアなどの再現もていねいだ。

 続いて映画UHDブルーレイで、『ワン・バトル・アフター・アナザー』のカーチェイスシーンを見せてもらう。不気味なBGMが緊迫感を盛り上げるし、3台登場する車のエンジン音もしっかり描き分けている。衝突シーンの音のインパクトは、思わず手に汗を握る。

 同じくUHDもブルーレイ『セッション』のラストシーンでは、演奏の空気感がダイレクトに伝わる。ドラムの細かな音までしっかり再現できているし、空調ノイズなどの環境音の再現も見事だ。

 上位モデルAVR-X3900Hはどうか。アナログ接続の2chから聴くと、「バリ・ラン」はよりマッシブになり、空間のS/Nがさらにアップしている。音の繊細さ、低音のキレも向上し、演奏をさらに身近に感じることが出来た。

画像: チャンネルレベル表示機能で再生中の信号レベルを確認した。上がチャンネルエキスパンダー・オフで、下がオンの状態。フロントハイト(FH)チャンネルの音が追加されているのがわかる

チャンネルレベル表示機能で再生中の信号レベルを確認した。上がチャンネルエキスパンダー・オフで、下がオンの状態。フロントハイト(FH)チャンネルの音が追加されているのがわかる

 UHDブルーレイ『ワン・バトル〜』では、ひとつひとつの音の粒立ちが明瞭になり、BGMのビートが上がってくる。音の密度感が上って、空間描写も緻密になっていた。衝突の怖さはもちろん、その後に訪れる静寂、風の音も一層印象的に感じられた。

 『セッション』も濃密な音場が展開され、ドラムのパワー、緩急の表現もアップしている。主人公のアンドリューと指揮者のテレンスがアイコンタクトを交わすシーンでも、それぞれが込めた思いや執念まで音で再現しているようだ。

 もうひとつ、チャンネルエキスパンダー機能を、UHDブルーレイ『トップガン マーヴェリック』のダークスター発進シーンで確認した。トップスピーカーをフロントハイトとトップミドルに設定した5.2.4システムで、ドルビーアトモス音声を再生する。ダイレクトモード(フロントハイトは鳴らない)でも包囲感はきちんと再現できているし、ダークスターが頭上を通過する際の迫力も充分感じる。

 ここでオートモードに切り替えて、チャンネルエキスパンダー機能を「強」にセットする。トップミドルの音は変わらないそうだが、フロントハイトから音声が再生されることで、ダークスターが通り過ぎるシーンでは前方にスムーズに音が抜けていく。音像も高い位置に定位していて、映像との馴染みもいい。担当者氏は “ちょっとだけ” 音を加えていると話していたが、その効果は “ちょっとだけ” ではなさそうだ。

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