医師で作家の長尾和宏による同名小説が原作の映画『安楽死特区』は、近未来の日本で「安楽死法案」が可決され、国家主導で導入された制度のもと、人間の尊厳、生と死、そして愛を問う衝撃の社会派ドラマ。
昨年公開された同じ高橋伴明監督×毎熊克哉主演の前作『「桐島です」』は、第80回毎日映画コンクール4部門(日本映画大賞、毎熊克哉(主演俳優賞)、梶原阿貴、高橋伴明(脚本賞)、内田勘太郎(音楽賞))にノミネートをしており、新作である本作は、月イチ!“ぴあテン”ランキング 1月公開の「これからみたい」映画ベストテンで4位に選ばれている。
1月23日(金)より新宿ピカデリーほかにて公開されるのを前に、完成披露舞台挨拶が開催され、長尾の他、回復の見込みがない難病を患い、余命半年と宣告されたラッパー・酒匂章太郎を演じた毎熊克哉、彼のパートナーでジャーナリストの藤岡歩を演じた大西礼芳、「安楽死特区」の特命医・鳥居幸平を演じた奥田瑛二、本作プロデューサーで、本作監督の高橋伴明の妻・高橋惠子が登壇した。
冒頭、高橋伴明監督の妻の高橋惠子は、「今回はプロデューサーという立場で参加させていただいています。本来ならばここに高橋伴明が登壇するはずですけれど、軽い脳梗塞で今入院しております。回復に向けて頑張っております。撮影は寒い時期でしたが、命を削って撮影に臨んでいたような気もします。安楽死に賛成、反対というのを超えて、一人の命、人間の生き様、自分が何を生きるのかということを感じてもらえればいいなと思います」と挨拶。
原作・製作総指揮の長尾は、在宅医として2500人以上の看取りを経験してきた。同じく高橋伴明監督が映画化した『痛くない死に方』(2020)は、尊厳死を描いた。尊厳死と安楽死の違いについて聞かれた長尾は、「尊厳死というのは自然な平穏死。在宅医療の現場では普通になりつつあります。安楽死というのは、医師が薬剤などを投与して、寿命を短くさせること。日本では殺人罪あるいは自殺幇助罪に問われて、牢屋に入っている医師もいます。海外では認められている国が増えています。アンケートをとると日本国民は8割が、安楽死に賛成で、テレビはスイスに渡って死を遂げた日本人たちを映し出す中、日本の中で議論が全然ないので、この映画をきっかけにと、小説そして映画になりました」と説明した。
毎熊は、同じく主演した高橋伴明監督の前作『「桐島です」』と比べての、伴明監督の印象を聞かれ、「より慎重だったという印象でした。人の生き死にを取り扱っているこの作品で、何個かある選択肢の中で、どれがいいんだというのを慎重に探って、自分ら(キャスト)のことを見ていたなという印象が『「桐島です」』より強いです。実際にスイスに行かれた方や難病の方が世界中に実際にいらっしゃって、僕も何人かお話を聞かせていただきましたけど、そういう想いや辛さを僕ももちろんですけれど、監督も背負って現場にいたんじゃないかなと思います」と吐露。
役作りに関して毎熊は、「リサーチはネットでできるけれど、そういうものよりももっと核になるものってなんなんだろうなと思うと、たかが90分とかですけれど、実際に声を聞いて、今までの人生でどういうことを感じたのかとかを聞いたことです。『今はお一人に聞かせてもらったけれどいっぱいいるんだな、自分はそういう役をやるんだな』という重みの方が核になりました」と、実際に難病の方々と話した重みについて語った。
W主演の大西は、「隣で病に苦しむ彼を見ながら、私(歩)はジャーナリストとしての想い・主張があって、シーンごとに気持ちが揺らいで揺らいで、恋人の私(歩)とジャーナリスの私(歩)の割合がシーンによってぐちゃぐちゃになったりするんです。演じるときは計算してやっていたわけじゃないんですけれど、撮影中は混乱しながら現場にいたような気がします」と複雑な心情の役と同じ想いをしたそう。
名匠・丸山昇一が書いた脚本の感想を聞かれ、「セリフがすごく面白くって。内容は、真剣に考えなくてはいけないことが書かれているんですけれど、登場人物たちは、すごく軽やかで、リズミカルに言葉を語っているんです。私が余貴美子さん演じる真矢さんを例えるセリフで、『言葉のつかみとか良好以上で粋だよ』っていうセリフがあるんですけれど、この映画はまさにそういう映画じゃないかと思います。伴明監督もそういう人だと思います」と話した。
大西はW主演の毎熊とのエピソードを聞かれ、「撮影が終わって打ち上げ後に、二人で帰ることになって、駅で『僕たちの代表作になるね』って言ってくださったんです。私たち必死に闘って生きたよね、とすごく嬉しくて」と話すと、毎熊は、「2024年にこういう非常に難しい役を二人で乗り越えて、やりきったので」と当時の心境を語った。
安楽死法案というのは日本には存在しないが、「安楽死が妥当かを審議する」5人の特命医の内の一人を演じるにあたって奥田は、「脚本がショッキングで面白いのと、自分に全く自信がないので、その中でどうやっていくかの難しさ」があったそう。「医師役は、尊厳死の映画(『痛くない死に方』)でも経験していますけど、安楽死は、危険なテーマであるのは間違いない。命を預かる一人の人間として、医師としては、自分の持っているコアなものを信じて、演じさせていただきました」とこの役を演じた際の覚悟を語った。
観客へのメッセージとして、長尾は、「この映画を見ていただいて、議論のきっかけになればと思います」と話し、奥田は「自分がどの年齢なのかや立場でも捉え方が違うと思うし、真摯に受け止めざるを得ない映画でした。親友の高橋伴明という監督がメガホンをとったわけですから、『あれ見てみろよ』と言っていただければ!」と話した。
大西は、「レジェンドみたいな人たちに足場を組んでいただき、支えていただきながら、なんとか演じることができました。そこから湧いてくるようなパワーみたいなものを感じ取って頂けるのではないかと思います。2026年の記憶に残る映画になってもらえたら嬉しいです」、毎熊は、「重たい題材なのかもしれないですけれど、観終わった後にそんなに重たい気持ちで劇場を出ないのではないかなと思います。2026年を自分もしっかり生きていこうというような映画になっているので、楽しんでください」とメッセージを送った。
【イントロダクション】
舞台は今から数年後の日本。欧米に倣って安楽死法案が可決した。それでも反対の声が多いため、国は実験的に「安楽死特区」を設置することに。
主人公のカップルは、回復の見込みがない難病を患い、余命半年と宣告されたラッパー・酒匂章太郎と、彼のパートナーでジャーナリストの藤岡歩。安楽死法に反対のふたりは、特区の実態を内部から告発することを目的に、国家戦略特区「安楽死特区」への入居を決意する。そこでふたりが見たものは、安楽死を決意した人間たちの愛と苦悩。医師たちとの対話を通じ、ふたりの心に微細な変化が訪れるが……。
監督は、『痛くない死に方』(2020)、『夜明けまでバス停で』(2022)、『「桐島です」』(2025)などの高橋伴明。脚本は、『野獣死すべし』(1980)、『一度も撃ってません』(2020)などの丸山昇一。名匠の初タッグが本作でようやく叶った。
章太郎役を務めるのは、『「桐島です」』(2025)の毎熊克哉。パートナー・歩役には『夜明けまでバス停で』の大西礼芳。特区の実態を告発するために突き進む歩が、章太郎の心境の変化に直面する様は、観る者の心を激しく揺さぶる。
末期がんに苦しむ夫と、夫と心がすれ違う妻を演じたのは、平田満と筒井真理子、認知症と診断され、死なせて欲しいと願う元漫才師役で余貴美子が出演。そして、「安楽死特区」の特命医を演じるのは、加藤雅也、板谷由夏、下元史朗、奥田瑛二。歌謡漫才のコンビであり余貴美子の妹役で友近、尾形の元妻役で鈴木砂羽が出演。また、シンガーソングライターのgb(ジービー)が毎熊克哉とラップを披露する。
人生の最期を自ら決断しようとする者と、国から命じられ苦悩しながらも安楽死に導く医師、それを見守る者―― 一体、死とは誰のものなのか? 制度と人間、理想と現実の狭間で揺れ動く人々の姿を描き、見る者一人ひとりに、重い問いを投げかける。明日、この国で現実に起こるかもしれない世界線を描いた衝撃作。
【あらすじ】
もしも日本で「安楽死法案」が可決されたら――。国会で「安楽死法案」が可決され、国家戦略特区として「ヒトリシズカ」と名づけられた施設が誕生。安楽死を希望する者が入居し、ケアを受けられるこの施設は、倫理と政治の最前線で物議を醸す存在となっていた。
回復の見込みがない難病を患うラッパー・酒匂章太郎(毎熊克哉)は、進行する病に苦しみながらも、ヒップホップに救いを見出し、言葉を紡ぎ続けていた。共に暮らすのは、チベットで出会ったジャーナリスト・藤岡歩(大西礼芳)。二人は、章太郎が余命半年を宣告された今も、安楽死に反対で、特区の実態を内部から告発することを目的に、「ヒトリシズカ」に入居する。
施設には、末期がんに苦しむ池田(平田満)とその妻の玉美(筒井真理子)、認知症を抱え、完全に呆けないうちに死なせて欲しいと願う元漫才師の真矢(余貴美子)など、それぞれに事情を抱えた入居者たちが暮らしていた。
章太郎の身体は急速に衰え、言葉さえままならなくなり、章太郎は歩に相談もなく、「安楽死を望みます」と考えを一変。歩は、池田の主治医の鳥居(奥田瑛二)の他、章太郎の主治医の尾形(加藤雅也)、三浦(板谷由夏)ら特命医それぞれの想いにも触れ、命と死に真摯に向き合うことを迫られる。
映画『安楽死特区』
2026年1月23日(金) より 新宿ピカデリー ほかにて公開
毎熊克哉 大西礼芳
加藤雅也 筒井真理子 板谷由夏 下元史朗
鳥居功太郎 山﨑翠佳 海空 影山祐子 外波山文明 長尾和宏 くらんけ
友近 gb 田島令子 鈴木砂羽
平田満 余貴美子 奥田瑛二
監督:高橋伴明
原作:長尾和宏 小説「安楽死特区」ブックマン社刊
脚本:丸山昇一 製作総指揮:長尾和宏 製作:小林良二 プロデューサー:小宮亜里 高橋惠子 音楽:林祐介 撮影監督:林淳一郎 撮影:西村博光 照明:豊見山明長 録音:臼井勝 美術:黒瀧きみえ 装飾:鈴村髙正 島村篤史 ヘアメイク:佐藤泰子 スタイリスト:野中美貴 衣裳:津田大 江口久美子 VFX:立石勝 スクリプター:阿保知香子 編集:佐藤崇 助監督:毛利安孝 野本史生 稲葉博文 音楽プロデューサー:和田亨 ラインプロデューサー:藤原恵美子 制作協力:ブロウアップ 配給:渋谷プロダクション
主題歌 「Oh JOE GIWA」作詞:丸山昇一、gb 作曲編曲 林祐介
製作:「安楽死特区」製作委員会(北の丸プロダクション、渋谷プロダクション)
配給:渋谷プロダクション
2025年/日本/カラー/シネマスコープ/5.1ch/日本語/129min
(C)「安楽死特区」製作委員会
※大西礼芳さんのインタビューは公開に合わせて公開します。お楽しみに。


