4K UHD BLU-RAY SHORT REVIEW - ALTERED STATES 短評

タイトルアルタード・ステーツ/未知への挑戦
1980
監督ケン・ラッセル
製作ハワード・ゴットフリード
製作総指揮ダニエル・メルニック
原作パディ・チャイエフスキー
脚本パディ・チャイエフスキー(シドニー・アーロンとして)
撮影ジョーダン・クローネンウェス
特殊メイクディック・スミス
音楽ジョン・コリリアーノ
出演ウィリアム・ハート ブレア・ブラウン ボブ・バラバン チャールズ・ヘイド タアオ・ペングリス チャールズ・ホワイト=イーグル ドリュー・バリモア
画像: When viewing this trailer, please set resolution to 1080p/HD

When viewing this trailer, please set resolution to 1080p/HD

TitleALTERED STATES:THE CRITERION COLLECTION
ReleasedOct 21, 2025 (from Criterion)
Run Time1:42:54.501 (h:m:s.ms)
PackagingSlipcover in original pressing/New cover by Richey Beckett
CodecHEVC / H.265 (Resolution: Native 4K / DOLBY VISION / HDR10 compatible)
Aspect Ratio1.85:1
Audio FormatsRemastered English DTS-HD Master Audio 2.0 surround(48kHz / 24bit), English DTS-HD Master Audio 5.1(48kHz / 24bit)
SubtitlesEnglish SDH
Video Average Rate85427 kbps (HDR10) / 11036 kbps (DOLBY VISION 12.9 %)
Audio Average Rate2001 kbps (DTS-HD Master Audio 2.0 / 48kHz / 24bit / English)
Audio Average Rate4069 kbps (DTS-HD Master Audio 5.1 / 48kHz / 24bit / English)
画像1: 4K UHD SCREEN SHOT

4K UHD SCREEN SHOT

ひとりの天才科学者が挑んだ 恐るべき異次元の世界

精神病理学者で、ハーバード大学医学部の終身教授エディ・ジェサップ(ウィリアム・ハート)は、長きにわたり感覚遮断実験に取り組んでいた。すべての人類は地球上に出現した生命体の進化によって誕生し、存続したものであり、現代人の体を形成する細胞も、原始の生命体から細胞の記憶を引き継いでいることになる。細胞の記憶を辿ることによって、人類誕生、さらには生命誕生の根源にまで戻ることができるはずだ。自らの仮説を証明するために、ジェサップは自分の体を実験台にして生命誕生の根源まで迫ろうとする。だが実験を重ねていくうち、彼の肉体に異変が起き始める・・・。共演は『Oh!ベルーシ絶体絶命』のブレア・ブラウン、『未知との遭遇』のボブ・バラバンほか。

画像2: 4K UHD SCREEN SHOT

4K UHD SCREEN SHOT

外部との接触を断ち感覚的な刺激をすべて遮断すると、人間の意識はいったいどうなるのか?感覚遮断実験と、それによって起きる変性意識状態(ALTERED STATES OF CONSCIOUSNESS/覚醒・認識・反応はあるが、日常的なものとは異なった意識状態)。この未知の領域に光を当てた科学者ジョン・C・リリー博士が、メスカリン、ケタミン、 LSDなどの向精神薬の影響下で隔離タンク(アイソレーション・タンク)内で行った感覚遮断研究を下敷きに、『マーティ』『ホスピタル』『ネットワーク』でオスカーに輝いた脚本家パディ・チャイエフスキーが脚本を執筆(すぐに執筆した脚本を小説化、その後に映画化)。当初『俺たちに明日はない』のアーサー・ペンが監督予定であったが、プリプロダクションの段階で降板。スティーヴン・スピルバーグ、スタンリー・キューブリック、シドニー・ポラック、ロバート・ワイズ、オーソン・ウェルズらが後任を断り、プロジェクトは暗礁に乗り上げたかのように思われたが、最終候補として挙げられていた『ボーイフレンド』『Tommy/トミー』のケン・ラッセルがオファーを承諾、監督の座に収まった。

画像: ひとりの天才科学者が挑んだ 恐るべき異次元の世界

心理ホラーとボディホラーの両方の要素を特徴とした本作品は、それまでラッセルの作品を軽視していた批評家からも高い評価を得て、興行的にも成功を収めている。特殊メイクをディック・スミスが担当しているのも話題。創作の方向性からラッセルと対立したチャイエフスキーは、クランクアップを待たずにプロジェクトから離れ、脚本はシドニー・アーロンというペンネームでクレジットされている。才人チャイエフスキーは大好きな脚本家であるが、本作品に関しては我を通したラッセルに拍手を送りたい。あの脳を溶かすような映像演出、あるいは前衛的な音響演出がなければ、おそらく意味不明な作品にしか見えなかったであろう。それゆえに、映像・サウンドの修復・復元を経たUHD BLU-RAYリリースには、映画ファンが望んでいた以上の貴重な価値があると言えよう。

画像3: 4K UHD SCREEN SHOT

4K UHD SCREEN SHOT

撮影監督は本作品の2年後に『ブレードランナー』を撮ることとなるジョーダン・クローネンウェス。独特の光源操演に『ブレードランナー』との共通点を見出すことができる。パナビジョン・パナフレックス/球面レンズ/1:33:1フルフレーム/35mm撮影作品。上映アスペクトはソフトマット1.85:1ビスタサイズ。4Kスキャンとデジタルレストアは、L.A.バーバンク(本社はインド/チェンナイ)のプラサド・コーポレーションが担当。HDRおよびSDRグレードは、同じくバーバンクのラウンドアバウト・エンターテインメントが行っている。本作品では幻覚的なシーンの再現が観どころとなるが、バレル型ミラースキャン照明による実写効果、インカメラ(編集なしの一発撮り)による特殊効果撮影、ブルーバック(200ショット以上)やコンピュータ支援ロトスコープを使ったオプチカル合成、といったテクニックを融合させた数々のショットが含まれている。今回のレストア作業では、オプチカル合成ショットの再現にもっとも時間を費やしたという。サウンド・リマスターを含むすべての工程を監修したのは、ジョーダン・クローネンウェスの息子で『ソーシャル・ネットワーク』『ゴーン・ガール』などのデヴィッド・フィンチャー作品や『トロン:アレス』で知られる撮影監督ジェフ・クローネンウェスである。

画像1: 2012 WARNER BLU-RAY

2012 WARNER BLU-RAY

画像1: 2025 CRITERION 4K UHD BLU-RAY

2025 CRITERION 4K UHD BLU-RAY

本作品は2012年にワーナーからBLU-RAYリリースされているが、本盤との差異は歴然、大幅な映像アップグレードが施されている。2012年BLU-RAY(1層・25Gb/映像20.96Mbps/35mmインターポジ使用)は過度なDNRが施されていたが、本盤ではテクスチャが鮮明となり、細部のディテイル描画力も優秀だ。冒頭シークエンス(1967年)にわずかながら軟調なショットが散見されるものの、細やかな粒子感が有機的なまま保たれ、フィルムならではの質感が再現されている。注目のオプチカル合成ショットだが(当然のことながら)軽度の解像感後退はあるが、実写ショットとの整合性が保たれており、同時にCG前夜の特撮テクニックも妙味も十分に堪能できる。本作品は今年9月に独盤UHD BLU-RAYがリリースされているが、2012年BLU-RAYマスターをアップスケールしたもの。収録されるドルビーアトモス・サウンドトラックも独語音声のみなので、ご注意を。

画像2: 2012 WARNER BLU-RAY

2012 WARNER BLU-RAY

画像1: 2025 PLAION PICTURES(GERMAN)4K UHD BLU-RAY

2025 PLAION PICTURES(GERMAN)4K UHD BLU-RAY

画像2: 2025 CRITERION 4K UHD BLU-RAY

2025 CRITERION 4K UHD BLU-RAY

物語が奇想天外なものだからこそ、撮影はリアルで誠実なものにしたいと考えた。フィルターは一切使わず、ただクリーンなままに、そしてなにかが起こりそうな予感、常に不吉な存在が漂っているような感覚を醸し出すように心がけた。撮影監督ジョーダン・クローネンウェス

光量を抑えた暗い場面が多い作品ではあるが、HDR操演には説得力があり、暗部は深く、陰影階調も滑らかだ。ハイライトの画像情報も鮮明。明暗のコントラストが拡張、光を闇に溶け込ます繊細な明暗法の再現も観応えがある。色調は明度をやや低めにして色に深みを足したトーンに修正され、清色と中間色のバランス、拡張された鮮やかな赤やオレンジも効果的に再現されている。

画像3: 2012 WARNER BLU-RAY

2012 WARNER BLU-RAY

画像2: 2025 PLAION PICTURES(GERMAN)4K UHD BLU-RAY

2025 PLAION PICTURES(GERMAN)4K UHD BLU-RAY

画像3: 2025 CRITERION 4K UHD BLU-RAY

2025 CRITERION 4K UHD BLU-RAY

オスカー音響賞にノミネートされた面々は『ブラックホーク・ダウン』『シカゴ』などで3度のオスカーに輝くマイケル・ミンクラー、『大統領の陰謀』『バード』でオスカー受賞のレス・フレッショルツ、『キャバレー』『大統領の陰謀(オスカー受賞)』のアーサー・ピアンタドシ。本作品ではオリジナル2.0サラウンドトラックと5.1chサラウンドトラックを収録。前者は35mmプリントマスターの磁気トラックからリマスターされたもの。後者はホームビデオ用に作成された5.1リミックスで、2012年BLU-RAYマスターのリユースとなる(整音精度は高い)。いずれも緊迫感あふれるサウンドスケープを際立たせる音づくりを堪能できるが、2.0サラウンドトラックでの鑑賞を特薦としたい。明らかに明瞭度(特にダイアローグ)が向上しており、高音域の情報量も拡張している。アップミックス再生との相性も良好である。

画像4: 4K UHD SCREEN SHOT

4K UHD SCREEN SHOT

オーケストラの前衛的技法と、ミュージック・コンクレートなどの電子音を組み合わせたスコアは、現代音楽の作曲家ジョン・コリリアーノによるもので、音響賞と同じくオスカーにノミネートされている。彼のコンサートで「クラリネット協奏曲」を聴いたラッセルが起用を即決したというが、スリリングなコリリアーノのスコアは、その使命を果たすだけでなく、映画をまったく別の次元へと昇華させる映画音楽の好例と言えるよう。

画像5: 4K UHD SCREEN SHOT

4K UHD SCREEN SHOT

アイソレーション・タンクに浮かぶジェサップを映し出す開幕から、その魅力は全開。彼は静かに幻覚を見始め、交通音、互いに重なり合う声、日常的な騒音で満たされていく。スコアが鳴り始めると、その存在感が際立ち、観る者を圧倒し始めるのだ。開幕の幻覚体験の中で、ジェサップは過去の家族とのトラウマ、死への恐怖、そして苦悩に満ちた信仰の喪失と対峙する。キリスト教のイメージが想像力の視覚的炸裂と混ざり合う中で、コリリアーノは独特の特殊技法を用いており、オーボエ、フルート、ヴァイオリンといった馴染みのある楽器を判別不能なほどに響かせていく。ここでも2.0サラウンドトラックの優位性を聴取することができ、幽玄なハープ、官能的な弦楽器、心地よい木管楽器のパッセージ、そして宗教的な旋律の断片が並置され、そのサウンドスケープを、美しくも、不気味で恐ろしいものにしているのだ。

画像6: 4K UHD SCREEN SHOT

4K UHD SCREEN SHOT

UHD PICTURE - 4.55  SOUND - 45

画像7: 4K UHD SCREEN SHOT

4K UHD SCREEN SHOT

NEW & BACK NUMBER

This article is a sponsored article by
''.