昨今、人気級上昇中の超短焦点プロジェクター。人気の理由は、明るく、鮮やかな映像が再現できる高輝度レーザー光源が実用化されたこと、多彩な動画配信サービスが楽しめるGoogle TV OSが広く採用され始めたこと、あるいは光学系の進化により本体の小型・軽量化が劇的に進んだことなど様々だが、結果として、超短焦点プロジェクターの1台だけで、直視型テレビではほぼ実現不可能な大画面鑑賞が楽しめるようになったことが大きいと思う。
最近話題の超短焦点プロジェクター。非常に便利だが、実は設置が難しい……。そんな常識を払拭する「JMGO O2 Ultra 4K」が登場
超短焦点プロジェクターは、スクリーン(あるいは壁)の手前、数十cm前後のところに置いて、等身大の大画面投影が実現するという手軽さは大きな魅力だが、実際に設置してみると、ここで意外な苦労に出くわすことは珍しくない。映像がスクリーンの枠にすっきりと収まらない、画面全面で均一なフォーカスを確保するのが難しい、画像の歪みが気になるなど、実際の視聴に入る前に数々の難題をクリアーしなければならず、なかなか「手軽に大画面映画像が楽しめる」というわけにはいかないのが実情なのだ。

JMGOの超短焦点プロジェクターO2S Ultra 4K。柔らかなカーブを描いた筐体は、インテリアとよく馴染むコスメティックデザインといった佇まい。サイズは幅312×奥行290×高さ140mmと非常にコンパクト。スクリーンと本体前方(上の画像でいえば右側)まで15cm離すと100インチ映像が投写できる仕組みだ
【JMGO O2S Ultra4K】超短焦点 3色レーザープロジェクターが登場!最新のGoogleTV搭載の超高機能なホームプロジェクター
www.youtube.com
2011年に、映画ファンの有志が集まって設立されたというJMGO。同ブランドは、様々な提案を施したプロジェクターを矢継ぎ早に市場に投入。2022年にはジンバル型という新機軸を盛り込んだプロジェクター製品群であるN1シリーズをリリースすると、日本でも高い人気を誇るブランドへと成長を遂げている
ところが、この常識を払拭してくれるようなプロジェクターを見つけた。
それがJMGO(ジェイムゴー)の 「O2S Ultra 4K」だ。実際、スクリーンの中央付近に、本体先端からスクリーンまで手前にたとえば15cmのところに、コンパクトな本体をポンと置いて、そのまま投影してみると、ほぼ100インチという大画面が浮き上がったではないか。本体は、上から見るとノートPC並みのサイズ(!)なのだが、この小型筐体内に驚異の超短焦点映像プロジェクション機能が実装されているとは!
あとは設置位置を微調整して、スクリーンフィット、オートフォーカス、自動台形補正といった各種自動調整機能を1つ1つ動作させていけば、基本調整が完了するという手軽さだ。さらに使用環境に応じてレーザー光源の明るさ自動調整や、壁面投影時に重宝する壁面色自動適応といった機能も搭載されている。

スクリーン側から映像を投写しているレンズを撮影した。複雑なカーブを描いたレンズにより、非常に短い焦点距離で高輝度、高解像度、広色域の美麗映像をスクリーンに描き出す

自動台形補正やフォーカス調整などは自動化されている。JMGOブランドのプロジェクターの美点である設置性の高さを支える部分だ。設定メニューから、さらに追い込める手動調整も可能だ

超短焦点プロジェクターは、あまりにもスクリーンと本体が近接した状態でのセッティングとなるため、わずかな位置のズレが画面の大きな歪みとなって現れやすい。

「O2S Ultra 4K」では、自動アジャスト機能を搭載、非常に高精度な位置調整が可能だ
そして最後のひと手間、スマホにインストールした「JMGOアプリ」との連携で利用できる「画像の平坦化」機能も効果的だ。スクリーン下から投影する超短焦点プロジェクターの場合、スクリーンの巻きシワやヨレなど、微妙な凹凸が映像の歪みとして表れやすく、100インチ大の画面サイズとなると、特に気になりやすい。
この問題をキレイ、さっぱり解消してしまうのがこの「画像の平坦化機能」だ。本機能をメニューから呼び出し格子柄を表示、JMGOアプリをインストールし本機能を有効にしたスマホで、その格子画像を撮影、認識させ、その情報を踏まえて、映像の歪みに逆補正をかけることで、目障りな画像歪みを払拭してしまうという実に賢い技術だ。
実際、その効果は絶大だ。「画像の平坦化」機能オンで、輪郭ラインのヨレ、不自然な湾曲が一瞬のうちに払拭され、歪みのないスクエアな映像に生まれ変わる。ここまで手軽に快適にこれほどの効果が得られるとは……、驚いた。

通常のプロジェクターではほとんど気にならないスクリーンの微妙な波打ちが、超短焦点プロジェクターの場合、非常に目立つことがある。写真ではスクリーンの右上側が波打っていることがわかる

「O2S Ultra 4K」では、「画像の平坦化」機能を新搭載。JMGOアプリをインストールしたスマホでスクリーンを撮影、その映像を元に、画像を正しい状態にアジャストできる画期的なフィーチャーだ

「画像の平坦化」機能を使って補正した状態。スクリーン右上の歪みがほとんど解消されている
3,650 ISOルーメンの高輝度と広色域の共演による、明るく鮮やかでインパクトのある映像美に驚く
さて、その画質やいかに。限られた時間ではあるが、今回はHiVi視聴室で確認した結果を報告しておこう。
表示素子は0.47インチのDMD。解像度については明確には表記されていないが、フルHD仕様の画素を4度書きすることで4K UHD(水平3,840×垂直2,160画像)の表示解像度を実現しているものと思われる。明るさは3,650 ISOルーメン。BT.2020色域を110%カバーする広色域特性は、3色RGBレーザーモジュールの賜物だ。
UHDブーレイ『ジョーカー』、『8K空撮夜景 SKY WALK - TOKYO/YOKOHAMA』といった普段から見慣れている4Kコンテンツに加えて、YouTubeでも様々な動画を100インチ相当の大画面サイズで再生して、そのクォリティを確認してみたが、まずその明るさ、色彩の鮮やかさに驚かされた。映像モードは、その絵柄に応じて、リアルタイムで画質を最適化していく「AI強化」を選択。
『8K夜景〜』では夕暮れから夜、深夜と、様々な街の表情の変化が鮮明に映し出されるが、夜の街のあちこちに広がる電飾の鮮やかさといい、高層ビルの窓からもれる光の鋭さといい、高輝度、高彩度の共演による表現力は実に見応えがある。
3色RGBレーザー光源による色彩表現の豊かさ、色数の多さもあるが、そこに3,650 ISOルーメンの明るさが加わることで、見た目のインパクトはにわかに押し上げられ、視線をくぎ付けにする。ネイティブコントラスト比は4,000対1。これは正面コントラストの優れたVA方式の液晶パネルを搭載した、最新世代の高級液晶テレビと同等の数値だが、O2S Ultra 4Kが描く映像は、白ピークが気持ち良く伸びて、メリハリがついているためか、見た目のコントラスト感にやや余裕があるように感じられる。
4,000対1のネイティブコントラストを活かした映画画質に注目。レーザー光源特有のスペックルノイズもしっかり抑制されている
『ジョーカー』の再生では、「シネチューナーマスター」(映画鑑賞に特化した画質調整用モード)で観た。さすがに漆黒の黒の表現は厳しい。だが、ローライトの表現が希薄になるように違和感はなく、ナイトシーンも自然なコントラスト感で描き出していく。
また、粘り強く描く暗部の色付きの良さやハイライトの色抜けの少なさ、あるいはフェイストーンの安定性と、随所で、3色RGBレーザー光源の恩恵を感じることができた。映画鑑賞用として、プロジェクターにどのくらいのネイティブコントラスト比が必要なのか、という点については様々な意見があるが、私は経験上、4,000対1の数値がクリアーできれば、ほぼ不満を感じることなく映画が楽しめると考えているが、実際にO2S Ultra 4Kも例外ではなかった。
もうひとつ感心したのが、レーザー光源の大きな課題でもあるスペックルノイズが丁寧に抑えられていることだ。レーザー光が物体に当たって散乱し、その光同士が干渉して生じる不規則な斑点状のノイズのことをスペックルノイズと呼ぶが、本機の場合、レーザー光源でありながら、このザワツキがあまり気にならない。

日亜化学工業製の3色RGBレーザーモジュール「QauLas RGB」を搭載。非常にコンパクトでありながら、高出力、広色域の光源だ

フルHD解像度のDMDパネルからの映像信号を、4K解像度へと内部的に変換して、スクリーン上で4K表示する「リデューサー」と呼ばれるキーデバイス
JMGOでは以前から上下左右に高速振動するリデューサー(拡散板)で光をランダムに振動拡散する技術を実用化しているが、その効果は本機で飛躍的に向上しているように思われる。なにか大きな技術的なブレイクスルーがあったのかも違いない。それほどスペックルノイズの影響が感じられなかったのである。
また、ドルビービジョン方式のHDR映像の対応も本機の大きなトピックだが、その実際の効果については、もう少し時間をかけた検証が必要だろう。ただ、Dolby Vision映像作品限定とはなるが、映画画質を熟知したドルビー研究所のエンジニアが実質的に仕上げた映像モード「Dolby Visionダーク」や「同ブライト」が選べるメリットは少なくない。

内部構造の模式図。日亜化学工業製の3色RGBレーザー光源とテキサス・インスツルメンツ製DMDを用いた生み出された光は、複雑な光路を経て、投写用レンズへと導かれる。4K解像度で3,650 ISOルーメンの高輝度を備えた超短焦点プロジェクターO2 Ultra 4Kは、異例のコンパクト設計であるが、その内部は非常に高度かつ緻密に設計された構造であることが理解できるだろう

3色RGBレーザー光源を搭載しているJMGOプロジェクターの画質上の魅力は色の鮮やかさ。HDR規格で使われているBT.2020色域を大きく超える110%の範囲もの色再現性を備えている。BT.2020色域を超える色再現性能を備えている家庭用映像表示機器は、ほとんど存在していない
DYNAUDIO製音響システムを搭載。歪み感の少ない、明瞭度の高いサウンドもポイントだ
最後に内蔵スピーカーの音について触れておこう。本体を手にとって持ち上げてみると、筐体自体は、剛性の高さ、精巧さを感じさせる仕上がりで、ヤワな感じは一切ない。この作りの良さは、そのまま歪み感の少ない、明瞭度の高いサウンドに表れている。プロジェクターに内蔵するスピーカーシステムの場合、どうしても女性の声が渇き気味に聴こえたり、弦の響きがざわついたり、質的な限界を感じることが少なくないが、O2S Ultra 4Kはそうした弱みを感じさせない。
さすがに雄大に拡がるサラウンド感や、からだ全体に揺さぶりかかるような低音を求めるわけにはいかないが、穏やかで聴きやすい音調で、空間の描き分けも無理がなく、スムーズに広がるのである。
セリフを中心に、効果音、音楽と、確実に描き分けていくという聴かせ方で、不自然な逆相感もなく、馴染みがいい。そう、にじみのない爽快なサウンドは十分、実用になるレベルに達しているのである。スピーカー開口部上に見える「DYNAUDIO」のロゴからもわかる通り、デンマークの高級スピーカーブランド、ディナウディオがサウンドチューニングに関わっているとのことだが、それは伊達ではなかった。付け加えると、eARC対応のHDMI端子も装備しているので、サウンドバーや本格的なサラウンドシステムへの展開も、無理なく対応できることもO2S Ultra 4Kの見逃せないフィーチャーだろう。

本体右側側面。パンチングメタル製のカバーの内部にスピーカーユニットが仕込まれている。さりげなく配されている「DYNAUDIO」のロゴマークにも注目していただきたい

接続端子は、設置時にスクリーン側となる筐体の、下部にまとめて配置されている。2系統のHDMI端子のほか、USB Type A端子、LAN端子、光デジタル音声出力端子を装備。HDMI1端子はUltra High Speed対応となっておりゲームコンテンツなどの120Hz映像の入力が可能。HDMI2端子は、eARC対応でサウンドバーおよびeARC/ARC対応アンプ/AVセンターなどとの連携で音響面のグレードアップが簡単に図れる。なお、O2S Ultra 4Kのスペックで「ドルビーアトモス」や「DTS:X」対応という表記があるが、それはeARC対応時に外部のサウンドシステムとの連携時に、それぞれの音声フォーマットに対応しているという意味で、本機単体で対応しているわけではない
画質、音質、設置性と、超短焦点プロジェクターが背負ったハンディを1つ1つ丁寧に克服し、良質な大画面とサウンドが手軽に楽しめる完成度の高いプロジェクターに仕上げられたJMGOの話題作。次世代の家庭用プロジェクターの本命として、名乗りを上げたといっても過言ではない。

最新世代のGoogle TV OSを搭載。NetflxやAmazon Prime Video、YouTubeなど主要ストリーミングサービスに本体だけで再生できる。有線LANのほかWi-Fi接続にも対応し、スピーカーも内蔵しているので、本体と電源ケーブルだけの接続で大画面の動画が楽しめる

左:日本ビジネス開発代表取締役社長/矢野雅也 氏 右:オーディオビジュアル評論家/藤原陽祐 氏




