EE1との共通点と違いを列挙すると、「ノイズを熱変換して発散」という基本動作は同じだ。グラウンドの間を電気的に絶縁する「ガルバニック絶縁(接続機器相互のアース電位差による悪影響を排除)」、ノイズフィルターとして音質に有害な帯域に特化、精密切削のアルミニウム製ケースなども同様だが、個々の部分をグレードアップしている。

Network Noise Isolator
EE1 Plus
¥154,000 税込
●型式:ネットワーク・ノイズアイソレーター
●接続端子:LAN端子(RJ45)
●寸法/質量:W62×H38×D92mm/350g
●備考:写真のLANケーブル(コードカンパニー製C-stream/75cm品)が本機に1本付属。写真右はEnglsih Electric製オーディオ用スイッチングハブ8 Switch(¥139,700税込)
●問合せ先:アンダンテラルゴ(株)TEL. 0120-77-3412
違いは<アレイテクノロジー>の初採用だ。これまで汎用ノイズフィルター「ノイズポンプ」シリーズで採用されてきたコード・カンパニー社の独自技術。ケーブル内の信号反射現象に対して、ノイズ対策用のアレイ線(グラウンドとホットが同一の芯線、編線を電気的に独立させた状態)を追加して、ノイズを吸収/減衰させ、伝送の正確化を図る技術だ。

EE1 Plusは、入力/出力用LAN(RJ45)端子を備えただけの非常にシンプルなノイズアイソレーター。底面には信号の向きが記載されているので、それに従ってケーブルを繋ぐ。今回の取材ではスイッチングハブ8 SwitchからネットワークトランスポートU2Xへの流れでEE1 Plusを用いた
実際の使い方に関して、メーカーはスイッチングハブとネットワークプレーヤー/トランスポートの間での使用を推奨している。接続の方向性はケース底面に矢印で印字されており、その方向に合わせて、スイッチングハブ側からのLANケーブルとネットワークプレーヤー側のLANケーブルを挿す。電源は不要。セットアップは実に簡単だ。

「明と暗」、「緊張と弛緩」、「柔と剛」対極的ニュアンスが明確に聴けた
ここではイングリッシュ・エレクトリックのスイッチングハブ8 Switchから、エイムのLANケーブル(NA4)を経由してルーミンのネットワークトランスポートU2Xの途中にEE1 Plusを介すとどうなるかを試す。
まず「チーク・トゥ・チーク/情家みえ」を聴く。
8 SwitchとU2Xを直結した時に比べ、EE1 Plusを介すと圧倒的に変わった。直結ではまさに直裁で、はっきりくっきりの音調。もっと稠密さやチャーミングさが欲しいと感じたが、それが、まさにEE1 Plusを加えることで叶えられた。
冒頭のアコースティック・ベースとドラムス、ピアノのトリオの前奏が、わくわくするような軽快さとハイスピードで始まった。ベースの量感がたっぷりとし、その体積が大きく、内実にも緻密に細かな音の粒子がぎっしりと隙間なく充填されている。音のグラデーションが緻密になり、進行が滑らかになった。情家みえのヴォーカルは、旋律の流れの中に「明と暗」、「緊張と弛緩」、「柔と剛」などの対極的なニュアンスを微細に込めているのが、EE1 Plusを加えることで、はっきり聴けた。特筆すべきはレガートとアクセントの対比が、直結接続よりも遙かに豊かに感じられること。それこそがまさに音楽の生命感ではないか。EE1 Plusはヴォーカルも含め、よりグロッシーに、よりタイトに、より緻密に、そしてより音楽的に奏でてくれる。
クラウス・マケラ指揮パリ管弦楽団「ベルリオーズ:幻想交響曲 第4楽章」。直結との違いは、まず音場再現。直結より遙かに音場体積が大きく、前後左右に広大して拡がる。ベルリオーズの魔術的なオーケストレーションを、マケラ指揮パリ管のこれまた興奮的で洗練された音の演出を、EE1 Plusは、意味深げに聴かす。
冒頭のティンパニの怪しい6連符のトレモロは、これからどんなスペクタクルが舞うのか、わくわくと予感させる。ティンパニの皮の振動が空気を揺らす様が明瞭に聴き取れ、6連符の急激なクレッシェンドの勢いが凄まじい。その頂点のトゥッティはの鮮烈で衝撃的な一打は、まさに音が太く熱い。チェロの旋律は実に剛毅で、「弦の圧」が高く、演奏意欲が熱い。オクターブ跳躍を繰り返すヴァイオリンと、急な下行と上行旋律で絡むチェロとの対比が、音響的にも音楽的にもEE1 Plusを介すと実に興奮的に描かれるのである。主部の行進曲では金管がカラフルに煌めく。ここのトゥッティも凄い。まるでばらばらだったジグソーパズルのピースが、全てあるべきところに収まったような納得感の強い、精密で緻密な音構造だ。
EE1 Plusの音響的、そして音楽的なトリートメント効果には脱帽だ。
>本記事の掲載は『HiVi 2025年秋号』




