怖さ、不気味さ、痛み、それに耐えられる覚悟のあるひとに向けられた一作という印象を受けた。第 29 回釜山国際映画祭「コリアンシネマトゥデイパノラマ」部門公式招待であり、韓国実写映画として初登場1位という快挙を成し遂げたという一作が、9月5日から日本公開される。

 第1話というべき前半部分は、水泳インストラクターであるヨンウンと、その7歳の娘であるソヒョンの関係にスポットが当てられる。ソヒョンは他人の苦しんでいるところや、他人がいやがっているところを自ら作り出して快感を得るタイプのようで、凶器の扱いも驚くほどうまく、生き物をあやめることにも何の躊躇もないようだ。だが、こういう人物(しかも見かけは子供だ)をまわりに持ってしまうと、とんでもない不幸である。しかも、その不幸の元凶が自分の娘なのだから……。

 このエピソードのエンディング部分から、まるで音楽でいうところのメドレーのように、第2話というべき後半部分が始まる。設定は「20年後」、登場人物はヨンウンやソヒョンとは一切関係がないようだ。にもかかわらず「つながり」があるような印象を抱いてしまったあたり、私は監督のミスリードにばっちり誘われたような気がしたのだが、この第2話自体の筋書きにもミスリードを誘うような箇所があり、なんというか「観る者への挑戦」を仕込んだ映画作りであるとの印象を受けた。そしてこの第2話のエンディングが、私の見た感じ、1話のオープニングとつながっていて、なんというかこの映画自体がねじれた輪のようにも感じられてくる。実に巧妙なつくりなのだ、といいたい。監督・脚本はキム・ヨジョンとイ・ジョンチャン、出演はクァク・ソニョン、キ・ソユ、クォン・ユリ(少女時代)、イ・ソル等。

映画『侵蝕』

9月5日(金) 新宿ピカデリー ほか全国ロードショー

監督:キム・ヨジョン イ・ジョンチャン
2025年/韓国/韓国語/112分/カラー/2.39:1/5.1ch/原題:――/英題:SOMEBODY/字幕翻訳:平川こずえ/G
配給:シンカ
(C)2025 STUDIO SANTA CLAUS ENTERTAINMENT CO.,LTD. All Rights Reserved.

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