親族には別の仕事をしていると偽っているソープ嬢の加那(中尾有伽)と、認知症が進む祖母の紀江(研ナオコ)との交流を描いた一作。加那は母から「1週間だけ」とお願いされて紀江の介護をするのだが、紀江にとってはおそらく毎日が前日と切り離された新世界であり、ゆえに毎日、加那のことについて「はじめまして」状態だ。自分はあなたの孫なのだ、と説明しても、どうにも伝わらない。なんだかなあと思いながら、ソープと紀江宅を行き来して、「他者のからだを洗う」。

 すでにさまざまなメディアでとりあげられている映画であり、研ナオコにとっては9年ぶりの主演作なので話題になるのは当然だろう。音楽好きとして私がとても興味深く感じたのは、紀江の住まいには数多くのアナログ盤があって、しかもジャズやボサノヴァの作品が主体であることだ。ある日、加那は古びたフォトアルバムを見つけ、開くのだが、そこに張られているすっかり色あせた、ニューヨークで演奏する若き日の紀江を捉えた写真は彼女の心を躍動させるに十分だった。徐々に紀江へのリスペクトを高めていく加那にインスパイアされて、「かっこよかった時期の自分をすこしずつ思い出して、しだいに再びかっこよくなっていく」紀江の描写が実にいい。音楽担当の永 太一郎は米国ニューイングランド音楽院でボブ・モーゼス(ゲイリー・バートンやパット・メセニーと共演するドラマー)に師事した俊才。世代や職種を超えた加那と紀江の心のつながりに快い気分になるとともに、一種のジャズ映画としても私は本作を楽しんだ。監督・脚本・企画・編集は岡﨑育之介。

映画『うぉっしゅ』

5月2日(金)新宿ピカデリー/シネスイッチ銀座 他 全国公開

中尾有伽 研ナオコ
中川ゆかり 西堀文 嶋佐和也(ニューヨーク)
髙木直子 赤間麻里子 磯西真喜

監督/脚本:岡﨑育之介
企画:岡﨑育之介 音楽:永太一郎 共同プロデューサー:神原健太朗 ムラタマリエ ラインプロデューサー:赤間俊秀 監督補:佃直樹 助監督/美術:中村光寿 撮影:江成隼 照明:西野正浩 録音:岩﨑敢志 庄野廉太朗 スタイリスト:川邉舞 ヘアメイク:幸田啓 カラリスト:井上海 編集:岡﨑育之介 制作プロダクション:役式 宣伝協力:浅田飴 配給:NAKACHIKA PICTURES
2023年|115分|カラー|DCP
(C)役式

公式サイト
https://wash-movie.jp/

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