①「From Distance(LP version)/ベット・ミドラー」44.1kHz/16ビット
②「Desperado (2015 Remaster)/リンダ・ロンシュタット」96kHz/24ビット
③「真夏の夜の夢 (2022 mix)/松任谷由実」96kHz/24ビット
④「花束を君に/宇多田ヒカル」96kHz/24ビット
⑤「ホールド・マイ・ハンド/レディー・ガガ」44.1kHz/24ビット
⑥「My Heart Will Go On/Celine Dion」44.1kHz/24ビット
⑦「Skyfall/アデル」44.1kHz/16ビット
⑧「Goodbye Yesterday/今井美樹」96kHz/24ビット
⑨「メイン・テーマ/薬師丸ひろ子」96kHz/24ビット
⑩「I Will Always Love You (Alternate Mix)/WHITNEY HOUSTON」48kHz/24ビット
映画を楽しむとき、私がまず注目するのが、顔だ。それはシーンシーンで刻々と変化していく、顔色、表情、素振り、眼差しどから、人の喜び、怒り、悲しみといった感情がダイレクトに感じられ、結果として、ストーリーに引き込まれ、その作品に没入できる。
オーディオ再生でちょうど同じような対象となるのが、声だ。声量や調子、あるいは独特の音色と、声には単に情報を伝えるということだけでなく、その人の感情や想い、あるいは強い個性までも感じ取れる。その複雑で多彩な歌声の表現には、アーティストが伝えたい気持ち、メッセージが込められているわけで、それをいかに変質させることなく、あるがまま引き出せるかが、私のオーディオ再生では極めて重要なミッションになる。
ここでは日頃からよく聴いている女性ヴォーカル楽曲から、純粋に「その歌声が好き」という曲を厳選している。
①は確かな歌唱力でロックからバラードまで幅広く歌うベット・ミドラーの代表曲。平和を求める想いを優しく、時には力強く呼びかけていくが、その多彩な表現力に支えられた歌声には強い信念が感じ取れる。
②はイーグルスの楽曲をリンダ・ロンシュタットがカバーしたもの。シンプルなピアノの演奏をバックに淡々と歌っていくが、強い意志を感じさせる張りのある声に、隠し味としてペーソスが加わり、何とも味わい深い。
④は宇多田ヒカル独特のささやき声で始まり、微妙な息づかいが生々しく、実在感に富んだ歌声が拡がる。高音、低音を自在に歌いわけ、音程の安定感は惚れ惚れするほど。その声はわずかにハスキーで、絶妙なヴィブラートが加わるが、これをザラつかず、滑らかに再現できるかどうか。再生システムの技量が問われる。
10曲選んでみて、私自身、気づいたのは、“ストレンジ”とまではいわないが、他にはない個性的な声で楽しませる楽曲が多く、その艶、色彩に魅力を感じているということ。唯一無二の存在の声は、聴き手を引きつけ、飽きさせない。
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>本記事の掲載は『HiVi 2025年春号』