最もシンプルかつ省スペースを実現。高品位も狙えるアンプ内蔵スピーカー
イヤホン/ヘッドホンを除くQobuz再生システムとして最もシンプルで、しかもスマートさ、省スペースを求めるのなら、スピーカー本体でQobuzが楽しめるアクティブスピーカーが最有力となる。スピーカー本体に電源ケーブルとインターネットにワイヤード/もしくはワイヤレス接続するだけで、スマホの操作アプリからお気に入りの楽曲を指定して再生できるからだ。
本体にアンプを内蔵するアクティブスピーカーは、家庭用スピーカー全体からすると、まだまだ少数派だが、そこにBluetoothやストリーミング再生、あるいはHDMI接続、スマホを使ったアプリ操作などの多機能を盛り込むことで設置性/操作性に優れ、家族が集うリビングという空間に溶け込みやすいという特徴が徐々に認められ、ここにきて注目度は急上昇。ワイヤレスHi-Fiスピーカーとしてラインナップを充実させたKEFのLS/LSXシリーズのようなモデルも登場している。
前述の通り、その多くのモデルが、放送/配信/BDなどのパッケージソフトと、テレビの音声がスピーカーで楽しめるeARC対応HDMI端子を備えている。HDMIケーブルを1本接続するだけで、テレビ付属のリモコン操作に連動して、電源、音量などの操作が可能。ユーザーは外部スピーカーであることを特に意識することなく、テレビ内蔵スピーカーと同じ感覚で使いこなせるというわけだ。
実は同様の機能性/操作性を備え、すでに広く認知され、製品ジャンルとして確立しているスピーカーシステムが存在する。そう、「サウンドバー」だ。スピーカーを左右分離した「ステレオ型」か、ワンバースタイルの「完全一体型」かという違いはあるが構成は近似している。サウンドバーはeARC対応HDMI端子を装備し、一部のブランドではネットワーク機能を備えたモデルが増えている。

リビングオーディオの核として十分に通用する機能と音声品位
今回試聴用として用意したのは英国KEFが手がけたブックシェルフタイプのワイヤレススピーカーLSX II LTだ。独自の同軸2ウェイユニットUni-Qドライバーを搭載し、ウーファーとトゥイーターをそれぞれ独立したパワーアンプで駆動する。入力端子はデジタル3系統(光、USB Type C、HDMI ARC)を装備、サブウーファー出力端子も搭載。両スピーカー間は付属の専用USB Type Cケーブル(3m)で接続する仕組みで、すべての信号が96kHz/24ビットに変換される。入力端子/電源端子を備えた個体を「プライマリー」、そこから繋がる接続用USB Type C端子だけを備えた個体を「セカンダリー」とし、専用アプリ「KEF Connect」上で、それぞれの個体の左右設置位置の指定できる。
アプリでは各種音楽配信サービスの設定、再生が可能だ。Qobuzも「クラウド内音楽」として表示され、そこからログインを行なう。

スピーカーシステムに、駆動用アンプと音声入力部/信号処理回路を内蔵し、多機能と高品質、使い勝手の良さを備えたアクティブスピーカーは、オールインワンモデルとして近年、非常に人気が高まってきた。HDMI ARC対応端子も備えているモデルも多く、テレビのあるリビングのサウンドシステムとして、合理的なチョイスとなる。この分野の先駆者、KEFの最小モデルLSX・LTは、自社アプリ「KEF Connect」でQobuz再生が可能だ
「デスペラード/リンダ・ロンシュタット」、「ショパン:ピアノ協奏曲第2番/チョ・ソンジン」、「Goodbye Yesterday/今井美樹」などの楽曲を再生してみたが、落ち着きのある音調で、帯域バランスも良好。明確な定位とスムーズな空間の拡がり、そして響きのレスポンスの良さが特徴的だ。
雄大で、重厚な空間を描き出すというタイプではなく、音の骨格を感じさせる小気味のいいサウンドで、リズム、旋律を淡々と、折り目正しく再現していく。中、小音量でもこの持ち味はそのまま生かされるため、リビングルームでも使いやすいだろう。
今井美樹の歌声は口の動き、息づかいが感じ取れるほどニュアンスが豊かで、ホールに拡がる響き、余韻、気配が生々しい。明快な解像力を持ちながらも、輪郭のきつさ、耳障りなピーク感はなく、肌合いのいい響きが耳にスッとしみこむ様子が好ましい。
チョ・ソンジンのピアノは完璧なまでにコントロールされた独特のタッチが、繊細かつ、力強く描く。精細感に富んだ響きは俊敏に放出され、音が立ち上がる時の瞬発力、情緒の細やかさ、そして余韻の深さと、細部の描写までしっかりと感じ取ることができた。
コンパクトで、洗練されたデザインといい、充実した機能性/操作性といい、リビングのオーディオシステムの核として、十分に通用する実力派。ネットワーク対応アクティブスピーカーは、テレビとの連携機能を含めて、オーディオファンのみならず、音楽を愛する幅広い層にQobuz再生の素晴らしさを強く訴求することは間違いない。

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>本記事の掲載は『HiVi 2025年春号』