東京・渋谷の東急プラザ渋谷では6月1日まで、葛飾北斎が生きた江戸の浮世にタイムスリップしたような新感覚が味わえる「映像×サウンド×触覚」の次世代型イマーシブ体験イベント「HOKUSAI : ANOTHER STORY in TOKYO」を開催している。
誰もが一度は見たことがある北斎の作品を、超高精細イメージデータを使用し、ソニーのLEDディスプレイ、Crystal LEDで臨場感のある高精細な映像をリアルに再現。さらに、床が水たまりや砂浜に変わったかのように感じさせる触覚提示技術(ハプティクス)などの演出により、葛飾北斎が見た景色や歩いた感覚を、圧倒的な没入感で体感できるものだ。先日その先行体験会が開催されたので、以下で紹介したい。
エントランスには、アーティストだけでなく、マルチクリエイターやイノベーターとしての顔も持っていた北斎について主要な作品を交えながら紹介されている。ここを読みながら会場に入ることで北斎への知識・関心も高まっていくだろう。
続いて「光の部屋」と名付けられた空間が広がる。江戸時代には電気照明などは存在しないわけで、当時の人々はロウソクの灯りで浮世絵を眺めていたとされている。ここでは江戸の人々と同じ視点で浮世絵を鑑賞してもらいたいという思いから、立体的に配置された複数のモニターと竹あかりで構成されている。最近の日常生活ではあまり体験できない柔らかな光の中で、落ち着いた気分で浮世絵を眺めてみるのも面白い。
その先には「大地の部屋」が準備されている。室内の三方向の壁と床面にはプロジェクターで浮世絵をモチーフにした映像が投写されているが、そこに床が水たまりや砂浜に変わったかのように感じさせるソニーの触覚提示技術(ハプティクス)での演出が加わることで、北斎が見た景色や歩いた感覚を、圧倒的な没入感で体感できる。凍った川の上を歩くとヒビが入るといった演出も楽しめる。
「風の部屋」も正面、左右の壁面にプロジェクターで浮世絵が投写されている。さらに天井には複数の送風機が並んでいて、絵柄に合わせて参加者に向けて風を送り出すという演出が行われている。例えば船に乗って波濤を進んでいく絵に合わせて、あたかも海風が吹いてくるかのような体験ができるわけだ。迫力ある絵柄と一緒に風を感じることで没入感も増している。
その先にある「北斎の部屋」は今回の展示のハイライト。富嶽三十六景の世界を原寸のスケール感でダイナミックにレイアウトした映像を、正面の壁一面に設置されたCrystal LEDで上映するものだ。その大きさは幅15m✕高さ2mほど、解像度は横12K✕縦2Kで、まさに北斎の頭の中に入り込んだかのような圧倒的な没入感のある空間が構築されている。
ここで上映されている浮世絵の映像は、オリジナルの浮世絵を1枚あたり20億ピクセルの解像度でスキャンしているが、その際にもアルステクネ社の技術を使って、立体感を持った情報として読み込んでいるという。その画像を約13分の作品として編集し、さらに映像と音に合わせてハプティクスによる効果を与えている。そこでは床の振動だけでなく、立体音響や風演出といった、あらゆる先端技術を駆使して北斎の想像力を現代の手法で再構築しているそうだ。
「HOKUSAI: ANOTHER STORY in TOKYO」
●会場:東急プラザ渋谷3F 東京都渋谷区道玄坂1-2-3
●期間:2025年2月1日(土)〜6月1日(日)
●主催:HOKUSAI:ANOTHER STORY製作委員会、株式会社ギークピクチュアズ、東急不動産株式会社、株式会社RED、ソニーPCL株式会社、株式会社朝日新聞社
●協力:文化庁