1982年にTV放送が開始され、熱狂的な人気となったアニメ『超時空要塞マクロス』。その後もさまざまな続編が制作され、新作の制作も発表されるなか、劇場版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』の劇場公開40周年を記念して、新たに4Kリマスターを行なった『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか 4Kリマスターセット』(4K ULTRA HD Blu-ray & Blu-ray Disc同梱)が、1月29日から一般発売される。また、それに先がけ1月25日(土)より全国41の劇場にて4KリマスターVer.での上映も実施され、劇場では4Kリマスターセットが先行販売される。

 ここでは、「マクロス」シリーズとしては初の4K版となる本作の制作がどのように行なわれたのか、リマスター作業を担当した株式会社クープを取材した。

『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか 4Kリマスターセット(4K ULTRA HD Blu-ray & Blu-ray Disc)』

2025年1月29日発売
¥9,900(税込)
BCQA-0020
発売・販売元:バンダイナムコフィルムワークス
(C)1984 BIGWEST

画像1: まさにデカルチャー!! 当時は見えなかったディテイルや色が甦った。4K版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』リマスターレポート

<UHD BD>
約120分(本編約116分+特典4分)
DTS-HD Master Audio(5.1ch)・リニアPCM(サラウンド)・リニアPCM(モノラル、一部ステレオ)/HEVC/100G/16:9(2160p Ultra High Definition)/日本語・英語字幕付(ON・OFF可能)

<BD>
約120分(本編約116分+特典4分)
DTS-HD Master Audio(5.1ch)・リニアPCM(サラウンド)・リニアPCM(モノラル、一部ステレオ) /AVC/50G/16:9(1080p High Definition)/日本語・英語字幕付(ON・OFF可能)

<仕様・特典>
●美樹本晴彦(キャラクターデザイン)新規描き下ろし特製収納BOX
●特製ブックレット(24p)
●<1984年劇場公開時フォーマット>と<2016年完全版フォーマット>2種を収録
●日本語・英語字幕(ON・OFF可能)を初収録
●映像特典:「天使の絵の具」 from「Flash Back 2012」アップコンバートver.

画像: ▲「天使の絵の具」from「Flash Back 2012」アップコンバートver.場面写真

▲「天使の絵の具」from「Flash Back 2012」アップコンバートver.場面写真

 取材は、株式会社クープの編集スタジオで実施した。実際の4K版制作もこのスタジオで行なわれており、隣接する部屋にはフィルムを5K解像度でスキャンする機械(スキャンステーション)も設置されている。

 ちなみに、クープとはあまり聴き馴染みのない会社だが、実は2024年の10月に株式会社キュー・テックと株式会社ポニーキャニオンエンタープライズが合併して誕生した新会社となる。キュー・テック時代からの映像制作のノウハウを受け継ぎ、さまざまな映画作品のリマスター作業を行なっている。

画像: ▲今回お話を伺ったクープ/テクニカルコーディネーターの庄司光裕さん(写真右)と、バンダイナムコフィルムワークスの関根美里さん

▲今回お話を伺ったクープ/テクニカルコーディネーターの庄司光裕さん(写真右)と、バンダイナムコフィルムワークスの関根美里さん

 インタビューに答えてくれたのは、今回の4Kリマスターを担当したクープのテクニカルコーディネーター・庄司光裕さん。劇場版「マクロス」はこれまで、VHSやLD、VHD、そしてDVD、Blu-rayとメディアの変遷に合わせて何度もソフト化されているが、今回のものはまず、何が違うのだろうか。聞いた。

庄司光裕 前回のBlu-ray版では、4Kスキャンをしていますが、修復作業やリマスターは2Kでした。今回は35mmのマスターネガを使って5K解像度でスキャンを行ない、ノイズやゴミ消しなどのレストアを施した後、4Kでリマスター作業を実施しています。

画像: ▲フィルムスキャナー「スキャンステーション」は、編集スタジオの横に設けられた気密室内に設置されている。室内はフィルムに一番いいと言われる温度、湿度に保たれている

▲フィルムスキャナー「スキャンステーション」は、編集スタジオの横に設けられた気密室内に設置されている。室内はフィルムに一番いいと言われる温度、湿度に保たれている

――以前の4Kスキャンと、今回の5Kスキャンでは、仕上がりの画質は違いますか?

庄司 違いますね。今回は、5Kスキャンでセンサーも16ビットと高性能になっていますから、解像度も色彩も向上しています。そして、前回のスキャンデータはスキャンマシンの構造上、結構揺れが残ってしまっていたのですが、今回のマシンではほぼ揺れが生じないので、見やすくなっていると思います。オリジナルネガの保存状態がよかったこともあり、新たにスキャンすることによって、より綺麗になっています。

画像: ▲超貴重な劇場版のネガフィルムの第一巻

▲超貴重な劇場版のネガフィルムの第一巻

――フィルム作品のリマスターでは、フィルムの粒状感をどこまで残すか、色彩をどう合わせるかなどが大事になってきますが、それらはどのようにチェックしたのでしょうか。

庄司 基本的には、我々からこういう画質はどうでしょうかという方向性を提案して、ビックウエストさん、バンダイナムコフィルムワークスさんに一度見ていただいて、方向性が決まったら、最終的に河森正治監督に確認していただきました。前回よりも良いものにしないと意味はないですし、ユーザーの方も期待しておられるでしょうから、今回は2024年版としてできることをきちんとやることに留意して作業を行ないました。

――粒状感はずいぶん減ったように感じます。

庄司 それは好みの分かれるところですね。僕自身も粒状感は出したい派なんですよ。ただ、河森監督は今も新作を作っていますので、今のアニメと感覚的に近いものを選ばれたように思います。ほかの監督ともいろいろな作品の作業をしていますが、最近では粒子の少ない方を選ぶ方が増えています。現在のデジタルアニメに近づいた感じですが、現代のアニメにしたいと思っているわけではないので、粒状性を感じられる程度には残しています。

――そのほかでは、どんな修正をしていますか。

庄司 昨年(2024年)発売した『マクロスゼロ』のBlu-ray Boxで初めて採用した、当社の「FORS AI」という技術を適用しています。名称の通りAIを使ってノイズ低減や細部補正、鮮明化、i/p変換、フレームレート変換などを行なうもので、大幅な品質向上を果たせました。フォーカスやピントがかなり向上しているのはこのためです。前回から時間も経っていますので、できることはかなり増えました。ゴミやキズも昔より消せるようになっていますし、今できる最大限の調整を施しています。

画像: ▲下の写真が「FORS AI」を適用させたものとなる

▲下の写真が「FORS AI」を適用させたものとなる

――ディテイルもかなり鮮明になっています。

庄司 そこは、今回適用させたFORS AIによって、埋もれていたディテイルが見えてきたのだと思います。FORS AIの効果がよく出ています。

――4K/HDRの制作ということで、色域も変わっていると思いますが、色についてはいかがでしょうか。

庄司 前回のリマスターとまったく同じ色にすることもできたのですが、今回はHDRで色域も広くなっていますから、それを加味した調整を施しています。河森監督に見ていだだくと、やっぱり綺麗だよね、という反応をいただきました。河森監督とはこれまでいろいろな作品を通して話をさせていただいていることもあって、やりたいこと(方向性)が分かっていますから、立体感のある絵で、特にライブコンサートのシーンでは(色味は)少し強調しています。

画像2: まさにデカルチャー!! 当時は見えなかったディテイルや色が甦った。4K版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』リマスターレポート

――河森監督のチェックはいかがでしたか。

庄司 河森監督は、ダメなものはダメと判断をしてくれる人ですから、監修には丸1日空けていたのですが、2時間半ほど、1回見いただいて、方向性が合致しました。こちらとの信頼感というか、お互いの目指す方向が一致していたし、今の河森監督の目で見て、これが最適なものだったのだと感じています。

――色の再現については、暗部の再現がひじょうに良くなっていて、劇場公開どころか、前回のBlu-rayでも見えなかったようなところまで細かく描き込まれていたことには驚きました。公開当時は見えないだろうところまで描き込んだ作り手の熱意にも驚きますが、そういったものが4K/HDR化で見えてきたことについてはいかがですか。

庄司 もちろん、今まで見えなかったものを見せたいという思いはあります。フィルムの粒子やノイズに紛れて見えなかったものもあるでしょう。単純に暗部を明るくすればもっと見えるようになりますが、そうすると暗部が浮いてしまう。それでは河森監督からチェックが入りますので、暗部を浮かせずに見えるところが潰れないようなギリギリのところを意識して調整しています。

 色味については前回のものからあまり外れないようにしていますが、色域がBT.2020ですから、フィルムに収録された全部の色が出てきます。以前はBT.709でしたから、はみ出してしまう部分は抑えたり、逆にどこを伸張するかを調整していましたが、今回はそれほど大きくはいじっていません。それでも現代のデジタル作画のようなピカピカな絵とは違う、グラデーションや深みのある色になっていると思います。

――戦闘シーンでは、戦艦のビーム砲が飛び交うシーンも鮮やかになっていました。

庄司 ビームの光や爆発は派手にしようと思えばもっとできるのですが、2時間の作品なので、派手すぎると目が疲れてしまいます。2時間見て疲れないくらいで、きちんと派手に感じるバランスを意識しました。透過光にしても、その光の中にあるものまで見えた方が良いか、見えない方が良いかなども考えて調整しています。HDRの恩恵を大きく感じられると思います。

――またこの作品はスピーディーなアクションも魅力です。ああいう動きの速いシーンなどはいかがでしょうか。

庄司 動きノイズ対策ですね。動きが多いシーンはビットレートも跳ね上がってしまい、レートを抑えるとブロックノイズが出てしまいがちです。そこは1コマ1コマ確認しながら、パラメーター調整やフレーム処理をやっています。

画像3: まさにデカルチャー!! 当時は見えなかったディテイルや色が甦った。4K版『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』リマスターレポート

――映像特典で収録される「天使の絵の具」ですが、これは本編とはマスターが異なると思います。4K化での苦労はありますか。

庄司 元々はOVA用の素材で、残念ながらSDのビデオマスターしか残っていませんでしたので、それを4Kにブローアップしています。これはぼくの担当部分ではないのであまり詳しくは話せませんが、アップコンやFORS AIの適用には、かなり試行錯誤したようです。

取材会の後、「天使の絵の具」を担当したクープ・岡田氏よりコメントが届いたので紹介したい。

岡田 「天使の絵の具」はビデオ加工されたSDアナログ・レターボックス映像がマスターであるため、フィルムから4Kリマスターする事が出来ません。如何に少ない情報から良い画質を引き出すか、かなり試行錯誤を繰り返しました。シャープネス強調成分など、本来フィルムには存在しなかった成分はノイズと一緒にリダクションしています。画面の部位・カットごと様々なAIモデルを組み合わせて調整しました。

 アップコンはSDから4Kに直接拡大というわけでなく、SDでの処理、中間サイズでの処理、4Kサイズでの処理、と段階を踏みました。段階ごとに複数パターンを作成していたので、結果的に数多くのバージョン処理となり、設定・確認に多大な時間を要しました。また、それらをパッチワークのように組み合わせて再構成するのも大変でした。

――一方で、Blu-rayの方のSDR化はどのようにされたのでしょう。

庄司 HDR化して完成したものをSDRに戻しています。HDRでは見えるけどSDRでは見えないなどの違いはありますが、印象が変わらないように調整しています。SDR(Blu-ray)でも、4Kリマスターの良さがしっかり分かってもらえる仕上がりになっていると思います。たとえば夜のバーのシーンはかなり暗いのですが、そこにロイ・フォッカーと恋人のクローディアがいる。クローディアはこれまで若干潰れ気味でしたが、今回はそこにいるのが分かります。できることは全部やりましたので、Blu-ray(SDR)でも綺麗になっているのを感じていただけると思います。

4K化で甦った映像をスクリーンでも! 劇場版マクロスの衝撃をぜひ再体験してほしい

 4K/HDRで甦った劇場版マクロスは、劇場公開当時の衝撃を再び実感できるものだった。それを映画館のスクリーンで再び見られるというのも素晴らしい。「マクロスF」や「マクロスΔ」など、最近の新作でマクロスを知った人にも原点である本作を見てほしいし、現代の作品と比べて見劣りするどころか、約40年前の作品かと驚くこと請け合いだ。4K ULTRA HD Ver.の「マクロス」をぜひお楽しみに。

画像1: - YouTube youtu.be

- YouTube

youtu.be

映画 40周年記念「超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか4K ULTRA HD ver.」

全国40の映画館にて2025年1月25日(土)より公開!

4K Ultra HD Blu-ray【初回限定版】公開日より上映劇場にて先行販売
【配給】ビックウエスト
【映画前売券付きブロマイド(全10種ランダム)】絶賛発売中

画像2: - YouTube youtu.be

- YouTube

youtu.be

This article is a sponsored article by
''.