Sonos Japanは、1月24日に発売を予定している新製品サウンドバー「Sonos Arc Ultra」(¥149,800、税込)とワイヤレスサブウーファー「Sonos Sub 4」(¥109,800、税込)についてのオンライン説明会、並びに実機を使った体験会を開催した。
Arc Ultraは、従来の同社フラッグシップサウンドバー「Sonos Arc」(販売終了、店頭在庫のみ)の後継モデルで、一台でイマーシブオーディオ再生に対応したモデルとなる。前モデルのArcは11
基のスピーカーを搭載していたが、Arc Ultraは14基のスピーカーで9.1.4の再生が可能になっている。
その進化について、Sonos特任オーディオ・システムエンジニア、ダグ・バトン氏が解説してくれた(オンライン説明会にて)。ダグ氏は既発売のスピーカーシステム「Era 300」や親製品のArc Ultraを担当したという。
ダグさんはまず、「SONOSは10年間に渡ってホームシアターに注力してきました。その目標は映画館のような臨場感を家庭に届けることでした」と語った。同社ではそのために様々な製品をラインナップしており、4年前に発売されたArcはアメリカ、イギリス、ドイツで未だに人気が高いそうだ。またSONOSユーザーの多くはホームシアターを楽しんでおり、60%近くがふたつ以上のホームシアター機器を所有しているという。ダグさんは、Arc Ultraをラインナップに加えることで、さらにホームシアターユーザーを拡大していきたいと考えているようだ。
近年は大型テレビの普及が進み、ホームエンタテインメント需要が拡大している。さらに動画配信やケーブルテレビでも高音質なコンテンツやドルビーアトモス対応番組が楽しめるようになってきたことを踏まえて、サウンドバーでもそれらに対応すべきだと考えたのだろう。
そのためにArc Ultraでは、本体の音響構造をいちから見直し、Arcの2ウェイ11スピーカーから、3ウェイ14スピーカーに変更されている(本体サイズはArcから幅が36mm大きくなり、高さが12mm、奥行が5.4mm減った)。
最大の変更点が、サウンドモーションと呼ばれる低音再生用ユニットだ。これは先にSONOSが買収したオランダ・マイト社の技術を応用したもので、ふたつの振動板を背中合わせに配置し、それを四隅にセットした4個のモーター(スピーカーのボイスコイル部分に相当)で駆動する。対角線上にある2個が上側の振動板を、残りの2個が下側をドライブするという。
このような形状にすることで一般的なスピーカーユニットよりも薄い形状を実現でき、Arc Ultraでも50Hzまでの低音再生を可能にしている。体感的にはArcの2倍の低音感だとダグさんは話していた。
このサウンドモーションを含めて、Arc Ultraに搭載されたスピーカーはすべて新規に設計されている。内訳はツイーターが7基(フロントL/C/RとサラウンドL/R、トップL/R)、ミッドレンジが6基(フロントL/C/Rにそれぞれ2基)、そしてサウンドモーションとなる。なお各スピーカーには独立したパワーアンプがあてがわれており、合計15ch(サウンドモーションユニットは上側用と下側用に2chぶん)のクラスDアンプを内蔵している。
なおサウンドバーだけでサラウンド再現ができるようにビームフォーミング技術も用いられており、壁や天井の反射を使って豊かな臨場感を生み出している。フロントL/Rと両サイドにあるサラウンドスピーカー、上部に配置されたトップスピーカーにウェーブガイドも組み合わせることで、最適な放射特性を狙っている。
独自の音場補正機能Trueplayももちろん搭載済。Arc Ultraでは本体に内蔵されたマイクを使って測定を行うQuicktuneにもサウンドバーとして初めて対応した。これにより、iOSだけでなくAndroidスマホでも測定ができるようになった。
同時発売されるワイヤレスサブウーファー「Sub 4」は、搭載するウーファーユニットは従来から変更されていないが、内部メモリーの拡充とプロセッサーが新規になったことで、さらにレスポンスのいい低音が楽しめるそうだ。無線接続はWiFi6にも対応。
ダグさんは、サブウーファーにサウンドモーションユニットを使わなかった理由について、「Sub 4などのサブウーファーには充分な筐体スペースがあるので、サウンドモーションユニットを使う必要はありませんでした」と説明してくれた。
オンライン説明会の翌日、Arc UltraとSub 4のサウンド体験会が、都内のマンションで行われた。幅4m強✕奥行6m強ほどのリビングスペースに65インチテレビとArc Ultra、Sub 4さらにリアスピーカーとしてEra 300を2台設置、3mほどの視距離で配信やブルーレイソフトの音を確認させてもらった。
体験会の冒頭、SONOS Japan合同会社 代表の吉田庸樹さんから、今回のArc Ultra発売についての解説が行われた。
同社では日本のサウンドバー市場について、1〜2万円の普及価格帯と、10万円オーバーのハイエンド製品に二極化していると見ているそうだ。SONOSのサウンドバーは後者に属しており、当然ながら音質やサラウンド再生について高い期待に応える必要があると考えている。
SONOSは、昨年末に発売したワイヤレスヘッドホンの「Ace」が若い世代に好評で、ブランドの認知も広がったそうだ。今回は、そこに最高級サウンドバーとしてArc Ultraを投入することでブランドイメージの向上を図ろうという狙いだろう。なおAceとArc Ultra(Arcなども対応)はワンタッチで音のスワッピングが可能で、組み合わせて使って欲しいという思いもあるのだろう。
続いてArc Ultraのデモに移る。ArcとArc Ultraを同じテレビラックにセットし、新旧の音の違いを聞かせてもらう。なお両モデルともTrueplayで測定を行っており、部屋に最適化したサウンドを再生しているとのことだった。
Apple Musicからビートルズやプリンスのドルビーアトモス音源を聞かせてもらう。Arcでもヴォーカルがクリアーで、試聴位置の横にまで音が広がってくる心地いい再生が楽しめる。これも充分ハイエンドな音だと思ったが、Arc Ultraに切り替えると音の厚みが一変する。
サウンドモーションが加わったことで低音が豊かになり、全体の音量感までアップしたように感じる。同時に高域の再現性も改善され、高さ方向の情報が増えてきた。真後ろまでとは言わないが、横方向の包まれ具合も改善された印象がある。上記の通りArc Ultra単体で50Hzまでの再生が可能だが、Sub 4を加えると25Hzまでの低音が楽しめるそうだ。
それぞれの楽曲でリアスピーカーのEra 300とサブウーファーのSub 4を加えたシステムに切り替えてもらうと(SONOSアプリで簡単に可能)、さらに空間が密になり、サラウンドの包囲感も格段に上がる。
続いてピンク・フロイドの『狂気』のドルビーアトモス音源から「Time」を再生してもらう。Arc Ultraのサウンドバーだけでも、イントロの秒針や目覚ましのベルが様々な方向から響いてくるし、その後のドラムの低音、ヴォーカルの豊かさがしっかり感じ取れる。さらにEra 300とSub 4を加えると、各方向から響く音尾の精度、細かさが明瞭になり、低音もお腹にまで響いてくる。サウンドデザイナーがドルビーアトモスで狙った立体音響体験がしっかり実現できていると感じた。
2h音源からMrs. Green Apple「ライラック」を再生する。今回はArc Ultraのアップミックス機能を使ったサラウンドサウンドで聞かせてもらったが、アップミックスによる違和感もなく、自然な広がりを持った音が楽しめた。リビングで楽しむなら、こういった使い方もありだ。
映画ソフトはドルビーアトモス収録の『トップガン マーヴェリック』と『デューン 砂の惑星PART2』を使用。Arc UltraはeARC対応のHDMI端子を備えているので、ブルーレイプレーヤーをeARC対応テレビに、さらにそのテレビとArc UltraをそれぞれHDMIケーブルでつないでおけば、ドルビーアトモスも簡単に楽しめる。
『トップガン〜』は冒頭の「デンジャー・ゾーン」が小気味よく響き、同時に戦闘機の発艦・着艦の細かい効果音もしっかり再現されるなど、ディテイル再現力の確かさも確認できた。続く基地内の会話でも、セリフが明瞭に聞き取れる。Era 300とSub 4を加えると音場が下支えされ、映画館を彷彿させる空間が構築された。合計40万円ほどのシステムとのことだが、このスマートさでこのサラウンドが楽しめるのは大きな魅力だ。
『デューン〜』では、Aceとの音声スワップも体験した。Arc Ultraで再生している状態で、Aceの右イヤホンにあるコンテンツキーを長押しすれば、音声がAceから聞こえるようになる。その場合Arc Ultraで9.1.4にデコードした音源をヘッドホン用に変換、伝送しているのでサラウンド感を持った音声として再現できるわけだ。
実際、砂漠の戦闘シーンでオーニソプター(羽ばたき飛行機)が天井側から接近してくるカットでも、きちんと高さ感を持った音として聞こえてきた。深夜のヘッドホン試聴では有用な機能になるのは間違いない。なお担当者氏によると、今年夏頃に予定しているSONOSアプリのアップデートで同時に2台のAceを接続できるようになるという。実現すれば夫婦で一緒に深夜の映画視聴も楽しめるわけで、期待したいところだ。
Arc UltraはSONOSサウンドバーの新世代フラッグシップとして、低域再現性やビームフォーミングによるサラウンド感の演出などの多くの点で進歩を遂げていた。まずはサウンドバーでホームシアターをスタートし、次はサブウーファー、そしてリアスピーカーといった具合にシステムをグレードアップしていくのもいいだろう。SONOSスピーカーならアプリの設定だけでそういった展開ができるのも魅力だ。(取材・文:泉 哲也)