ふと、英国のロックバンド“レッド・ツェッペリン”のアルバム『イン・スルー・ジ・アウト・ドア』を思い出した。この作品には6種類のジャケットがあって、それらはつまり「ひとつの風景」を同時に6つのアングルから撮ったものとなっている。6つの断面を合わせることで、「ほぼ360度となった一瞬」が立ち上がるというわけだ。

 この映画で繰り広げられているのは、夏の終わりの一日における、5つの物語。自主映画のヒロインをオリジナリティあふれる表現で説得する監督(あの有名映画『シザーハンズ』をこんな風に口説き文句に使うとは!)、バスを待つ男たち、盗んだ打ち上げ花火を高台で打ち上げようとするヘビースモーカーの青年と彼に尽くす女性、クーラーのリモコンをなくした二人の酒好きの女性、カフェでバイトするややオタク気質な女性……。

 実は彼らは(面識はないかもしれないが)近所に生活していて、しかも5つの物語には重複する人物もいる。そして、「お祭り」に関する話題が、会話のどこかに必ず出てくる。それは、花火が見ものの、毎年開催されている催しで、そこに住む住人の間では一大イベントであることも伝わってくる。でも登場人物たちは「お祭りに行く気はない」。このひねりが痛快だ。

画像: 気鋭監督・気鋭俳優による、新時代の会話劇『お祭りの日』。お祭りの日に、お祭りに行かない人たちの5つの物語

 バラバラであっても不思議ではないストーリーが結びついて、渦を描いてゆく面白さ。と同時に浮かび上がる、人間の、なんともいえない哀感。ユーモアとペーソスが、湿っぽくならないまま、しっかりある。監督は堀内友貴、主演は米良まさひろ。ミュージカルや声優の分野でも高く評価される須藤叶希も、さすがの存在感を発揮する。第24回TAMA NEW WAVEコンペティション審査員特別賞受賞作品。

映画『お祭りの日』

11月2日(土)渋谷・ユーロスペースほか全国順次公開

出演:米良まさひろ 斎藤友香莉 須藤叶希 五十嵐諒 湯本充 塚田愛実 花純あやの 堀内友貴 中村悠人 岡田直樹 北林佑基

監督・脚本:堀内友貴
宣伝:細谷隆広 配給:KUDO COMPANY
(2024/89分/スタンダード/カラー/ステレオ/日本)

This article is a sponsored article by
''.