クリプトンKS-55HGは省スペースで音の良いスピーカーの最右翼
Active Speaker System
KRIPTON
KS-55HG
¥142,780(ペア) 税込
● 型式:アンプ内蔵2ウェイ2スピーカー・バスレフ型
● 使用ユニット:30mmリングラジエーター型トゥイーター、64mmコーン型ウーファー
● アンプ出力:35W×4
● 接続端子:デジタル音声入力2系統(光、USB Type B)、アナログ音声入力1系統(3.5mmステレオミニフォーン)
● 寸法/質量:W109×H159.5×D203.4mm/約2kg
● 問合せ先:(株)クリプトン オーディオ事業部 ☎ 03(3353)5017
昨今、ネット動画コンテンツの高品質化には目を見張るものがあるが、テレビ単独の再生では、大画面化、高画質化が著しい映像に比べると、どうしても音質が見劣りしやすい。実際、私自身、「省スペースで使える音の良いスピーカーが欲しいのですが……」と相談されるケースが少なくない。
ここですぐに思い浮かんだのが、数多くの名スピーカーシステムを送り出してきたクリプトンが手がけた小型アクティブスピーカーKS-55HGだ。アナログ入力(3.5mmミニフォーン)、光デジタル入力に加えて、USB Type B(PCM 192kHz/24ビット、DSD 5.6MHz対応)入力を装備。Bluetooth接続ではLDAC、aptX Adaptive(いずれも96kHz/24ビット対応)をサポートするという本格派だ。
オーバル形状の可愛らしい外観が特徴的だが、手に取るとずしりと重く、アルミ押し出し材エンクロージャーの精巧な造りが見て取れる。しかもフロントバッフルと背面もアルミニウム製という徹底ぶりで、このあたりは明らかにHi-Fiスピーカー設計の流儀だ。
30mm径トゥイーターと63.5mm径ウーファーとによる2ウェイシステム(ユニットはいずれもTymphany社製)。それぞれ独立した35W出力のクラスDアンプで駆動するアクティブバイアンプ方式としている。
本体色はシルバー・メタリック、レッドに加え、ゴールド・メタリックを追加。ゴールドとはいえ、派手な金ピカではなく、落ち着きのある大人ぽい風合いで、高級感がある。
ハイレゾ音楽配信を上質かつ情感豊かに描く
まずスピーカーとしての素姓を把握するために、ハイレゾ音楽配信サービスのTIDAL(タイダル、日本未サービス)からヴォーカル、ピアノ、クラシックと聴き慣れた楽曲をMacBook Air経由でUSB接続し再生してみると、ゆったりとした落ち着きのある上質なサウンドで、スムーズな空間の広がりが新鮮だ。
『DESPERADO/イーグルス』(192kHz/24ビット)の再生では、雑味のない緻密な響きと、音離れの良さが特徴的だ。ピアノの演奏をバックに歌うドン・ヘンリーの声は実在感があり、しゃがれ声もざらつくことなく、情感豊かに描き出して見せた。
このサイズのスピーカーの場合、低音が膨張したり、歪みっぽくなったり、音量を上げていくとどうしてもエンクロージャーの弱さが気になってしまうことが多いが、KS-55HGについてはそうした不安は皆無。この造りの良さはさすがだ。
セリフ、音楽、効果音を曖昧にせず、明瞭度高く描く
今回のメインテーマであるネット動画での再生や如何に。今回はMacBook Airを使用し、Apple TVアプリから映画『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を再生。ディスプレイは曲面ワイドのLGの34インチ有機ELモニター34GS95QE-Bを用いた。
冒頭部から雄大なオーケストラサウンドとともに、神秘の星パンドラの森が映し出されるが、かすかな風の音、虫の声、鳥、動物の鳴き声が、遠近感をしっかり感じさせながら鮮明に描き出される。
体を覆い包むようなサラウンド感こそないが、微細な音の描写が克明で、しかもそれぞれの音源の距離感の違いまで描き分けるため、森の奥独特の静寂な空間に引き込まれていると錯覚するほどだ。
KS-55HGは画面の両サイドにすっきりと設置できるため、声の定位の良さは当然。主人公ジェイクの太く、厚い声から、胸板の厚さまでイメージできるほどだった。優しく歌うネイティリの声の、息づかいの温かさに、ついつい聴き入ってしまった。
冒頭シーンで感心したのは、ニュアンス豊かに再現するセリフを中心に、作り込まれた効果音、雄大に拡がる音楽と、それぞれの音の階層が曖昧にならず、高い明瞭度で描き出されたことだ。優れた位相特性の賜物と言っていいだろう。
チャプター23、ジェイクとネリの子供たちが海に飛び込むシーンでは、水しぶきが細かく勢いよく飛び散る。さらに海底近くまで泳ぎ、息継ぎに海上に頭を出すが、この時の水圧の変化の描き分けが絶妙。水中と水上の空間としての空気感、気配の違いをここまで描き出すことに驚いた。
パソコンのディスプレイでも表示能力が高まっており、想像以上の高画質でネット動画が楽しめる製品が増えている。ただ、音質面の品位が映像面に比べて劣る製品が多いのが実情。クリプトンのアンプ内蔵小型スピーカーKSシリーズはそうした音質強化に最適な製品群だ。今回はデスクトップ再生でも感動できる音質を目指し、クリプトンKSシリーズの最新かつ最上位機KS-55HGをチョイス。当初13インチMacbook Airと連携していたが、KS-55HGがあまりにもスケール感に優れていたので、ディスプレイに急遽LGの34インチ曲面有機ELモニターと組み合わせてみた
視聴に使った機器
● 有機ELディスプレイ:
LG 34GS95QE-B オープン価格(実勢20万円前後)
結論
高分解能で空間も広い。65インチテレビとの組合せでもOKだ
分解能の高さといい、滑らかな空間の拡がりといい、あるいはここという場面での吹き上がりの良さといい、どれもクリプトンの血統を感じさせるもの。今回は曲面ワイドの34インチモニターと一緒に視聴したが、55インチ、65インチ画面との組合せでも十分通用するパフォーマンスだった。
本記事の掲載は『HiVi 2024年秋号』