クリエイティブメディアの完全ワイヤレスイヤホン「CREATIVE Aurvana Ace」「CREATIVE Aurvana Ace2」が9月以降、期間限定特価で販売されることが決まった(終了時期未定)。ワイヤレスイヤホンのみならず、昨今はHiFiオーディオ製品の価格改定と聞くと、まず値上がりを連想してしまうが、今回は“値下げ”だ。「Aurvana Ace」は¥20,780(税込)が¥14,800(税込)に、「Aurvana Ace2」は¥23,800(税込)が¥19,800(税込)となる。今までにないシリコン製の発音ユニットであるMEMSドライバーを搭載する完全ワイヤレスイヤホンが、2万円を切る手頃な価格で手に入るのはうれしいニュース。この機会に改めて「Aurvana Ace」「Aurvana Ace2」のサウンドを詳しく紹介しよう。
完全ワイヤレスイヤホン
クリエイティブメディア
「CREATIVE Aurvana Ace2」
¥19,800(税込)
●主な仕様
●Bluetooth規格:Bluetooth 5.3●対応コーデック:SBC、AAC、aptX、aptX Adaptive(96/24)、aptX Lossless、LE3●搭載ドライバー:10mm径ダイナミックドライバー、xMEMSドライバー●再生周波数帯域:5Hz~40kHz●ノイズキャンセル機能:対応(アダプティブ ハイブリッドANC)●外音取り込み機能:対応●Super X-Fi:〇(アプリにて対応)●連続再生時間:最大約6時間、充電ケース併用最大約24時間●防滴性能:IPX5相当●充電:Qi互換ワイヤレス、USB Type-C
「CREATIVE Aurvana Ace」
¥14,800(税込)
●主な仕様
●Bluetooth規格:Bluetooth 5.3●対応コーデック:SBC、AAC、aptX、aptX Adaptive(96/24)、LE3●搭載ドライバー:10mm径ダイナミックドライバー、xMEMSドライバー●再生周波数帯域:5Hz~40kHz●ノイズキャンセル機能:対応(ハイブリッドANC)
●外音取り込み機能:対応●Super X-Fi:〇(アプリにて対応)●連続再生時間:最大約6時間、充電ケース併用最大約24時間●防滴性能:IPX5相当●充電:Qi互換ワイヤレス、USB Type-C
小型・軽量で低歪、ICやLSIと同様の手法で製造される「MEMSドライバー」
まずは、まだ耳慣れないユニットである「MEMSドライバー」について紹介しよう。ドライバーを開発したアメリカのxMEMS Labsは、生まれたばかりの会社。ICやLSIといった半導体部品がシリコンウェハー上で製造されることはご存じの人も多いと思うが、MEMSドライバーも同じようにシリコンウェハー上で製造される半導体だ。音を出す仕組みは観音開きのドアが開閉するようなイメージで、2枚の振動板がパタパタと動いて音が出る。さらに詳しく振動板をみると、シリコン製のメンブレン(膜)の上にピエゾアクチュエーターが重なった構造になっている。ピエゾ素子は圧電素子のことで、電圧を加えると変形する性質がある。この性質を利用してシリコン製の振動膜を動かして発音する仕組みだ。
ただし、これまでに実用化されているピエゾドライバーには、アンプへの負荷が大きいなどの課題もあり、搭載には苦労も多いようだが、本製品では、MEMSドライバー専用アンプを組み合わせることで解決している。ドライバー自体はひじょうに小さく、しかも薄く、専用アンプも極めて小さいので、イヤホンなどへの内蔵も容易。小型軽量で低歪みという特長を持つだけでなく、耐久性が高く、埃や水にも強い。しかもLSIやICと同じように、製造時の性能のバラツキが少ないことも特長。普及が進めば、大量生産によってさらに安価での安定供給が可能になる、といいこと尽くめのドライバーなのだ。
新機軸のMEMSドライバー搭載に加え、LE Audio対応など最新機能もサポート
Aurvana Ace/Ace2は、MEMSドライバー搭載だけでも注目度の高い製品だが、完全ワイヤレスイヤホンとしても最新鋭の機能を備えている。共通する特長としては、Bluetoothの最新規格であるLE Audio(LC3コーデック)に対応していること、フィードバック/フィードフォワードによるハイブリッドANC(アクティブノイズキャンセリング)機能と外音取り込み機能を持つこと、対応コーデックもLC3の他、SBC、AAC、aptX、aptX Adaptive(96/24)と豊富なことが挙げられる。
上位機種のAurvana Ace2となると、Qualcomm Snapdragon Soundに対応しており、ノイズキャンセルは「QUALCOMMアダプティブANC」となるし、対応コーデックもCD品質のロスレス再生が可能なaptX Losslessもサポートするなど、主にオーディオ機能が強化されている。
バッテリー寿命は、充電ケース込みの最大時間で約24時間。防滴性能はIPX5相当。充電ケースはワイヤレス充電規格「Qi」に対応。各種の設定などが可能や「Creative App」(無料 Android/iOS)も用意されており、最新の完全ワイヤレスイヤホンとしても優秀な機能を備えている。
サウンドは高域までスッと伸び、低音の量感、音の広がり感も秀逸
では、実際に製品の音を聴いてみよう。まずはAurvana Aceから。プレーヤーには、「iPhone14」とAstell&Kern「A&futura SE300」を組み合わせ、Bluetooth接続で聴いている。
その音質は、音の広がりが豊かで開放感のある鳴り方をするのが印象的。高音の伸びも澄んでいて気持ち良いし、音色も自然で聴きやすい。これはMEMSドライバーの優れた特性と言えるだろう。低音もしっかりと力強く出るし、オーケストラの雄大さやスケール感も充分に伝わる。ユニットは、MEMSドライバーと10mm径のダイナミックドライバーの2基で構成されていることもあり、低音域までしっかりと確保されている。その低音の鳴り方はリズムを力強く刻む元気のよいタイプで、変にボコボコと膨らむこともなく量感も優れている。
『宇多田ヒカル/Science Fiction』を聴くと、ボーカルが鮮明に浮かび、包み込むように広がるバックの演奏も豊かなもの。実体感のある音像と開放感のある音場で気持ちのよい鳴り方だ。くっきりはっきりの聴きやすい音にまとめられており、さらに高域の鮮明さやスムーズさ、低音の伸びや反応の良さもしっかりと感じられ、バランスの良さだけでなく音質としてもなかなか優秀なモデルと分かる。
続いて、上位モデルのAurvana Ace2を聴く。基本的にMEMSドライバー+10mm径ダイナミックドライバーという構成は共通で、オーディオ的な部分はほぼ同じということだが、前述の通りSnapdragon Soundに対応するなど、オーディオ的により質の高い音が楽しめるようになっている。
音質は、くっきりとした聴きやすさなどの基本的な傾向は共通するが、よりしなやかで繊細な表現もできると感じる。クラシックのオーケストラ演奏を聴くと、弱音で演奏する導入部でも個々の楽器を鮮明に聴きとれるし、音色も自然。低音もローエンドまでしっかりと伸び、大太鼓を力強く叩いた時の感触なども明瞭だ。音場の広がりやスケールはAurvana Aceも充分に雄大だったが、Aurvana Ace2になると、勢いの良さやニュアンスの変化なども分かるようになり、より精密な音になっていると感じる。
『宇多田ヒカル/Science Fiction』でも、くっきりとしたボーカルでニュアンスも豊かに感じられる。感触としてはより滑らかになった印象で、聴き心地の良さもさらに増す。長時間気持ち良く音楽を楽しめる音だ。
ちなみに、ANC機能は感応型のアダプティブタイプとなり、効果はかなり優秀で、低音域の暗騒音などはきれいに消音してくれるし、駅のプラットフォームのような騒がしい場所でも、人の声やざわめきなどをほぼ気にならないレベルまで低減できる。自然な消音で、日常的に使いやすいノイズキャンセル機能を求める人ならば、Aurvana Ace2がおすすめだ。
音場感の再現性に優れていて、映像配信の視聴にも好適!
Aurvana Ace2は、くっきりとして聴きやすい音だけでなく、音場の広がりや空間再現が得意なので、もうちょっと踏み込んで、映像コンテンツの再生を試してみた。
クリエイティブメディアには独自の立体音響技術「SXFI」がある。これは専用の「SXFI APP」を使って、両耳と正面の顔の写真を撮影、そのデータをクラウドにあるデータベースと照合して、個人の聴覚特性に最適化したモデル(アルゴリズム)を生成する技術。つまり個人ごとに異なる耳の形や顔の形状による音の聴こえ方の違いを考慮して、ステレオ音源をよりリアルで立体的な音で楽しめるものとなる。Aurvana Ace/Ace2はSXFIアプリとの組み合わせに対応しており、SXFIアプリ(スマホの音楽アプリで管理している手持ちの楽曲のみ再生可能。ストリーミングや映像配信には非対応)からの再生で、聴き慣れた音源を立体的な音場で楽しむことができる。
Aurvana Ace2で試すと、音の広がりがより大きく、より自然になる。ボーカルも頭の中に音像が立つのではなく、目の前に音像が出現するようなイメージだ。この立体感はなかなか面白いし、SXFIのアルゴリズムが第4世代(Gen4)に進化していることもあり、より広がり感のある豊かな音場を楽しむことができた。
筆者はいわゆる空間オーディオのようなマルチチャンネル収録の音源を聴くのが好きで、スピーカーやヘッドホンでよく楽しんでいるが、2chコンテンツでも空間オーディオのような感触で味わえるのがいい。それでいて、もともとステレオ収録(2ch)の音源なので、コーラスがぐるぐると頭の周りを回ったり、楽器が真後ろから聴こえてくるような演出はなく、あくまでもステレオ再生の音場がより立体的になる。ぜひ、試してほしいと思う。
SXFI APPは今のところ音楽(ステレオ音源)のみ、かつSXFI APPを通しての再生のみ効果をかけることができ、他のアプリでの再生音をSXFI化することはできない。つまり、音楽配信サービスや動画配信サービスの音はSXFIで聴くことはできないのだ。だが、これまでの経験から音場感が優秀なイヤホンは、ダウンミックスのステレオで聴いてもなかなかのサラウンド感が得られるので、ここでは続けて、映像配信サービス(Netflixなど)で映画を再生してみた。
『THE FIRST SLAM DUNK』では、オープニングの曲も立体感豊かだし、体育館で行なわれる白熱した試合の様子もなかなかのサラウンド感だ。ドリブルしているボールの弾む音、ガードのために目の前に立つ相手校選手の動きや息づかい、そしてキュッキュッと鳴る独特の足音が、広がりの豊かな音場もあってリアルに感じる。
Netflixでは最近、ステレオ再生機器やイヤホン視聴のユーザーに合わせてステレオを「空間オーディオ」にしたコンテンツが増えていて、上等なサラウンド感が味わえるようになった。空間オーディオはいわば2チャネル再生向けのバーチャルサラウンドだが、Aurvana Ace2で聴くと、バーチャル再生特有の不自然さもなく、前後左右に豊かに広がる音場を楽しむことができた。
空間オーディオ版の『ジョン・ウィック:コンセクエンス』では、冒頭の地下水路をあるく男の声の反響もリアルでサラウンド再生と遜色がないし、なによりジョン・ウィックが荒縄を巻いた板で打撃の稽古をする時の激しい打突が、身体を揺さぶるぐらいの迫力で響く。低音感にしてもサブウーファーを備えたサラウンドシステムに迫るものだ。ビル内や都市を舞台にした死闘やカーチェイスでも音の移動感が豊かに伝わるし、自然でクセのない音響もあって気持ち良く楽しめた。Aurvana Aceシリーズのユーザーとなった人はぜひ、映画なども試してほしいと思う。
より身近な価格になって、魅力も倍増した「Aurvana Aceシリーズ」にぜひ注目を!
デビュー当初から、Aurvana Ace/Ace2は最新のMEMSドライバーの良さと自然な音をうまくバランスした出来の良い製品だと思っていたが、2万円を切る身近な価格になったことで、その魅力をより多くの人に楽しんでもらえるだろう。
機能的にもLE Audio対応やアクティブ・ノイズキャンセル機能なども完備しており、長く愛用できると思う。手頃な価格で気軽に使えて音もいい、さらに他の人とはひと味違う製品がほしいというオーディオファンには、ぜひAurvana Ace/Ace2に注目してほしい。