近年、話題作を意欲的に公開している・いまおかしんじ監督の最新作『愛のぬくもり』が、いよいよ7月6日(土)より公開を迎える。男女の入れ替わりという王道的な展開を採用しつつも、さすがに氏の映画だけあって、一筋縄ではいかない奇想天外な結末を魅せる注目の一作。ここでは、映画初出演にして、男性と中身が入れ替わってしまうという重要な役=横澤サトミを演じた風吹ケイにインタビューを実施。撮影の思い出から、今後の抱負を聞いた。
――映画初主演おめでとうございます。映画初出演、いかがですか?
ありがとうございます。とにかく緊張していて、撮影していた当時のことはあまり覚えていない……というのが正直なところです。
――出演はどのように決まったのでしょう?
お声がけをいただいて、出演させていただくことになりました。最初に、監督とプロデューサーの方とお会いして、お話しさせていただきました。
――その時にどのような話をしたか覚えていますか。
一般的なオーディションのように、お二人の前でお芝居をお見せするのかと思って、しっかりと台本を読み込んで、感じたり、疑問に思ったことをメモしていたので、めちゃくちゃ質問したのは覚えています。監督は一つひとつについて、本当にていねいに答えてくださいました。
――役や作品に対する理解もより深まった?
はい。すべては台本に書いてあるとは言え、ほとんどお芝居が初めての私からしたら分からないことだらけだったので、本当にたくさん質問しました。監督は、1を聞いたら10を答えてくださる感じだったので、登場人物一人一人の色(キャラ)を、より濃く感じることができましたし、(キャラクター)一人一人が自己主張をはっきりとしてきたようで、なんだかみんな自由にやっていていいなって思いました(笑)。
――今回演じられた横澤サトミの印象について教えてください。
サトミはレズビアンですけど、どちらかと言えば男勝りで、相手のことを彼女って言っているので、きっと男の立場なんだろうと思いました。加えて、結構サバサバしているようにも感じましたね。
実際に監督とお話した時には、(サトミは)サバサバはしているけれども、女性ではあるので、愛情深い部分とか、(人間として)温かい部分を持っているので、それを役の中に落とし込めたら、人間味が増すんじゃないかなって言っていただいたんです。そのおかげで、男と女の割合をどう演じたらいいのかということが、なんとなく見えてきように思いました。
――今回のお芝居は、元の役(女性)があって、さらに中身が入れ替わって、見た目は女性だけど中身は男、という芝居をしないといけないわけですから、通常よりたいへんですね。
本当にそうなんです。本読みの段階では、皆さんもどっちがどっちか分からなくなってしまうこともあって(笑)。
初めは、体が入れ替わった状態――私が男のセリフを読んで、小出(恵介)さんが女のセリフを読んで――で読み合わせをしていたのですが、やっぱり最初はうまくかみ合わなくて。そこで、1回逆にして、私がそのままサトミをやって、小出さんが(辺見)たかしやったら、めちゃくちゃスムーズに行ったんです。まあ、当たり前と言えば、当たり前なんですけどね。そういうテストを経て、お互いが思っていること、感じていることを、より理解できるようになりました。
――少し話が戻りますが、その前の段階、最初に台本を読んでのサトミの役作りについて教えてください。
まずは、台本読み込んで、思いついたことをひたすらメモしていきました。結構、メモ魔なんです(笑)。あとは、体が入れ替わってしまうわけですから、男性目線で女性の体を見たらどう思うのか? その気持ちを理解するために、女性の体(他人)を見るという経験もしてみました。まあ、役作りからはズレているのかなぁとも感じましたけど(笑)、いろいろな発見もありましたし、それが活きているシーンもありますので、ご期待ください。
――ちなみに感情の表現については、ご自身のこれまでの経験の中から持ってきた感じですか? それとも何かを参考にしたのでしょうか。
どちらかと言えば、前者、自分の経験を元にしています。お芝居の経験はありませんでしたけど、ワークショップには通っていたので、そこで教わった、日頃の気持ちとか、人の観察をしておきなさいということを日々実践していましたから、そうして貯めた数少ない引き出しをひたすら開けて、これはこんな感じかなという風に、想像しながら当てはめていきました。
――最初の撮影(クランクイン)はどこだったのでしょう?
いきなり入れ替わった状態での、男スタートでした。(たかしの)書籍の担当者のところへ行って、私(サトミの体)が小説を書きますって、言うシーンでした。
――いきなりそこですか! タコ踊りもしていました。
いきなり、踊ってみようかって言われて! あっているのかは分かりませんでしたけど、頑張って踊りました。本格的なお芝居は初めてでしたから、おそらく、どこから始まっても(緊張感は)変わらなかったと思います。
――たかしの実父を演じられた冨家さんは監督にそっくり、というのはおいておいて(笑)、監督の演出はいかがでしたか?
いきなり奇想天外なことを仰られるので、戸惑うこともありましたけど、(その場で)チェックを見たら、もう様になっていて、何も違和感がないんです。
――結構、台本通り?
いえいえ、タコ踊りするとかは書いていませんよ。
――(風吹さんの)芝居は止まらなかったのですか?
さすがに“えっ”ってなりましたけど、周りの演者さんは普通に対応されていたので、私がNGを出すわけにはいきませんから、頑張って耐えました。
――酒場のシーンはいい雰囲気でした。
そうですよね。最後の方で、●●●●って言われるところはグッときて、本当に泣きそうになりました。いいシーンになったと思います。
――話は飛びますけど、中身が入れ替わった後で、入れ替わっているんですと説明しますけど、誰も信じてくれません。演じていてどうでしたか?
こちらとしては、本当に信じて欲しくて説明しているわけですから、分からんよなっていうよりかは、何で分からへんの、なぜ分からないのって思いながら演じていました。
――本作では、セクシーシーンにも挑戦しています。撮影時、あるいは完成した映像を見ての感想をお願いできますか。
最初にセクシーシーンがあると聞いた時は、“あるんや”っていう感じでした。いままで経験もないですし、そうした作品をきちんと観たこともなかったので、シルエットで映すとか、軽い雰囲気なのかなと思っていたんです。けど、監督の他の作品を拝見して、なるほど、そうなるのかって思いました。
撮影では、本当に小出さんに助けていただきました。(シーンには)筋書はありますけど、セリフはほとんどありませんから、ある意味自由演技みたいな感じなんです。小出さんは、ここにカメラがあるから、そこに手は置かないほうがいいよと言ってくださったり、カメラに写らないように体の向きや動きをリードしてくれたりと、まさに手取り足取り助けていただきました。さすがだな~って感動しました。小出さんのサポートありきですけど、なんだが一番、たかしになり切れたように感じています。
――別のセクシーシーンで、「どうやって挿れるんだ」っていうセリフは面白かったです。
めちゃくちゃ録り直しましたよ(笑)。でも、そうした男女の感じ方の違いも表現されていて、よくよく考えると、すごく楽しめる作品になっていますね。
――上の質問が作品の最後の質問でいいのかというのはさておき(笑)、今後、お芝居の活動はどうしていきましょう?
ずっと目標として挙げさせていただいている小池栄子さんのように、幅広いお芝居ができる女優になれるよう、努力していこうと思っています。
――小池さんは、以前取材したことがありますけど、結構、雰囲気が似ていますね。
ありがとうございます。めちゃめちゃ寄せています(笑)。今後、さらにいろいろ作品を通して、小池さんのような活躍できるように頑張ります。
――最後に、今後演じてみたい役柄とか設定はありますか?
正直、現段階ではどんな役をいただいても嬉しいですし、全力で頑張りたいと思っています。強いて挙げるとすれば、私は学生時代にずっと吹奏楽部で頑張ってきたので、それこそ『のだめカンタービレ』のようなオーケストラものとか、吹奏楽ものをやってみたいです。
映画『愛のぬくもり』
2024年7月6日(土)より、新宿K’s cinemaほか全国公開
<キャスト>
小出恵介 風吹ケイ
新藤まなみ 荒木双葉 川瀬陽太 田中幸太朗 冨家ノリマサ 中嶌駿介 伊藤和哉 華岡 稟 一ノ瀬紗那
<スタッフ>
脚本・監督:いまおかしんじ 企画:利倉 亮、郷 龍二 プロデューサー:江尻健司、北内 健 アシスタントプロデューサー:竹内宏子 撮影:吉田淳志 照明:オカザキタカユキ 録音:山口 勉 編集:蛭田智子 助監督:小泉 剛 ヘアメイク:甲 菜那 スタイリスト:手塚 勇 スチール:阿部拓朗 制作:洲鎌恒男 音楽:宇波 拓 整音・音響効果:藤本 淳 キャスティング協力:関根浩? 営業統括:堤 亜希彦 制作:レジェンド・ピクチャーズ 配給宣伝:ムービー・アクト・プロジェクト 配給協力:ミカタ・エンタテインメント
2024年/日本/ 91分/カラー/ステレオ/R-15作品
(C)2024「愛のぬくもり」製作委員会
<ストーリー>
ある日突然、街中でぶつかって階段から転げ落ち体が入れ替わってしまった小説家の辺見たかしと、美容師の横澤サトミ。
なんとかお互いになりきりそれぞれの生活を送ることになるが、たかしの妻・由莉奈には男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男ができたことを理由に別れを切り出されてしまう。
ふたりは互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながらも奮闘するが、やがて事態は思ってもみない方向へ……。
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