門脇麦の出演でも話題を集めること間違いなしの一作。内容もまた、実に丁寧に、ひとつひとつの物事をそっとひもとくような感じで進み、つまり、注意深く物語の推移を追うことのできる者に大変な充足感を与える作品であると断言していいだろう。プロデューサーはホウ・シャオシェン、監督はシャオ・ヤーチュエン。すなわち名コンビが作品づくりに全面的に関わっている。ヤーチュエン監督のこれまでの映画は、シャオシェンがプロデュースしてきたが、どうやら今回の『オールド・フォックス 11歳の選択』が最後になるかもしれない。というのも、シャオシェンがこれを最後のプロデュース作品にすると発表しているからだ。

 物語は1989年から90年の台北を軸に展開される。日本でいえば平成初期、景気も良くて希望の空気が存在した頃だ。「不動産の価格が高騰していた時期」でもあったのは台北でも同様で、その事実が、登場人物の動きを左右していく。物語の中心となるのはシングルファーザーであるリャオタイライ、息子のリャオジエ、地主のシャ。リャオタイライは不器用ながらまっすぐ生きる人物で、趣味でテナー・サックスを吹く。得意曲は「ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ」。ナット・キング・コール、マイルス・デイヴィス、ビル・エヴァンスもとりあげたアメリカン・ソングだ。リャオジェは自分たちの家や店を手に入れて、父と穏やかに過ごすことを望んでいる。が、「浮かれバブル」な世の中は、それになじめない者にどんどん負担をかけてゆく。地主・シャの腹黒さは、リャオジェを刺激するのに十分な強さを持っていた。

画像: 人生の選択肢を知って成長していく少年と、彼を優しく見守る父の姿。シャオチェン=ヤーチュエン・コンビの到達点か。『オールド・フォックス 11歳の選択』

 さあ、ここから話がどう発展していくか。門脇麦はリャオタイライの幼馴染・ヤンジュンメイ役を演じる。台北金馬映画祭4冠に輝く、台湾・日本合作作品となる。

映画『オールド・フォックス 11歳の選択』

6月14日(金)新宿武蔵野館ほか全国公開

<キャスト>
バイ・ルンイン、リウ・グァンティン、アキオ・チェン、ユージェニー・リウ、門脇麦

<スタッフ>
監督:シャオ・ヤーチュエン
脚本:シャオ・ヤーチュエン チャン・イーウェン
音楽:クリス・ホウ
サウンドデザイン:ドウ・ドウチ ジャン・イーチェン
撮影:リン・ジェチアン
美術:ワン・チーチェン
原題:老狐狸/英題:Old Fox/2023年/台湾・日本/112分/シネマスコープ/カラー/デジタル/字幕翻訳:小坂史子
配給:東映ビデオ
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